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2月
魔のバレンタイン(入社3年目)
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「彗斗さん!コピーここにおいときますね!」
「ああ、助かる」
入社3年目。会社で最も美しいと呼ばれている4人にも後輩ができた。彼らは美しい上に仕事面でも優秀だった。特にスルトに関しては、3年目であるにもかかわらず、上司の誰よりも仕事ができた。だが彼にとって仕事をこなすことは当然のことであり、驕ることも威張ることもなく淡々としている。それが後輩に憧れられる最大の理由だった。
マサトもスルトに憧れる後輩の一人だった。匂いが濃いΩであるマサトは、その甘い香りからよくα社員に体を求められていた。彼自身セックスをすることが好きなので、むしろそれを楽しんでいた。セックスが好きすぎて過去にΩ専用ヘルスで働いていた過去を持っているくらいだ。それが噂になり、今では欲求不満のα社員がかわるがわるこっそりマサトを抱いている。
マサトは自分の体に圧倒的な自信を持っていた。自分でよがるαに優越感を抱いてすらいた。
だが、スルトはマサトに全く興味を示さなかった。たいがいのαはマサトの匂いを嗅いで鼻息を荒くするのだが、スルトは彼が近くにいても眉一つ動かさない。
その頃には、スルトとケーゴ、エドガーとケーゴが夫婦で、なにやらピーターとケーゴも恋人のようなものだということが周知されていた。マサトはそれが気に入らなかった。神の力によってΩの匂いが薄まったことを知らないマサトにとって、絶世の美人であることは否定しないが、自分よりも匂いが薄いΩにスルトが夢中になっていることが納得できなかった。その上そのΩにはまだもう一人夫がいて、それだけでは飽き足らずβのイケメンといい感じであることに闘争心が湧いていた。
(俺の方が質のいいΩなのに、なんで社長秘書が会社1のイケメン3人を独り占めしてんだよ!!)
マサトは行動を起こすことにした。バレンタインデーという、社内がゆるみきった雰囲気になるその日に。
◇◇◇
「はっ…はっ…」
「マサト、今日も最高だったぞ!また頼むわ」
「はい…俺も気持ち良かったです…!」
バレンタインの前日、マサトはスルトの上司に抱かれていた。情事が終わりそそくさと帰ろうとする上司を引き留める。
「あ、すみません!俺のお願い聞いてもらえませんか?」
「ん?なんだ?」
「明日、俺と彗斗さんに大量の仕事押し付けてもらえません?」
「へえ?誰もいなくなるまで彗斗と残業したいってことか?もしかして彗斗のこと狙ってる?」
「へへ、話が早いですね!」
「お前正気か?あいつにはあの美人秘書がいるんだぞ。上の下の顔面偏差値のお前がそいつに敵うとでも?」
「何言ってんすかチーフ。顔はあいつの方が上ですけど、Ωとしては俺の方が優秀ですよ。αにとってはそれが全てでしょ?」
「あー…いやあの秘書はもともと…。いや、いい。分かった。仕事くらいいくらでも押し付けてやるよ。その代わり揉め事にだけはなるなよ。彗斗は社長のご子息だし、秘書は社長の大のお気に入りだしな…」
「分かってますって!無理矢理襲うなんてしませんよ。だって結局俺を求めるのはαですもん」
「ふ、分かった。その代わり次んときは縛らせろよ」
「げー、チーフの縛りきっついんすよね…痕残るんですって。まあいいですけど…」
「はいよ。じゃあな」
◇◇◇
バレンタイン当日。スルトの元に次々と仕事が飛び込んでくる。上司に押し付けられる仕事の上に、取引先との仕事も上乗せだ。それでもスルトは文句を言わず淡々と仕事をこなしていく。新しい仕事が入っても「分かった」と言って受け取るだけだった。その様子にマサトは慌てて上司に耳打ちする。
「ちょ、チーフ!彗斗さん全然苦しそうじゃないんですけど!本当に仕事押し付けてくれてます!?」
「いやお前の10倍の量押し付けてるからな?!あいつまじで何者なんだよ…。つかお前は?仕事終わりそうか?」
「いえ、絶対今日中に終わりませんよ、俺は」
「だよなあ?!お前が普通だよ?!あいつまじでおかしいって…。くそ、更に押し付ける仕事探すか…」
「頼みますよ!」
すました顔をしているスルトだが、心の中では完全にテンパっていた。
(は?!え?!なんだこの仕事の量は?!いつもと段違いに多いではないか!!こんな量定時に終わらせられんだろうがぁ!!その上バレンタインで浮かれたやつらが俺にチョコを渡してくるからそれの相手もしないといけんのだぞ?!くそっ!そうだ、今日はバレンタインデーだぞ?!ケーゴがもしかしたらチョコを使った特別なセックスをしてくれる日かもしれないんだぞ?!…いや、あいつに限ってそんなことはないか…)
