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第三章
ピエロ
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事後、ベッドで抱き合っていると、マリカちゃんが口を開いた。
「やっと来てくれて嬉しい」
「ん? どういうこと?」
「ずっと待ってたの。大地君が声をかけてくれるの」
「……まじでどういうこと」
マリカちゃんは、俺の腰を指でなぞりながら応える。
「爽君と付き合ったら大地君がオマケでついてくる。一部の女子の間では有名な話だよ」
「……」
こいつ……。元からそのつもりで……?
眉をひそめる俺に、マリカちゃんがクスクス笑った。
「イケメンでお金持ち。その上性格も良くて優しい爽君を彼氏にできて、さらにセックス激ウマの大地くんが、電話ひとつで来てくれるようになるってね」
「……おい、じゃあ、君……」
俺が言葉を言い終えるまでに、マリカちゃんは首を横に振る。
「違うの。実は、私は大地君が本命だったの」
「は……? だったらなおさら、なんで俺に来ずにわざわざ爽と……」
「だって、直接告白したって、大地君は相手にしないでしょ?」
「……」
「大地君とセックスするには、爽君と付き合うしかないんだもん。ちなみに、チカだって大地君目的で爽君と付き合ってたんだよ」
嘘……だろ……。
頭が真っ白になった。じゃあ……俺のせいで、爽が言い寄られて……。爽がチカちゃんやマリカちゃんとセックスしたのも、元はと言えば俺のせいってこと……。
冷や汗を流している俺に、マリカちゃんはうっとりとした声を出す。
「でも、思ったより爽君とのセックスも良かったんだよね~。チカから聞いてた話と大違い。前戯上手だし、おちんちん小さくてイクのも早いけど、あの子すっごく感度いいんだよね。時々喘ぎ声漏らしちゃうのとか最高。そんなに私の体が気持ちいいのねって思うと、可愛くて可愛くて。自己肯定感上がっちゃう」
「……」
「大地君も噂に違わずセックスめちゃくちゃ上手だし。おちんちんも大きいし、ほんと最高。あー、これから私、爽君とも大地君ともセックスできるんだあ。嬉しいなあ」
「……君さ、セックスのことしか考えてないわけ?」
俺が尋ねると、マリカちゃんはキョトンとした。
「え? 他のことも考えてるよ? 今週末、爽君とデートに行くんだー。楽しみ~」
「でも俺が本命なんだよな?」
「うん! でも爽君も最高。どっちも好きになっちゃった」
マリカちゃんはそう言って、俺の胸に顔をうずめる。
「だから、今日のことは爽君には内緒にしててね?」
「……なあ、俺、マリカちゃんと付き合うからさ、爽とは別れてくんない?」
「大地君、さっきの話聞いてたぁ? 私、爽君も大地君も両方欲しいのよ。それに……」
顔を上げたマリカちゃんはニッと口角を上げた。
「仮に私が爽君と別れて、大地君と付き合ったとしても……。爽君が別の女の子と付き合い始めたら、その子のところに行っちゃうんでしょ? チカから私に乗り換えたみたいに」
「……」
「だから、爽君を手放すわけにはいかないのよ。大地を繋ぎとめるためには、ね? あと、何度も言うけど、私、爽君とのセックスも好きだし、単純に付き合ってると自慢できるしで、いいことずくめなのよね」
俺もロクでもないやつだけど、マリカちゃんも、チカちゃんも、その他俺目当てで爽と付き合っていた女子も、俺と同じくらいロクでもない。
違いを見つけるとしたら、女たちはしたたかで、俺は彼女たちに踊らされていたピエロだったというところか。
「大地君、どうして女子は、今まで気付かないフリをしていたんだと思う?」
「俺を踊らせるためだろ」
「そうね。じゃあ、どうして私がこのことを話したと思う?」
「……俺を脅すため?」
マリカちゃんはニッコリ笑って頷いた。
「チカから聞いたよ。ベッドの下に使用済みコンドーム落とされてたり、男性用の下着が部屋の隅に隠されたりしてて、爽君に浮気がバレたって。他にも……チカが普段飲まないようなお酒が冷蔵庫に入ってたり、煙草の残り香を残されてたり、開封されたLサイズのコンドーム箱が本棚に忍ばされてたり? それはもう、チマチマしたものをいたるところに残されてたって」
「……」
「私の部屋ではそんなことしないでね。したら、爽君に大地君が今までしてきたこと、全部言うから」
「……分かった」
参ったけど、完敗だな。やられた。
思いつめている俺を、マリカちゃんが覗き込む。
「怒ってる?」
「……いや。今までしてきたツケが回ってきただけだ。全部俺が蒔いた種だからな……。自分に腹が立つだけで、マリカちゃんには怒ってない」
「あはは! 大地君のそういうとこ、好きだな~」
「爽に申し訳ねえ……俺のせいでいろいろ巻き込んで……こんなビッチと付き合うハメになって……。ああぁ……爽……まじごめん……」
「誰がビッチよ! いや、確かにビッチだねー、あははー」
「なあ……頼む。爽からは手を引いてくんねえ? もう、爽に彼女ができてもそっちに行かないって約束するから。頼む」
何度懇願しても、マリカちゃんは頷いてくれなかった。
「だからさっきから何回も行ってるでしょ? 私、爽君のことも好きなのよ。別れたくないもん」
終わった。詰みだ、これ。
「やっと来てくれて嬉しい」
「ん? どういうこと?」
「ずっと待ってたの。大地君が声をかけてくれるの」
「……まじでどういうこと」
マリカちゃんは、俺の腰を指でなぞりながら応える。
「爽君と付き合ったら大地君がオマケでついてくる。一部の女子の間では有名な話だよ」
「……」
こいつ……。元からそのつもりで……?
