上 下
82 / 106
20歳の冬 就活(※)

帰宅

しおりを挟む
3日ぶりに家に帰ってきた僕は、すぐさまシャワーを浴びて体中に付着してる磯崎さんの体液を洗い流した。鏡に映る自分には、体中に赤い痕が付けられてる。手首と首にも繋がれていた痕が残っていた。僕は長袖と長ジャージを身に付けそれを隠す。リビングへ戻ると、重い空気のスルト、エドガー、ピーターがゆっくりと顔を上げた。エドガーが無理矢理微笑んで手招きする。

「ケーゴ、おいで」

「……」

僕は何も言わずに三人と離れた場所へ座った。しばらく沈黙が流れる。黙ってたら色々と考えてしまって喉元が熱くなってきた。僕は震える声を絞り出した。

「ごめんなさい…」

「…どうしてイソザキとホテルに?」

「…面接のあと…二人でバーに行って…お酒たくさん飲んじゃって…それから記憶がない…です…」

「ケーゴォ…」

スルトが低い声で唸った。僕は体をびくつかせて縮こまる。

「ケーゴはさ、自分がお酒に弱い自覚はある?」

「…あります」

「どうしてたくさん飲んじゃったの?」

「バイトの癖で…同じペースで飲んじゃって…」

「ケーゴォ…」

「ご、ごめんなさいぃ…」

「ケーゴ。僕たちは君が発情期にしてしまったことを責めるつもりはないよ。君の発情期のことはよく知っているし、薬を飲んでても抑えられないことも知ってる。どうしようもないことをとやかく言うつもりはない。でもね、イソザキとバーに行き、記憶をなくすまでお酒を飲んだことは弁明の余地がないよね」

「はい…」

「お前が3日も姿を消して、俺たちがどんな気持ちだったと思う?生きている心地がしなかった」

「ごめんなさい…」

「でも…生きてて良かった…。戻ってきてくれて本当に…よかった…」

ピーターがぐすぐす泣きながらそう呟いた。それにつられて僕も涙が溢れた。スルトとエドガーも、目元を手で覆って肩を震わせている。少しの沈黙のあと、鼻をすすりながらエドガーが声を出した。

「ケーゴ、お願いがある」

「なんでも言うこと聞く」

「こら、聞く前にそんなこと言うんじゃないよ。君の人生を縛るお願いをするんだから」

「それでもいい。こんな僕をまたこの家に迎え入れてくれたんだから」

「…そんなに自分を卑下するなケーゴ」

「……」

「お願いは3つある。まず今後外でお酒を飲まないこと」

「一生飲まない」

「GPSを付けさせてほしい」

「これからは絶対外しません」

「あと…就職先はスルトの会社にしてほしい」

「え…?」

「いやか?」

「いやとかそれ以前に…あんな大企業に僕が入れるわけないじゃん…。僕、Ωだよ…」

「いやな、実は親父がずっとお前を秘書にしたいと言っていてな…」

「は?社長秘書?めちゃくちゃ重要なポジションじゃない?」

「ああ。まあ社長秘書はお前だけではないから安心しろ。親父はただケーゴを独り占めする時間が欲しいだけだ。それにお前はΩと思えないほど頭がいいから仕事面も問題ないだろう」

「とにかく、ケーゴがスルトの会社に入ってくれるなら、スルトと僕とピーターもそこに就職するよ。そしたらいくらかは安心できる」

「なにかあったときにすぐ駆けつけられますもんね」

「そういうことだ。勝手に進路を決めてすまないが、無理を聞いてくれないか?」

「それで三人が少しでも安心できるなら、そうする」

「…ありがとう。ごめんね」

エドガー、スルト、ピーターは少し申し訳なさそうな顔をしてた。そんな顔しないでよ…。悪いことをしたのは僕のほうなのに…。

「僕たちからのお願いはそれだけ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

【完結】【番外編】ナストくんの淫らな非日常【R18BL】

ちゃっぷす
BL
『清らかになるために司祭様に犯されています』の番外編です。 ※きれいに終わらせたい方は本編までで留めておくことを強くオススメいたします※ エロのみで構成されているためストーリー性はありません。 ゆっくり更新となります。 【注意点】 こちらは本編のパラレルワールド短編集となる予定です。 本編と矛盾が生じる場合があります。 ※この世界では「ヴァルア以外とセックスしない」という約束が存在していません※ ※ナストがヴァルア以外の人と儀式をすることがあります※ 番外編は本編がベースになっていますが、本編と番外編は繋がっておりません。 ※だからナストが別の人と儀式をしても許してあげてください※ ※既出の登場キャラのイメージが壊れる可能性があります※ ★ナストが作者のおもちゃにされています★ ★きれいに終わらせたい方は本編までで留めておくことを強くオススメいたします★ ※基本的に全キャラ倫理観が欠如してます※ ※頭おかしいキャラが複数います※ ※主人公貞操観念皆無※ 【ナストと非日常を過ごすキャラ】(随時更新します) ・リング ・医者 ・フラスト、触手系魔物、モブおじ2人(うち一人は比較的若め) ・ヴァルア 【以下登場性癖】(随時更新します) ・【ナストとリング】ショタおに、覗き見オナニー ・【ナストとお医者さん】診察と嘯かれ医者に犯されるナスト ・【ナストとフラスト】触手責め、モブおじと3P、恋人の兄とセックス ・【ナストとフラストとヴァルア】浮気、兄弟×主人公(3P) ・【ナストとヴァルア】公開オナニー

