上 下
14 / 72
一年:二学期期末考査~二学期最終日

第十話

しおりを挟む
「理玖、朝だよ」

 凪の声のすぐあとにアラームが鳴った。
 目を開けるとすぐそばに凪がいた。ベッドの上で頬杖をして、俺の顔を見つめている。
 なんでこいつ、寝起きのはずなのに目クソひとつ付いていない完ぺきな顔してんだよ。

「……むかつくわぁ」
「えっ、なんで」
「うるせぇ……こっち見んな……」

 凪は俺の言ったことを無視して、いや逆にわざと、俺にぐいと顔を近づけた。

「寄んなあ……」

 寝起き早々にこいつのキラキラフェイスは目が潰れる。

「理玖、おはよ」
「……はよ」
「はは。相変わらず寝起きの理玖は機嫌悪いなー」

 そう言って、凪が俺の頬にキスをした。

「……」
「起きないとキスするぞー」
「もうしてんじゃん……」
「んー」
「んっ……」

 今度は唇にキスされた。おい。俺まだ歯磨いてない。ってかお前も磨いていないだろう。

「ちょっ……ま……」
「んー?」
「んんっ……」

 凪の舌が入ってくる。汚い。やめろ。
 ……思っていたよりにおいとか気にならない。それより、なんか……

「はっ……ん……」

 ダメだ。頭が働かない。気持ちいい。

「う……」

 くそ。ただでさえ朝勃ちしていたのに、もっと元気になりやがった。

「~~っ……、はいっ、もう終わりっ! 学校遅刻すんだろっ」

 押しのけられた凪は、なおも俺をとろんとした目で見つめている。

「理玖、キス好きでしょ」
「うっ!?」
「やっぱな! 図星」
「ちっ、ちがうっ」
「嘘つき。理玖、知らないだろ」
「……?」

 凪がそっと俺の頬を撫でる。

「キスしてるときの理玖、めちゃくちゃ可愛い顔になってんの」
「~~……!!」

 そっ、それを言えばお前だって知らないだろ!? お、お前だってキスしたあと、すんげえエロい顔してんだからな!? なんで俺だけがキス好きみたいな言い方するんだよクソがっ!!

 俺はベッドから飛び出し、さっさと身支度をして家を出た。(凪とはいつも登校時間をズラしているから、別々に家を出ることはいつものことだ)

 あー、なんだあいつ。一昨日くらいからあいつおかしい。
 俺とキスしたい?
 俺とセックスしたい?
 まじで頭どうにかなっちまったんじゃねえの。
 それとも――

「……」

 無意識に立ち止まってしまった。

 ああ、そっか。そういうことか。
 あいつ、俺をおもちゃにして遊んでいるんだ。きっとそうだ。
 女の体に飽きたから、男の体に興味を持ったんだろう。それで、なんでも言うことを聞く俺の体使って遊んでんだ。

 妙に納得した。
 でもなんだこのモヤモヤ感。
 もしかして、俺なんか期待してた? はは。まさか嘘だろ。
 ……俺キモ。

「……友だち」

 友だちになれたような気になっていた。一緒にゲームして、あいつが俺の隣で笑って。他のヤツらには言えないワガママを言ってくることに、優越感っぽいものを抱いていた。
 あいつのワガママを聞いてやることに、俺までどこか満たされていた。

 だからキスを許した。ベッドで一緒に寝ることも。……乳首吸うことも。

 でも、あいつにとっては違ったんだ。
 俺は友だちでもなんでもない、ただの「なんでも言うことを聞く」学年二位。

「……」

 まあ、そんなもんでしょ。
 俺なんてなんの取柄もない陰キャなんだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

【完結】【番外編】ナストくんの淫らな非日常【R18BL】

ちゃっぷす
BL
『清らかになるために司祭様に犯されています』の番外編です。 ※きれいに終わらせたい方は本編までで留めておくことを強くオススメいたします※ エロのみで構成されているためストーリー性はありません。 ゆっくり更新となります。 【注意点】 こちらは本編のパラレルワールド短編集となる予定です。 本編と矛盾が生じる場合があります。 ※この世界では「ヴァルア以外とセックスしない」という約束が存在していません※ ※ナストがヴァルア以外の人と儀式をすることがあります※ 番外編は本編がベースになっていますが、本編と番外編は繋がっておりません。 ※だからナストが別の人と儀式をしても許してあげてください※ ※既出の登場キャラのイメージが壊れる可能性があります※ ★ナストが作者のおもちゃにされています★ ★きれいに終わらせたい方は本編までで留めておくことを強くオススメいたします★ ※基本的に全キャラ倫理観が欠如してます※ ※頭おかしいキャラが複数います※ ※主人公貞操観念皆無※ 【ナストと非日常を過ごすキャラ】(随時更新します) ・リング ・医者 ・フラスト、触手系魔物、モブおじ2人(うち一人は比較的若め) ・ヴァルア 【以下登場性癖】(随時更新します) ・【ナストとリング】ショタおに、覗き見オナニー ・【ナストとお医者さん】診察と嘯かれ医者に犯されるナスト ・【ナストとフラスト】触手責め、モブおじと3P、恋人の兄とセックス ・【ナストとフラストとヴァルア】浮気、兄弟×主人公(3P) ・【ナストとヴァルア】公開オナニー

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!

ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて 素の性格がリスナー全員にバレてしまう しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて… ■ □ ■ 歌い手配信者(中身は腹黒) × 晒し系配信者(中身は不憫系男子) 保険でR15付けてます

処理中です...