眉をひそめる俺に、マリカちゃんがクスクス笑った。
「イケメンでお金持ち。その上性格も良くて優しい爽君を彼氏にできて、さらにセックス激ウマの大地くんが、電話ひとつで来てくれるようになるってね」
「……おい、じゃあ、君……」
俺が言葉を言い終えるまでに、マリカちゃんは首を横に振る。
「違うの。実は、私は大地君が本命だったの」
「は……? だったらなおさら、なんで俺に来ずにわざわざ爽と……」
「だって、直接告白したって、大地君は相手にしないでしょ?」
「……」
「大地君とセックスするには、爽君と付き合うしかないんだもん。ちなみに、チカだって大地君目的で爽君と付き合ってたんだよ」
嘘……だろ……。
頭が真っ白になった。じゃあ……俺のせいで、爽が言い寄られて……。爽がチカちゃんやマリカちゃんとセックスしたのも、元はと言えば俺のせいってこと……。
冷や汗を流している俺に、マリカちゃんはうっとりとした声を出す。
「でも、思ったより爽君とのセックスも良かったんだよね~。チカから聞いてた話と大違い。前戯上手だし、おちんちん小さくてイクのも早いけど、あの子すっごく感度いいんだよね。時々喘ぎ声漏らしちゃうのとか最高。そんなに私の体が気持ちいいのねって思うと、可愛くて可愛くて。自己肯定感上がっちゃう」
「……」
「大地君も噂に違わずセックスめちゃくちゃ上手だし。おちんちんも大きいし、ほんと最高。あー、これから私、爽君とも大地君ともセックスできるんだあ。嬉しいなあ」
「……君さ、セックスのことしか考えてないわけ?」
俺が尋ねると、マリカちゃんはキョトンとした。
「え? 他のことも考えてるよ? 今週末、爽君とデートに行くんだー。楽しみ~」
「でも俺が本命なんだよな?」
「うん! でも爽君も最高。どっちも好きになっちゃった」
マリカちゃんはそう言って、俺の胸に顔をうずめる。
「だから、今日のことは爽君には内緒にしててね?」
「……なあ、俺、マリカちゃんと付き合うからさ、爽とは別れてくんない?」
「大地君、さっきの話聞いてたぁ? 私、爽君も大地君も両方欲しいのよ。それに……」
顔を上げたマリカちゃんはニッと口角を上げた。
「仮に私が爽君と別れて、大地君と付き合ったとしても……。爽君が別の女の子と付き合い始めたら、その子のところに行っちゃうんでしょ? チカから私に乗り換えたみたいに」
「……」
「だから、爽君を手放すわけにはいかないのよ。大地を繋ぎとめるためには、ね? あと、何度も言うけど、私、爽君とのセックスも好きだし、単純に付き合ってると自慢できるしで、いいことずくめなのよね」
俺もロクでもないやつだけど、マリカちゃんも、チカちゃんも、その他俺目当てで爽と付き合っていた女子も、俺と同じくらいロクでもない。
違いを見つけるとしたら、女たちはしたたかで、俺は彼女たちに踊らされていたピエロだったというところか。
「大地君、どうして女子は、今まで気付かないフリをしていたんだと思う?」
「俺を踊らせるためだろ」
「そうね。じゃあ、どうして私がこのことを話したと思う?」
「……俺を脅すため?」
マリカちゃんはニッコリ笑って頷いた。
「チカから聞いたよ。ベッドの下に使用済みコンドーム落とされてたり、男性用の下着が部屋の隅に隠されたりしてて、爽君に浮気がバレたって。他にも……チカが普段飲まないようなお酒が冷蔵庫に入ってたり、煙草の残り香を残されてたり、開封されたLサイズのコンドーム箱が本棚に忍ばされてたり? それはもう、チマチマしたものをいたるところに残されてたって」
「……」
「私の部屋ではそんなことしないでね。したら、爽君に大地君が今までしてきたこと、全部言うから」
「……分かった」
参ったけど、完敗だな。やられた。
思いつめている俺を、マリカちゃんが覗き込む。
「怒ってる?」
「……いや。今までしてきたツケが回ってきただけだ。全部俺が蒔いた種だからな……。自分に腹が立つだけで、マリカちゃんには怒ってない」
「あはは! 大地君のそういうとこ、好きだな~」
「爽に申し訳ねえ……俺のせいでいろいろ巻き込んで……こんなビッチと付き合うハメになって……。ああぁ……爽……まじごめん……」
「誰がビッチよ! いや、確かにビッチだねー、あははー」
「なあ……頼む。爽からは手を引いてくんねえ? もう、爽に彼女ができてもそっちに行かないって約束するから。頼む」
何度懇願しても、マリカちゃんは頷いてくれなかった。
「だからさっきから何回も行ってるでしょ? 私、爽君のことも好きなのよ。別れたくないもん」
終わった。詰みだ、これ。
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