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20歳の冬 就活(※)

就活

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「…ん…」

「目が覚めたかい?」

「……」

目の前にいたのは石鹸の香りがする磯崎さんだった。僕は自分の体を見た。体液にまみれ、体中キスマークをついた体。

「あ…ぼ、僕…」

かたかた震えだした僕を磯崎さんが抱きしめてキスをした。僕は磯崎さんの胸に腕をついて拒もうとしたけど、力がかなわずに無理やりキスを続けられる。磯崎さんの匂いと体液で頭がまた真っ白になりそうだ。磯崎さんはそんな僕の体を撫で、おしりにそっと指を添えた。

「っ、やめてください!…んんんっ…!」

指が僕の中に入って来る。その指は僕の弱いところを何度も刺激した。

「あっ…んっ…磯崎さっ…、」

「まだ足りない。もっと君を抱きたいんだ圭吾くん」

「いやだっ!もう僕に触らないで!!離れてください!!この匂い、おかしくなる!!」

「素直になりなさい。おかしくなればいい。私の味を知った君は、もう私以外で満足できないんだから」

「やめろっつってんだろうがぁぁぁっ!!!」

「っ…」

思わず磯崎さんの頬をひっぱたいてしまった。磯崎さんは叩かれた頬を手で覆い僕を見る。その目はいつもの穏やかな磯崎さんじゃなくて、とても冷たかった。でも僕はめげずに叫んだ。

「僕に近づくな!!服返せ!!帰る!!」

「…圭吾くん。意識を失う前までの記憶がないのかい?」

「…ない、けど…」

それを聞いた磯崎さんはニッコリ笑った。

「そうだよね。やっぱり」

「でも、セックスしたんでしょ。今の状況見たら分かりますよ」

「そこからなんだ。ああ。セックスしたよ。金曜の夜に一度、土曜は丸一日、今日は君が意識を失うまでの間で数えきれないほど。何度も何度もね」

「え…?」

「そっか。本当になにも覚えてないんだね。だったら君がそんな態度をとるのも頷けるな」

「ちょ…ちょっと待ってください。なにを言って…。え?今日って土曜日じゃないの…?」

「日曜の夕方。土曜の朝からさっきまで、君は発情期だったんだよ」

「あ…」

そういえば…磯崎さんと朝食をとってる最中に発情期になって…。そうだ…それから僕、磯崎さんと…。で、でも待って。どうして一日半もの間発情期終わらなかったの…?

混乱してる僕に磯崎さんがまたキスをした。僕に覆いかぶさり、脚を開かせる。

「ちょっ!やめろって言ってんじゃん!!」

「あのね圭吾くん。私と君は運命の番なんだよ」

「は?」

「でも君は私とのセックスを覚えていないようだから、今から教えてあげる」

「いやいやいや何言ってんの?!いいです結構です僕には婚約者いますので!!!」

「そんなものになんの意味がある?紙切れで結ばれた相手より、運命で結ばれた相手を選びなさい」

「いやですけど?!ってかなんだよ運命って!!知らんわ!!そんなもんこっちは感じてねえんだわ!!」

「…はは、それが圭吾くんの素なのかな?ずいぶん口が悪いんだね」

「よく言われます!!それよりはやくどいてくれません?!」

「口が悪い圭吾くんも悪くない。それに、きっと私に抱かれたらかわいく鳴くようになるんだろうね」

磯崎さんは涼しい顔をして暴れる僕をおさえつけ、両手をネクタイで縛った。

「ぎゃーーー!!!やめれぇぇぇっ!!外せぇぇっ!!」

それでも僕が激しく暴れるものだから、磯崎さんがためいきをついて起き上がった。諦めてくれたと思ってホッとしていると、磯崎さんがスマホを取り出してどこかへ電話をかけた。

「私だ。縄を持ってきてくれないか」

「…ん?」

「ああ、発情期を終わらせた途端駄々をこねられていてね。縄で縛りでもしないかぎり大人しくしてくれそうになくて。…あー、そうだね。手と…首輪につける鎖も持ってきてくれ」

「……」

「ああ。すぐに。頼んだよ」

「……」

電話を切った磯崎さんと目が合った。しばらくの沈黙のあと、僕は素っ裸で両手を縛られたまま一目散に逃げた。

「あ、圭吾くん待ちなさい!」

「待つわけないよねぇ?!」

廊下へ繋がるドアを開けようとしたら、反対側からドアが開いた。部屋へ入ろうとしていたウェイターが僕を見て「わぁぁっ!」と声をあげた。そりゃそうだ。すっぱだかの人が目の前にあらわれたら誰だってそうなる。

「すみません通してください!」

「いや…でもお客様、あなた今裸ですし…」

「じゃ、じゃあ助けてください!!僕いま襲われそうなんです!!」

「…発情期抜けたんですね、お客様」

「え?」

「正気に戻ったらこんな感じなんですね」

「……」

ウェイターはにやにやしながら僕の体を舐めるように見た。…あれ、この人ただのウェイターじゃない…?

「にしても、磯崎様に抱かれてあの方を嫌がるなんて。そんな人はじめて見ましたよ」

「彼、発情期のときの記憶がないんだ」

いつの間にか僕の背後に立ってた磯崎さんが答える。

「ああ、なるほどぉ」

「だから正気のときに抱いてあげないといけなくて。持ってきてくれたかい?」

「はい、どうぞ」

「……」

磯崎さんがウェイターから袋を受け取った。袋から出てきたのは当然、縄と鎖。ゾッとしてウェイターを押しのけて部屋を出ようとしたけど、二人がかりで取り押さえられてベッドまで引きずられた。暴れる僕をウェイターが馬乗りになっておさえつける。磯崎さんは僕の両手を縄で縛り、縄の端をベッドに括り付けた。そして僕の首輪に鎖を繋げ、鎖の端をベッドに括り付けた縄に繋げる。これで僕はもうベッドから出られなくなってしまった。
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