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一年:三学期~学年末考査

第四十一話

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「さて」
「ん?」

 説教をしたあと、先生が俺の体をひっくり返した。うつ伏せにしたかと思えば、今度は俺のケツを引き上げ、四つん這いにする。

「……ん!? 何してんすか先生!?」
「腹痛の原因を取り除くんだよ」
「???」

 何言ってんだこいつ。

「んぃ!?」

 先生の手が俺のケツに触れ――
 指を突っ込まれた。

「先生!? おいっ、あんた悪い先生じゃないんだよなあ!? 何してんだオイ!!」
「だから、中城くんの精液を掻き出すんだよ。これ入ってるからお腹痛いんだよ?」
「やめろぉっ! 自分でするからっ! んぃぃぃ……っ」
「自分の指じゃ奥まで届かないでしょうが」

 二本の指が根元まで押し込まれる。指先を少し曲げ、体内に残る精液を掻き出しているのが分かる。
 嫌がる俺に、先生は意地悪くもこう尋ねた。

「それとも、中城くんにお願いするかい? 君の精液のせいで体調壊したから掻き出してくれって」
「~~……」

 俺はぶんぶんと首を横に振った。
 凪にそんなこと言いたくない。あいつ、自分のせいで俺が体調壊したなんて知ったら絶対ヘコむから。

「だろう? だから先生が掻き出してあげるんだよ」
「んぃぃ……」

 ごつごつした大人の指だ。いつもと全然違う。

「んぃっ……んん……、んぅぅ~……っ」
「声出してもいいよ。いつもみたいに」
「嫌に決まってんでしょ……っ、んぃぃ……」

 先生は「そうかい」と興味がなさそうに返したかと思えば、男のGスポットをぐいと押し上げた。

「んあぁっ!?」
「やっぱりここも開発済みかあ」
「あっ!? あっ、ちょっ、先生っ!」
「すごいね、鳥次くん。こんな感度良い子見たことないよ」
「ちょっとっ、あぁっ、やめっ、声っ、声出ちゃうからそこやめっ……んぁぁっ!」
「はは……。これはちょっとまずいね」

 待って。俺何されてんの? 先生に精液掻き出してもらっているだけだよな? いやなに〝先生に精液掻き出してもらっているだけ〟って。なんも〝だけ〟じゃねえわ。

 しかもこいつケツいじんのウメェ……。良いとこばっか当てやがる。やめろぉっ……!!

「あっ、あっ、先生っ、あっ、なんか……なんかくるっ……!!」

 次の瞬間、射精してもいないのに全身に快感がほとばしった。体の奥が痙攣している。
 力尽きた俺はベッドに沈み込んだ。
 先生はケツから指を抜き、感心した口調で呟く。

「まさか中イキまでできるとは」
「はっ……はっ……」

 意味不明のできごとがやっと終わった。いろいろと疲れたから一回寝よう。今の俺に、現実を直視する余裕ない。
 そう考えて目を閉じた。おやすみ世の中……

「よいしょっと」
「……ん?」

 先生にまた体をひっくり返された。仰向けになった俺を、先生はうっとりした目で見下ろしている。それが生徒に対して向ける目か?

「鳥次くん。おしりいじられただけで勃起してる」
「!」

 自分の股間に目を向けて、小さな叫び声を上げた。びんっびんじゃねえか!