そのとき、スルトのスマホが鳴った。圭吾たちとのグループLINEの通知だ。
------------------------------
圭吾【今日残業確定】
圭吾【社長の尻ぬぐい】
圭吾【たぶん帰り深夜まわる】
ピーター【了解】
ピーター【俺は定時で帰れそうです】
エドガー【僕は20時には帰る】
ピーター【じゃあ20時くらいに晩御飯できるように準備しておきますね】
エドガー【ピーター、いつもありがとう。】
エドガー【ケーゴ、帰りLINEしてくれたら迎えにいくよ】
圭吾【助かる】
圭吾【またLINEするね】
圭吾【スルトは?】
スルト【俺も深夜まわる】
スルト【今日の上司おかしい】
スルト【仕事の量がおかしい】
圭吾【なかーま】
ピーター【スルト様、お疲れ様です】
エドガー【じゃあ二人とも終わったら教えて】
圭吾【はーい】
圭吾【スルト、じゃあ先に終わった方が迎えに行く感じで】
スルト【分かった】
スルト【ていうか親父なにしでかした?】
圭吾【説明するのもめんどくさい】
圭吾【じゃあまたね】
スルト【誰かケーゴの写真送ってくれ】
スルト【俺には癒しが必要だ】
圭吾【はっ?!】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
圭吾【え】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
圭吾【ちょ】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
圭吾【ピーター?!】
エドガー【画像】
エドガー【画像】
エドガー【画像】
圭吾【まって】
エドガー【画像】
エドガー【画像】
圭吾【おい】
エドガー【画像】
エドガー【画像】
圭吾【エドガー】
圭吾【おいその写真はやばいから】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
エドガー【画像】
エドガー【画像】
圭吾【まって】
圭吾【送りすぎだし】
圭吾【なんでほとんどヤってるときの写真なんだよ!!】
エドガー【画像】
圭吾【は?!】
圭吾【なんで射精してる瞬間の写真があるんだよ!!!】
圭吾【いつ撮ったんだよ!!】
エドガー【動画もあるけどいる?】
圭吾【いらないいらない】
スルト【いる】
圭吾【は?!】
圭吾【あんたら今会社だよね?!】
圭吾【ほんとまじなにしてんの?!】
ピーター【動画】
エドガー【動画】
スルト【ありがとう】
スルト【これでがんばれる】
圭吾【動画は絶対見ないでよ?!】
圭吾【ねえ】
圭吾【ねえってば!!】
圭吾【返事をしろぉ!!!】
------------------------------
「ふっ」
スマホのLINEを見てひとしきりニヤニヤしてから、スルトは気を取り直して仕事に取り組んだ。
「ああ、助かる」
入社3年目。会社で最も美しいと呼ばれている4人にも後輩ができた。彼らは美しい上に仕事面でも優秀だった。特にスルトに関しては、3年目であるにもかかわらず、上司の誰よりも仕事ができた。だが彼にとって仕事をこなすことは当然のことであり、驕ることも威張ることもなく淡々としている。それが後輩に憧れられる最大の理由だった。
マサトもスルトに憧れる後輩の一人だった。匂いが濃いΩであるマサトは、その甘い香りからよくα社員に体を求められていた。彼自身セックスをすることが好きなので、むしろそれを楽しんでいた。セックスが好きすぎて過去にΩ専用ヘルスで働いていた過去を持っているくらいだ。それが噂になり、今では欲求不満のα社員がかわるがわるこっそりマサトを抱いている。
マサトは自分の体に圧倒的な自信を持っていた。自分でよがるαに優越感を抱いてすらいた。
だが、スルトはマサトに全く興味を示さなかった。たいがいのαはマサトの匂いを嗅いで鼻息を荒くするのだが、スルトは彼が近くにいても眉一つ動かさない。
その頃には、スルトとケーゴ、エドガーとケーゴが夫婦で、なにやらピーターとケーゴも恋人のようなものだということが周知されていた。マサトはそれが気に入らなかった。神の力によってΩの匂いが薄まったことを知らないマサトにとって、絶世の美人であることは否定しないが、自分よりも匂いが薄いΩにスルトが夢中になっていることが納得できなかった。その上そのΩにはまだもう一人夫がいて、それだけでは飽き足らずβのイケメンといい感じであることに闘争心が湧いていた。
(俺の方が質のいいΩなのに、なんで社長秘書が会社1のイケメン3人を独り占めしてんだよ!!)
