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第三章

第十七話

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 あまりの気持ちよさに、俺は放心状態になっていた。

「……?」

 ヴラスがまた指をちょいちょいしはじめた。尻のあたりをまさぐり、そして――

「あっ!?」

 尻の穴に指を指し込んだ。

「なっ、何してんの!?」
「ほぐすんだよ。痛みを感じないからと言って、雑に扱うつもりはないからね」
「なんでほぐすの!? っていうか汚いよそこ!!」
「なぜって……君、知らないのかい? ……ああ、知らないに決まっているか」

 ヴラスは指を根元まで押し込んでから、にっこり笑う。

「男性同士の性交は、ここを使うんだよ」
「は……? 尻の穴を……? なんのために……?」
「そりゃあ……ここに、私のペニスをだね……」

 こいつ何言ってんだ? 尻は排泄をするところだろ? そんなとこにペニスを挿れるなんて正気か?

「神さまって変態なの……?」
「いいや? 人も同じことをしているよ。人だけでなく、オス同士で愛し合う動物は皆そうするのさ」
「冗談だろ……?」
「心配しなくていい。君もすぐに受け入れるようになる」
「んん~っ……」

 受け入れたくなんかないと言いたかったのに、俺の口から出たのは言葉にならない声だけだった。
 変なところに指を出し入れされて気持ち悪いはずなのに……

「んっ……んん……」

 ペニスを触られているときとはまた違った快感が、じんわりと下腹部に広がっていく。

「な、んで……っ、気持ちいいんだよぉ……っ」
「媚薬のせいだね。本当は、はじめてだったらそんなにすぐ気持ちよくなれないはずだから」
「ぐぅぅ……っ、ペトのヤツ、覚えてろよぉ……」

 ヴラスの指が、俺の腹の中を押し上げる。

「あぁっ!?」

 じわじわと増していく快感に耐えていた俺は、突然激しい快感に襲われた。体がのけぞり、口からは大きな声が漏れる。
 そんな俺を見て、ヴラスがにんまりと頬を緩めた。

「ここが好きなんだね」
「待ってっ、そこ触らないでっ……んんんっ!!」

 それからヴラスはしつこいほどそこを指で擦った。その度に俺の体は跳ね上がり、女の人のような声が出る。
 それだけでも頭が変になりそうだったのに、ヴラスはさらに舌でペニスを刺激し始めた。

「やめてヴラスッ……!! あっ、んぁぁっ……!! も、無理っ、しんどいっ……!! んんんっ……!!」
「快感も過剰に与えられたら苦しいものね」

 共感している素振りを見せてはいるものの、止める気配はない。
 絶頂の予感がしたとき、ヴラスに強く腹の中を押し上げられた。

「んんんっ……!!」

 ペニスから勢いよく精液が噴き出した。それはヴラスの顔にかかり、たらりと垂れる。
 お、俺……今度は神さまの顔にせ、せせ、精液を……

「ご、ごめんなさい……」
「かまわない」

 顔面蒼白になっている俺と対照的に、ヴラスは頬を赤く染めている。
 ヴラスは顔にかかった精液を拭うこともせず、俺の脚を開かせた。

 ヴラスがズボンを下げると、俺のとは比べ物にならないほど立派なものが姿を現した。

「……」

 俺は唖然としてそれを見つめた。あんなでかいものが今から俺の尻の中に入ってくるの?

「……無理」
「大丈夫だよ。媚薬で痛みを感じないから」
「尻、壊れる」
「それも大丈夫。壊れたら私が治してあげるから」
「……」

 せめて「壊れないから大丈夫だ」と言ってほしかった。

「エイベル……」

 ヴラスは俯いていた。挿入するとき、顔からぽたぽたと雫が二滴落ちた。ただの汗かもしれないけれど、俺からの角度だと涙のようにも見えた。

「ひとつになろうか」
「あっ……」

 ヴラスのペニスが優しく肌に触れた。ゆっくりと力が加わっていき、俺の中に入ってくる。

「う……んん……っ」
「痛く……ないよね?」
「……うん……でも、なんか……変な感じする……」
「すぐに慣れさせてあげる」

 痛みはなかった。ただただ熱かった。熱で溶けてしまうそうだ。
 下腹部がじんじんする。俺の内臓とヴラスのペニスが密着しているのを感じる。
 不思議だ。お尻は本来こんなことのために作られたものじゃないはずなのにな。ヴラスのペニスが俺の奥深くまで入ってくればくるほど、しっくりくる感じがした。まるで、心にぽっかり空いた穴が埋められていくような、そんな感じ。

 ヴラスが動きを止め、吐息をつく。

「エイベル。全部入ったよ」
「……うん」

 俺の尻とヴラスの腹がぴったりとくっついたことからも、それが分かった。

「動くよ」
「あっ……」

 ヴラスは俺を抱きしめたまま、ゆっくり腰をゆすり始めた。ヴラスが腰を引いても押しても、俺の口から変な声が出た。
 ヴラスは俺の顔をじっと見つめてから、長いキスをした。
 そして、俺の耳元でこう囁いた。

「エイベル。父に代わり君を守り、母に代わり君を支え、妻に代わり君を愛すことを誓うよ。……そして、親友に代わり君を信じ、親友として君に安らぎの場を与えることも」
「あっ……ん、あぁっ……」
「だから君の全てを私に……」

 ヴラスの言っていた通り、ヴラス神の〝愛〟は空が明るむまで続いた。
 それまでに俺は何度も絶頂を迎え、終わった頃には意識が朦朧としていて言葉を発することもできなかった。
 そんな俺をヴラスは愛おしそうに抱きしめ、安らかな寝息を立てはじめた。
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