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第二章

気に食わねえわ、面白くねえわ

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◇◇◇

大地にケツを掘られたあの日から一カ月が経った。毎日毎日ケツを掘り続けられるうちに、俺は見事にメスとしての素質を開花させてしまった。
ちんこいじられるよりケツにちんこ突っ込まれる方が気持ちいいって思ってしまっている自分がキモい。でも気持ち良すぎてヤッてるときはどうでもよくなっちまう。

俺思うんだけど、今まで大地をフッてきたやつらおかしいだろ。あんなに良いヤツな上に面白いヤツで、おまけにセックスもバカ上手いんだぜ。
確かにセックスの時間が失神するくらい長いけど、その間ずーーーっと気持ちいい。それに、やめろって言ったら大人しくやめるし。あいつのなにがダメなんだよ。意味分かんねえ。なんか腹立ってきた。大地の元カノの名前と顔、一人も分かんねえけど。

「おーい」
「……」
「おーい、爽ー」
「はっ!」
「何百面相してんだ? 早くメシ食えよ」
「お、おう!」

今は金曜の夜。大地が作ったクソ美味いメシを食べている最中。
これを食べ終われば……セックス……もとい、特訓が始まる。
金曜の夜の大地はいつにも増して激しいし長い。明日が休みだからって手加減なしだ。
今日は何回イカされるんだろう。あ、やべ、ちょっと勃った。落ち着け息子よ、まだ早い。

皿洗いを終えた大地が、ソファに座る俺の後ろに立った。冷たくなった手を首に乗せられて俺が変な声を出すと、ツボに入ったのか大地がゲラゲラ笑う。

「だははは! なんだよその声!!」
「う、うるせぇ! びっくりしたじゃねえか! つっめてえな!」
「悪い悪い! ちんこ半勃ちさせながら待ってるお前にイタズラしたくなった!」
「は、半勃ちなんかしてねーし!」
「ほーう?」

大地はニマァと笑い、俺のちんこを触ろうと手を伸ばしたが――
手がちんこに当たる直前、大地のスマホが鳴った。……最近よく鳴るなぁ……。

大地はスマホを確認してため息を吐く。

「爽、ちょっと用事できた」
「またかぁ? お前、最近用事ばっかだな」
「二時間したら帰ってくるから」
「……」

こいつ、絶対良い感じの女の子いるだろ。
最近そんなんばっか。学校がある日は家に帰ってくるのが遅かったり、夜もときどき数時間だけ抜け出すことがある。朝帰りは今までで一回しかないけど……いや、思えばあの日から、大地がちょくちょく家にいない日が増えた。

……なんか、いやだ。おもしろくねえ。

俺は、ソファから立ち上がった大地の手首を掴んだ。

「なあ」
「ん? どうした」
「それ……今すぐじゃなといけねえ用事?」
「んー、まあ、そうだな」
「……俺のあとじゃダメなの」

大地は目をパチクリさせて、照れ笑いのような、苦笑いのような、なんとも微妙な表情を浮かべた。

「お前のあとって……日付変わるじゃん」

こいつ俺と何時間ヤる気なんだよ。まだ午後七時だぞ。
ってかヤッたあとすぐに出て行かれるのもなんか気に食わねえな。

「明日じゃダメなの」
「えー、明日は一日家にいたいし」
「じゃあ日曜」
「日曜も家から出たくねえな……」
「月曜」
「さすがにそんなに待たせたら怒られそう」

怒られるって誰にだよ。やっぱそうじゃん。良い感じの子いるんじゃん。

「なんだよ爽、ふくれっ面すんなよぉ。ちょっと出て行くだけじゃん。すぐ戻って来るし」
「……」

こいつモテるもんなぁ。変わり者でアホッぽく見えるけど、実は頭良いし、しっかりしているし、なんだかんだで男気あるしなぁ。セックスばかみてぇに上手いし。
こいつはフラれた数も多いが、フッた数も多いんだ。そりゃこんなヤツ、女の子が放っとかねえよな。

あー、なんでだ、なんかやたらとムカついてきた。

俺は大地の脚をゲシゲシ蹴り、恨めしい声を漏らす。

「俺がヤリてぇって言ってんのに、お前は俺放ってどっか行くの?」
「……いや、お前はヤリてぇなんて一言も言ってなかった」

睨みつける俺に向けて、大地は観念したようにため息を吐いた。
そしてスマホをいじったかと思えばポイッと床に落とし、俺に覆いかぶさる。

「そんな今すぐヤリてえの?」
「……お前はヤリたくねえの?」
「ヤリてぇに決まってんじゃん」

大地の言葉にホッとしたものの、いまだに頭の中はモヤモヤでいっぱいだ。

「……なあ、大地お前、彼女できた?」
「は? できてねえけど」
「じゃあ、好きな女の子は?」
「いねえよ? いるわけねーべ」
「はぁぁ……。お前はいっつもそうやって嘘吐く」
「嘘じゃねえんだけどなあ」

ブスッとしている俺に、大地はニカッと歯を見せて笑う。

「好きな女の子なんていたら、お前にこんなことしてねえよ?」

確かにそうか。良い感じの子がいたら、そっちとたっぷりお楽しみできるもんな。
じゃあ俺の勘違いか。そう考えたら一気に恥ずかしくなってきた。

唇が触れ合い、俺と大地の力が抜ける。さっきまで感じていたモヤモヤが薄くなって、すぐに何も考えられなくなった。
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