【完結】【R18BL】極上オメガ、いろいろあるけどなんだかんだで毎日楽しく過ごしてます

ちゃっぷす
BL
顔良しスタイル良し口悪し!極上Ωの主人公、圭吾のイベントストーリー。社会人になってからも、相変わらずアレなαとβの夫ふたりに溺愛欲情されまくり。イチャラブあり喧嘩あり変態プレイにレイプあり。今シリーズからピーター参戦。倫理観一切なしの頭の悪いあほあほえろBL。(※更新予定がないので完結としています※) 「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」の転生編です。 アカウント移行のため再投稿しました。 ベースそのままに加筆修正入っています。 ※イチャラブ、3P、4P、レイプ、♂×♀など、歪んだ性癖爆発してる作品です※ ※倫理観など一切なし※ ※アホエロ※ ※色気のないセックス描写※ ※特にレイプが苦手な方は閲覧をおススメしません※ ※それでもOKという許容範囲ガバガバの方はどうぞおいでくださいませ※ 【圭吾シリーズ】 「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」(本編) 「極上オメガ、前世の恋人2人に今世も溺愛されています」(転生編) 「極上オメガ、いろいろあるけどなんだかんだで毎日楽しく過ごしてます」(イベントストーリー編)←イマココ

君を独占したい。

檮木 蓮
BL
性奴隷として売られたユト 売られる前は、平凡な日を送っていたが 父の倒産をきっかけに人生が 変わった。 そんな、ユトを買ったのは…。

【完結】【R18BL】異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました

ちゃっぷす
BL
Ωである高戸圭吾はある日ストーカーだったβに殺されてしまう。目覚めたそこはαとβしか存在しない異世界だった。Ωの甘い香りに戸惑う無自覚αに圭吾は襲われる。そこへ駆けつけた貴族の兄弟、βエドガー、αスルトに拾われた圭吾は…。 「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」の本編です。 アカウント移行のため再投稿しました。 ベースそのままに加筆修正入っています。 ※イチャラブ、3P、レイプ、♂×♀など、歪んだ性癖爆発してる作品です※ ※倫理観など一切なし※ ※アホエロ※ ※ひたすら頭悪い※ ※色気のないセックス描写※ ※とんでも展開※ ※それでもOKという許容範囲ガバガバの方はどうぞおいでくださいませ※ 【圭吾シリーズ】 「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」(本編)←イマココ 「極上オメガ、前世の恋人2人に今世も溺愛されています」(転生編) 「極上オメガ、いろいろあるけどなんだかんだで毎日楽しく過ごしてます」(イベントストーリー編)

【完結】彼女のお父さんに開発されちゃった自分について

七咲陸
BL
自分には可愛くて美しい、可憐な恋人のレイチェルが居る。そのレイチェルの父である彼は自分を好きだと言う。自分も彼に惹かれてしまい…… ■侯爵家当主で彼女の父×子爵家子息 □やまもおちもいみもありません。ただただひたすらに作者の趣味と性癖を詰め込んだだけの話です。 ■広い心でお読み下さい。終始ヤッてるだけです。 □R-18です。自己責任でお願いします。 ■ちゃんとハッピーエンドです。 □全6話

天野兄弟のドキハラ!な日常生活

狼蝶
BL
 学校一の美男子かつ皆が憧れる生徒会長(天野裕)――の弟はまさかのビン底眼鏡に髪ぼっさぼさの超ダサい男(研)。しかし実は二人は恋人関係であり、さらに家の中だけでは研は超々イケメン男!!?  そのイケメンさから皆に引かれ、それを嫌われていると感じて心を閉ざし容姿を隠すようになった研と、それを逆手に『イケメンの研』を独り占めする裕。研にとって裕は唯一心を許し甘えられる存在であり、反対に裕にとって研は誰にも取られたくないくらい心が狭くなる存在である。  実家から離れた高校に通うため一人暮らしを始めた裕を研が追っかけ、現在同居中の仲良し兄弟。だが『エッチは成人してから』という裕の厳しい信念によって、研は裕とキスまでしかできていなかった。エッチはなしなものの、映画鑑賞に料理作りなど二人でのんびりとラブラブな生活を送っていたが、そこに夏の嵐が・・・。  夏休みの始まりとともに、天野家に彼らの従兄弟(鈴音)がやって来たのだ。憧れの裕が通う高校に合格するつもりであるため、視察といって休暇中泊まることに・・・。裕の話も聞かずに買い出しに出かけていった鈴音は偶々素顔の研とぶつかり、大嫌いな"研”とは知らずに好きになってしまって――。天野兄弟の夏休み。一体この夏、どうなっちゃうの――!?  *視点切り替え:裕→☾、研→☆、鈴音→☀

総受け体質

田原摩耶
BL
二人の兄に毎晩犯されて可愛がられてきた一人称僕・敬語な少年が初めて兄離れをして全寮制学園に通うことになるけどモブおじさんにセクハラされたり色々されながらも友達をつくろうと肉体的に頑張るお話。 ※近親相姦、セクハラ、世間知らず、挿入なしで全編エロ、乳首責め多め。なんでも許せる方向け。

処理中です...