「優等生の鳥次くんが、こんなんで教室戻れないね」
「おい……? 何する気……?」
「何って……」

 先生は何食わぬ顔で俺のちんこを握った。

「一回射精させてあげるだけだけど」
「あんたほんと何してんのぉぉぉ!?」

 ぬこぬこと手を上下に動かされる。その手を阻止しようと腕を伸ばすも、心身ともに満身創痍の俺の力ではなんの意味もなさない。

「んぃっ!?」

 先生は俺のちんこを刺激したまま、もう片方の手でケツをいじりだした。

「んんっ、あっ……あぁ……っ、んぃっ……んぃぃ……っ」
「あはは。同時にされるのが好きなんだね」
「ほんとやめて……っ、先生ぃ……っ」

 先生は俺の言葉を完全に無視して、ひとりでに呟いた。

「相変わらず、中城くんは育てるのが上手いなあ」
「え……? なんて……? あっ……んん……っ」

 うっかり独り言を漏らした先生は、「しまった」という顔をしたが、すぐに「まあいっか」と開き直ったようだった。そしてごまかすように激しくちんこを刺激しはじめた。

「ちょっ……先生っ、激しすぎっ……、あ……でっ……あっ……!!」

 みっともねえ。あっけなく射精してしまった。ちんこいじってくれるヤツなら誰でもいいのかよ、俺。

 放心状態になっている俺を置いて、先生がどっか行った。戻って来た先生はウェットティッシュを手に持っていた。それで丁寧に俺の体を拭く。

「……先生。さっきの話……」
「ああ……。気になるかい?」
「はい」
「君にこんなこと言っていいのか分からないけど……」
「聞きたい」

 先生は困ったように笑ったあと、白状した。

「保健室にはね、よく中城君と付き合っていた子たちが顔を出すんだ」
「え……」

 凪の元カノ。存在は知っているが、具体的な話は聞いたことがなかったので興味が湧いた。

「よくその子たちの話を聞いていたからね。実は中城くんのことに詳しいんだ」
「それで?」

 先生いわく、保健室には凪にフラれて病んだ子がよく来ていたらしい。
 凪の元カノは全員口を揃えてこう言うそうだ。「凪は最高の彼氏だから別れたくない」って。
 優しくて、一緒にいて楽しい。ワガママにも嫌な顔せず付き合ってくれるし、心を読んでいるみたいに、してほしいと思ったことを先回りしてしてくれる、とのことだ。

「別れるその瞬間だけ誰よりもクズらしいけどね。はは」

 そして何よりセックスが上手いらしい。(俺はこいつとしかしたことないから上手さは分からん)
 丁寧に前戯をしてくれるし、挿入してからも相手に合わせて動いてくれる。
 コンドームを絶対に付けてくれるのもポイントが高いそうだ。

「そんな中城くんが中出しなんて……先生びっくりしたよ」
「うぅ……お、俺が生でしろって言ったんです……」
「悪い子だ。だが……しかたないのかもね」
「え……?」

 先生は肩をすくめた。

「中城くんのタチの悪いところはね、セックスが上手い上に......相手を不安にさせるのが上手なところさ」
「え? どういうこと?」
「おや? 鳥次くんは心当たりないのかな? 女の子たちはみんな言っていたよ。本当に愛されていたのかどうか分からないって」

 いや、まあ......
 そもそも俺ら付き合ってないから、愛されていないのが当然なので......

「中城くんの愛情って、ぽっかり空洞が空いているみたいなんだって。表面上はすごく大事にしてくれるけど、肝心の中身がないように感じるらしい」

 うーん。でも確かに、あいつが何を考えているのかはさっぱり分からないとは思っている。
 ぶっちゃけると、こいつ俺のこと好きなんじゃね? って感じるときがある。
 だが同じくらい、こいつ俺に仕方なく付き合っているだけなんじゃね?と感じている。

「そのせいでみんな不安になるんだ。愛情を確かめたくて、軽率にセックスを求めてしまう。そういった関係を続けていくうちに、みんなセックス中毒みたいになってしまうんだ」
「……」
「中城くんとセックスがしたいって気持ちで頭がいっぱいになって。体が疼いてしょうがなくなる」

 うわー……それに関しては耳が痛い……。

「だからね、先生ときどきその子たちの体を慰めてあげてたんだけど」
「……ん?」

 なんか流れ変わったな。

「みんな感度抜群なんだよね。処女だった子も上手く開発されていて……ちょうど鳥次くんみたいに」
「えーっと……?」
「にしても感心したよ。中城くん、男の子の体でも上手に開発しているんだから」
「うーん……」
「鳥次くん、はじめて保健室に来たときから中城くんと仲を育んでいたでしょう? コソコソ話、全部聞こえていたから知っているんだけど」
「はあ……」
「こっそり楽しみにしていたんだよ、この日が来るのを」

 しばしの沈黙が流れた。
 たまらず俺は叫び声を上げる。

「いやっ! あんたほんと何してんの!?」
「どうしたんだい。急に大声出して」
「凪の元カノとヤッてたの!? 生徒だぞ!?」
「いやだな。指だけだよ。挿入なんてしてない。それに、あの子たちが求めてくるから応えただけ」
「そういう問題!? 違うよなあ!?」
「大丈夫大丈夫。先生、生徒に対して変な気持ちは一切持ってないから。それを分かって、みんなちゃんと本当の恋を求めて巣立っていくから。今は慰めている子なんていないよ」
「そういう問題でもなくねえ!? ってか俺は求めてなかったのにされたんですけど!!」
「鳥次くんはだって、中出しされて体調崩してたから。ついでに前も楽にしてあげただけであって」

 ああ言えばこう言う。先生はケロッとして答えるだけだった。
 高梨先生がこんなに頭のおかしヤツだとは知らなかったぜ。

「はい。きれいになったよ」

 俺の体を拭き終えた先生が、こっそり囁く。

「鳥次くんも、体が寂しくなったらいつでも先生のところにおいで。楽にしてあげるから」
「っ、行くわけねえ!! 二度と来ねえわこんなとこ!!」
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