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第四章

第二十三話

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 ルカへ

 長いこと返事してなくてごめん。
 やっと気持ちに余裕がでてきたから手紙を送るよ。
 実は、三カ月くらい前に村を出てチコリ町ってところで生活してる。
 そこで冒険者になって、クエストを受けまくる毎日を過ごしてるよ。
 ちょっとずつだけど、地道に経験値とお金を稼いでる。
 まだしばらく待たせてしまうと思うけど、絶対に迎えに行くからな。
 それまで待っててくれよ。

 エイベル

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 エイベルへ

 手紙ありがとう!! すっごく嬉しいよ!!
 村を出られたって本当!? どうやって!?
 エイベルが冒険者になったって知って泣いちゃった。
 エイベル、ずっと冒険者になるって言ってたもんね。
 やっぱりエイベルはすごいや。
 どんな苦境でも乗り越えちゃうんだから。
 うん。いつまでも待ってるよ。
 でも、早くエイベルに会いたいなあ。

 ルカ

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 ルカへ

 それがさ、奇跡が起きたんだよ。
 神さまが俺を村から出してくれたんだ。
(信じられないと思うけど、本当なんだ!)
 今は神さまが一緒にいてくれてる。まあ、保護者代わりだな。
 ルカは最近どうだ? ルカのことも教えてくれよ。

 エイベル

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 エイベルへ

 ん? 神さま? エイベルは何を言ってるの?
 もしかして神さまを騙る変な人に連れ去られたとかじゃないよね?
 一気に心配になったよ。
 僕は今まで通りだよ。訓練して、ときたま魔物討伐に行っての繰り返し。
 先輩にコキつかわれて大変だけど、なんとかやってるかな。

 ルカ

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 ルカへ

 本当なんだって!!
 ヴラス神って知ってるだろ?
 そいつが人の姿して現れたんだ!
 しかもすっげー綺麗な男の人の見た目しててさ、今はもう慣れたけど初めて見たときびっくりした。
 ヴラスは変わった人(神)だけど変質者じゃないから安心しろ。
 最近は剣や弓の使い方を教わってる。あいつ武器使うのめっちゃ上手いんだ。
 あ、あと、ヴラスは俺の父さんと友だちだったらしい!
 寝るときに毎晩父さんの話聞かせてもらってんだー!
 ルカも頑張ってるんだな! 俺も負けないように頑張るからな!

 エイベル

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 エイベルへ

 エイベル、今はその神さまとずっと一緒にいるの?
 毎日一緒に過ごしてるの?
 ごはん一緒に食べたりしてるの?
 毎晩一緒に寝てるの?

 ルカ

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 ルカへ

 うん! ヴラスとずっと一緒にいるよ。
 危険な目に遭っても守ってくれる、頼りになる人(神)だよ。
 ごはん? もちろん一緒に食ってるよ。
 毎晩一緒に寝てるけど……それがどうかした?

 エイベル

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 ルカとの手紙のやりとりを読み返しているとき、うしろからヴラスに抱きしめられた。

「まだルカからの返事がないのかい?」
「うん……。それまではすぐ返事くれてたのに。どうしてだろう……」
「ふふ。ルカからしたら気分は良くないだろうね」
「なんで? 俺なんか悪いことしたかな……」
「いいや、君は何もしていない。悪いことをしているのは私だよ」

 そう言ってヴラスがキスしてきた。自然と俺は目を閉じ、舌を絡める。
 この町に来て五カ月が経った。五カ月もヴラスと一緒にいるんだ。もうキスされたくらいでは驚かないし、体に触れられることに抵抗もなくなった。
 〝愛〟をもらうことは、もはや日課となっている。

「ヴラス、何悪いことしてんの?」
「そんなこと、私が教える義理はないね。自分で気付きなさい」
「……?」

 ヴラスはルカのことになるとちょっと冷たくなる。
 ヴラスならルカの近況を知っているだろうに、何一つ教えてくれないし。
 俺がルカに手紙を書いた日なんて不機嫌すぎて目すら合わせてくれなくなるし、ルカから手紙が届いた日はだいたいチコリ町の空だけ雷雨になる。俺がヴラスのことを手紙に書き始めてからはそんなこともなくなったが。

「エイベル。今度ルカに手紙を書くときは二つ目のスキルについて詳しく書くといいよ」
「いやだよっ。俺がラクして経験値稼いでるって知ったら、それこそルカの気分が良くないだろっ」
「君はルカの気持ちを全く理解していないね。気分が良くないのはそこじゃないんだよ」
「あー……。ルカにもそういうこと言われてたなあ。〝エイベルは何にも分かってない!〟ってよく怒られた」

 ヴラスが独り言のように呟く。

「ルカの悪いところだ。鈍感で無知なエイベルが心情を察するなんて無理な話なのにね」
「おいっ、聞こえてるぞ!!」
「おっと、失礼」

 ヴラスは俺をひょいと抱き上げ、ベッドに連れて行った。
 ベッドに降ろすなりちゅっちゅちゅっちゅと顔に吸い付く。

「まあ、そのおかげで私は心置きなくエイベルを愛することができるんだけど」
「それとルカ関係なくね?」
「子どもの君には分からないよね。いいよいいよ。君はそのままでいい」
「いつまでも子ども扱いすんなぁっ」
「そうだね、子どもにしては――」

 ヴラスの手が服の中に入ってくる。ヴラスは指できゅっと乳首をつまんだ。

「んっ……!」

 俺の口から甘い声が出ると、ヴラスはうっとりと目じりを下げた。

「――色っぽい声で鳴く」
「~~……っ、へ、変なこと言うなぁっ! あっ……、んん……っ」
「エイベル。知っているかい?」
「んっ……、な、何……っ」
「今日で百回目だよ」
「!!」

 百回目の〝愛〟!!
 つまりこの一回でレベルが上がる!!

「今からするかい?」
「する!!」
「ん。記念すべき日だ。じっくり丁寧にしよう」
「待ちきれないからさっさと終わらせてくれ!!」
「そんな悲しいことは言わないで」

 ルカ! 俺、やっとレベルが十二になるぞ!!
 レベルが上がったら手紙を書こう。ルカもきっと喜んでくれるはずだ。
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