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一年:学期末考査~一学期中間考査
第四十四話
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一人でメシ食って。狭いベッドで一人で寝て。朝起きてもそこには俺一人。
少し前までこれが当たり前だったのにな。
今じゃ耐えられないくらい、寂しくてしょうがない。
成績発表日を境に、凪がうちに来なくなった。
あれから凪とは一言も言葉を交わしていない。
そんな関係のまま、春休みに入ってしまった。
凪が俺の生活から消えてから、なにもやる気が起きなくなった。
メシを食うのも億劫だ。勉強なんてできるはずもない。
何もせずにぼうっとベッドで寝転がっていると、勝手に一日が過ぎていった。
浮かれていたんだ、俺。
俺と凪は、やっぱりただのクラスメイトだった。
〝学年二位が学年一位の言うことをなんでも聞く〟という勝負だけで繋がっていた、ただのクラスメイト。
ああ。この感覚知っている。
勘違いして、犬みたいに尻尾振って、バカみたいに懐いて、好きになって――
突然、俺が見ていた世界が全部嘘だったという現実を目の前に突き付けられる。
世界が揺らぐ。
何も信じられなくなって、家の外に出るのも怖くなる。
だから人付き合いは苦手なんだ。
いつだって上手くいかない。
だから捨てたはずなのに。
どうして俺は懲りずに〝友だち〟を作ってしまったんだろう。
◇
あのときと同じ。そう、同じなだけ。
すっぱり割り切って、なにもかも忘れて、誰ともかかわらずに一人で生きていけばいいだけ。
単純なことだ。答えはもうはっきり分かっている。
「……いやだ……」
分かっているのに……
あのときは捨てることができたのに。
「凪……」
凪と過ごした日々のことだけは忘れたくない。
凪がそばにいない毎日なんていやだ。
たとえまた辛いことがあったとしても、それでもいい。
このまま凪と離ればなれるのはいやだ。
俺はゆっくりと上体を起こした。
俺、何日風呂に入っていないっけ。頭かゆすぎ。
ガシガシと髪を洗いながら、凪のことを考える。
あいつが俺から離れた理由。
俺が学年二位じゃなくなったから。
どうしてそれで離れていった?
俺が思いのほかアホで呆れたから。興味を失ったから。
……たぶん違う。
あいつは最後に謝っていた。
俺があんな順位になったのを、自分のせいだと考えていた。
俺の勉強する時間を奪ったから。
《俺が……理玖が大事にしてたこと、蔑ろにさせた》
あんなに学年一位を目指して頑張っていた俺が、凪に夢中になりすぎて勉強しなくなったから。
もしかしたら凪は、俺の唯一の取柄を奪ってしまったと思ったのかもしれない。
「……」
もしそうなら……
今回のことは、前とは全然違ってくる。
凪は俺のために、俺から離れようとした。
それって、俺のことを大事に思ってくれているからこそしたことなんじゃねえのって、思った。
「だったら……」
俺はまだ、凪を失ったわけじゃないはずだ。
そう思わないとやっていけないし。
だって俺、凪のことはどうしても諦められないから。
諦められないのなら、風呂も入らず寝ているだけじゃダメだろ、俺。
お前がいても俺は大丈夫だぞって、あいつに教えてやるんだ。
それと――
あの修学旅行の日のことも、俺はもう全く気にしていないって、教えてやるんだ。
あいつ、ずっとそのことを気にしていたから。
全部安心させて、凪に戻ってきてもらうんだ。
〝学年二位が学年一位の言うことをなんでも聞く〟
そんな勝負がなくたって、俺たちは一緒にいられるんだぞって、あいつに言ってやる。
少し前までこれが当たり前だったのにな。
今じゃ耐えられないくらい、寂しくてしょうがない。
成績発表日を境に、凪がうちに来なくなった。
あれから凪とは一言も言葉を交わしていない。
そんな関係のまま、春休みに入ってしまった。
凪が俺の生活から消えてから、なにもやる気が起きなくなった。
メシを食うのも億劫だ。勉強なんてできるはずもない。
何もせずにぼうっとベッドで寝転がっていると、勝手に一日が過ぎていった。
浮かれていたんだ、俺。
俺と凪は、やっぱりただのクラスメイトだった。
〝学年二位が学年一位の言うことをなんでも聞く〟という勝負だけで繋がっていた、ただのクラスメイト。
ああ。この感覚知っている。
勘違いして、犬みたいに尻尾振って、バカみたいに懐いて、好きになって――
突然、俺が見ていた世界が全部嘘だったという現実を目の前に突き付けられる。
世界が揺らぐ。
何も信じられなくなって、家の外に出るのも怖くなる。
だから人付き合いは苦手なんだ。
いつだって上手くいかない。
だから捨てたはずなのに。
どうして俺は懲りずに〝友だち〟を作ってしまったんだろう。
◇
あのときと同じ。そう、同じなだけ。
すっぱり割り切って、なにもかも忘れて、誰ともかかわらずに一人で生きていけばいいだけ。
単純なことだ。答えはもうはっきり分かっている。
「……いやだ……」
分かっているのに……
あのときは捨てることができたのに。
「凪……」
凪と過ごした日々のことだけは忘れたくない。
凪がそばにいない毎日なんていやだ。
たとえまた辛いことがあったとしても、それでもいい。
このまま凪と離ればなれるのはいやだ。
俺はゆっくりと上体を起こした。
俺、何日風呂に入っていないっけ。頭かゆすぎ。
ガシガシと髪を洗いながら、凪のことを考える。
あいつが俺から離れた理由。
俺が学年二位じゃなくなったから。
どうしてそれで離れていった?
俺が思いのほかアホで呆れたから。興味を失ったから。
……たぶん違う。
あいつは最後に謝っていた。
俺があんな順位になったのを、自分のせいだと考えていた。
俺の勉強する時間を奪ったから。
《俺が……理玖が大事にしてたこと、蔑ろにさせた》
あんなに学年一位を目指して頑張っていた俺が、凪に夢中になりすぎて勉強しなくなったから。
もしかしたら凪は、俺の唯一の取柄を奪ってしまったと思ったのかもしれない。
「……」
もしそうなら……
今回のことは、前とは全然違ってくる。
凪は俺のために、俺から離れようとした。
それって、俺のことを大事に思ってくれているからこそしたことなんじゃねえのって、思った。
「だったら……」
俺はまだ、凪を失ったわけじゃないはずだ。
そう思わないとやっていけないし。
だって俺、凪のことはどうしても諦められないから。
諦められないのなら、風呂も入らず寝ているだけじゃダメだろ、俺。
お前がいても俺は大丈夫だぞって、あいつに教えてやるんだ。
それと――
あの修学旅行の日のことも、俺はもう全く気にしていないって、教えてやるんだ。
あいつ、ずっとそのことを気にしていたから。
全部安心させて、凪に戻ってきてもらうんだ。
〝学年二位が学年一位の言うことをなんでも聞く〟
そんな勝負がなくたって、俺たちは一緒にいられるんだぞって、あいつに言ってやる。
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