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第二章

忘れたい

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セフレで満足できなかったからケツ貸せってさ、最低だと思わねえ?
それなのにさ、なんでか俺、ちょっと嬉しかった。そっか、大地、俺のケツでしかイケねえんだーって思うと、嬉しかった。

「……仕方ねえなぁ……。俺は全く全然これっぽっちも乗り気じゃねえが、仕方ねえからお前の性欲発散するためのオナホになってやるよ」
「だはは、ありがとうございます、爽センパイ」
「誰がセンパイだよ」
「お礼に爽のこともめいいっぱい気持ち良くしてやるからな」
「……」

女抱いてきたばっかりなのに、よくもまあ男の体舐め回せるなあ、こいつは。もったいねえヤツ。
こいつ絶対無理してる。本当は俺なんて抱きたくないのに、特訓のために仕方なく俺に快感を植え付けているんだ。

「あっ……はぁ……っ……」

大地のちんこが俺の中に入ってくる。気持ちいい。あったけえ。
……さっきまで女とヤッてたちんこを突っ込まれているのか、俺。

「ん……っ、やっぱ……爽の中は気持ちいいな……すぐイケそう」

大地が俺を抱きながら気持ちよさそうにしていると、腹の奥がキュッと締まる感覚になる。
……こいつ演技上手いなぁ。分かっていても呑み込まれそうだ。

「あぁっ……! そこ……気持ちいっ……んんっ……大地……っ」

忘れてえ。こいつに覚え込まされた快感全て。

「爽……っ、イク……ッ」
「あっ、あっ、んん~~……っ」

ただの幼馴染のルームメイトだったあの頃に戻りたい。
そしたらこいつがセフレを何人作ろうが、なんとも思わず顔を合わせられるのに。

◇◇◇

頭ではそう思っていても、体は言うことを聞いてくれない。
大地に体を寄せられるとすぐ反応するし、ケツにちんこを挿れられると、教え込まれた快感が体中を呑み込んで頭が真っ白になる。

本当は何度も拒否しようとした。今日こそは断るぞって、晩ごはんを食い終わるときまでは意気込んでいる。でも、いざその時になると、疼く体が大地に縋る。
こんなこと続けていたって、俺も大地も虚しいだけだ。特に大地は可哀想。俺のせいで無理させて申し訳ねえ。早く解放してやりてえ。

悶々と毎日を過ごしているとき、俺に気がある女子、マリカちゃんにごはんに誘われた。ちょうどその日は、チカという邪魔者も、大地という引っ付き虫もいなかった。

ちょうどいいと思った。だってその日、大地は〝用事〟があると言っていたから。どうせ晩飯もセフレと食うだろう。

マリカちゃんは、話していて楽しい子だった。俺の話を聞いては大袈裟なほど笑ったり驚いたりしてくれる。マリカちゃんの話も面白かった。

店の閉店時間まで飲んだあと、俺たちは夜道を歩いた。

「ねえ、爽君って今好きな人いるの?」

マリカちゃんの質問に答えるのに、俺は少し時間がかかった。一瞬でも大地の顔がチラついたのがムカついた。

「いないよ」
「そっかあ。私は……爽君のことが、好きなんだけどなあ」

知ってる。マリカちゃん、ずっと俺のこと狙っていたもんな。
マリカちゃんは上目遣いで俺を見た。

「もし……私が告白したら、爽君はどうする?」
「……」

恋人のはじまりはいつもこんな感じだ。女の子に告白されて、いけるかいけないかをちょっと考えて、いけると思ったら頷くだけ。

マリカちゃんはいけると思った。
だから俺は頷いた。
もしいけなくても、今の俺は頷いていたと思う。

「オッケーするかな」
「えっ……じゃあ……」

顔を赤らめるマリカちゃんに、俺はニコッと笑ってみせた。

「付き合おっか、俺たち」

その日俺はマリカちゃんの一人暮らし先に泊まった。
特訓の成果もあって、イクまでに五分以上かかった。
腰を振れば振るほど体がムズムズする。
マリカちゃんが喘げば喘ぐほど、そっち側にいるマリカちゃんのことが羨ましくなる。

でもこれで、俺は大地への依存を断ち切れるかもしれない。

「……ごめん、マリカちゃん」
「えっ? すごく良かったよ? 早いって言ってたけど、そんなに早くなかったし」
「……」

ごめんマリカちゃん。
俺、君のことを利用した。
これからも、大地の体を忘れるために利用してしまう。
本当にごめん。俺、最低だ。

マリカちゃんのこと、早く好きになれるといいな。
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