マサトは行動を起こすことにした。バレンタインデーという、社内がゆるみきった雰囲気になるその日に。
◇◇◇
「はっ…はっ…」
「マサト、今日も最高だったぞ!また頼むわ」
「はい…俺も気持ち良かったです…!」
バレンタインの前日、マサトはスルトの上司に抱かれていた。情事が終わりそそくさと帰ろうとする上司を引き留める。
「あ、すみません!俺のお願い聞いてもらえませんか?」
「ん?なんだ?」
「明日、俺と彗斗さんに大量の仕事押し付けてもらえません?」
「へえ?誰もいなくなるまで彗斗と残業したいってことか?もしかして彗斗のこと狙ってる?」
「へへ、話が早いですね!」
「お前正気か?あいつにはあの美人秘書がいるんだぞ。上の下の顔面偏差値のお前がそいつに敵うとでも?」
「何言ってんすかチーフ。顔はあいつの方が上ですけど、Ωとしては俺の方が優秀ですよ。αにとってはそれが全てでしょ?」
「あー…いやあの秘書はもともと…。いや、いい。分かった。仕事くらいいくらでも押し付けてやるよ。その代わり揉め事にだけはなるなよ。彗斗は社長のご子息だし、秘書は社長の大のお気に入りだしな…」
「分かってますって!無理矢理襲うなんてしませんよ。だって結局俺を求めるのはαですもん」
「ふ、分かった。その代わり次んときは縛らせろよ」
「げー、チーフの縛りきっついんすよね…痕残るんですって。まあいいですけど…」
「はいよ。じゃあな」
◇◇◇
バレンタイン当日。スルトの元に次々と仕事が飛び込んでくる。上司に押し付けられる仕事の上に、取引先との仕事も上乗せだ。それでもスルトは文句を言わず淡々と仕事をこなしていく。新しい仕事が入っても「分かった」と言って受け取るだけだった。その様子にマサトは慌てて上司に耳打ちする。
「ちょ、チーフ!彗斗さん全然苦しそうじゃないんですけど!本当に仕事押し付けてくれてます!?」
「いやお前の10倍の量押し付けてるからな?!あいつまじで何者なんだよ…。つかお前は?仕事終わりそうか?」
「いえ、絶対今日中に終わりませんよ、俺は」
「だよなあ?!お前が普通だよ?!あいつまじでおかしいって…。くそ、更に押し付ける仕事探すか…」
「頼みますよ!」
すました顔をしているスルトだが、心の中では完全にテンパっていた。
(は?!え?!なんだこの仕事の量は?!いつもと段違いに多いではないか!!こんな量定時に終わらせられんだろうがぁ!!その上バレンタインで浮かれたやつらが俺にチョコを渡してくるからそれの相手もしないといけんのだぞ?!くそっ!そうだ、今日はバレンタインデーだぞ?!ケーゴがもしかしたらチョコを使った特別なセックスをしてくれる日かもしれないんだぞ?!…いや、あいつに限ってそんなことはないか…)
そのとき、スルトのスマホが鳴った。圭吾たちとのグループLINEの通知だ。
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圭吾【今日残業確定】
圭吾【社長の尻ぬぐい】
圭吾【たぶん帰り深夜まわる】
ピーター【了解】
ピーター【俺は定時で帰れそうです】
エドガー【僕は20時には帰る】
ピーター【じゃあ20時くらいに晩御飯できるように準備しておきますね】
エドガー【ピーター、いつもありがとう。】
エドガー【ケーゴ、帰りLINEしてくれたら迎えにいくよ】
圭吾【助かる】
圭吾【またLINEするね】
圭吾【スルトは?】
スルト【俺も深夜まわる】
スルト【今日の上司おかしい】
スルト【仕事の量がおかしい】
圭吾【なかーま】
ピーター【スルト様、お疲れ様です】
エドガー【じゃあ二人とも終わったら教えて】
圭吾【はーい】
圭吾【スルト、じゃあ先に終わった方が迎えに行く感じで】
スルト【分かった】
スルト【ていうか親父なにしでかした?】
圭吾【説明するのもめんどくさい】
圭吾【じゃあまたね】
スルト【誰かケーゴの写真送ってくれ】
スルト【俺には癒しが必要だ】
圭吾【はっ?!】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
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ピーター【画像】
圭吾【え】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
圭吾【ちょ】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
圭吾【ピーター?!】
エドガー【画像】
エドガー【画像】
エドガー【画像】
圭吾【まって】
エドガー【画像】
エドガー【画像】
圭吾【おい】
エドガー【画像】
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圭吾【エドガー】
圭吾【おいその写真はやばいから】
ピーター【画像】
ピーター【画像】
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圭吾【まって】
圭吾【送りすぎだし】
圭吾【なんでほとんどヤってるときの写真なんだよ!!】
エドガー【画像】
圭吾【は?!】
圭吾【なんで射精してる瞬間の写真があるんだよ!!!】
圭吾【いつ撮ったんだよ!!】
エドガー【動画もあるけどいる?】
圭吾【いらないいらない】
スルト【いる】
圭吾【は?!】
圭吾【あんたら今会社だよね?!】
圭吾【ほんとまじなにしてんの?!】
ピーター【動画】
エドガー【動画】
スルト【ありがとう】
スルト【これでがんばれる】
圭吾【動画は絶対見ないでよ?!】
圭吾【ねえ】
圭吾【ねえってば!!】
圭吾【返事をしろぉ!!!】
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