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20歳の冬 就活(※)

就活

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「ん…」

「おやおや。さっきまであんなに元気だったのに。急にスイッチが切れたみたいに酔い始めましたね」

「おかしいな。いつもの圭吾くんだったら6杯なんかで酔わないんだけど」

就活の質問を終えメモをカバンに直した圭吾は、そのあと磯崎と楽しく話しながらカクテルを飲んでいた。バイト時代のくせで磯崎のスピードに合わせてグラスを空けてしまい、あっという間に酔ってしまった。
6杯目のグラスを空にしてテーブルに置いたときには、圭吾の顔は赤くなり意識が朦朧としていた。

「圭吾くん、大丈夫かい?」

「だいじょうぶです…ちょっとお手洗いいってきます…」

圭吾は立ち上がったが、体重を支えられずよろけてしまう。とっさに磯崎が圭吾の体を抱いて転倒を防いだ。

「全然大丈夫じゃないじゃないか!…っ」

圭吾と接近し、いつにも増して甘い香りが磯崎の鼻を刺激する。

「といれ…」

「連れて行ってあげる。ほら、しっかり掴まって」

「すみません…」

磯崎がトイレに連れて行くと、圭吾が個室へ入った。しかしすぐドアが開く。

「もう済んだのかい?」

「鍵、忘れました…」

「鍵?」

「カバンの中に…」

「カバンの中だね。取ってくるから少し待ってて」

「うん…」

磯崎はカウンターに戻り、圭吾のカバンを開いた。筆記用具、手帳、3つの指輪、小さな鍵だけが入っている。磯崎は鍵を握ってトイレで待っている圭吾に手渡した。

「はい、鍵」

「ありがとうございます」

圭吾は鍵を受け取り個室にこもった。カチャカチャと何かを開錠する音が聞こえる。水を流し、また小さな金属音がしてから圭吾は出てきた。磯崎はふらふらしている圭吾を支え、カウンターに戻った。

「マスター、お会計お願いしていいかい?」

「おや、もう帰られるのですね。ま、お連れさんは限界みたいですし、当然かな」

「まさかこんなに弱いとは思わなかったよ。いつもは軽く15杯とか飲むんだけどなあ」

「ふふ。磯崎さん。簡単なことですよ。彼、ボーイズバーでバーテンダーをしていたんでしょう?彼らはだいたいアルコールを抜いた飲み物を飲んでいますから」

「ああ、そう言うことかい。Ωなのにどうして強いんだろうと思ってたんだが、それで納得だ。いくら飲ませても酔わないわけだ」

「そういうことです」

磯崎はカードをマスターに渡したあと、店を出てタクシーを呼んだ。数十分後。

「圭吾くん。歩ける?」

「はい…」

磯崎に掴まりながらおぼつかない足取りで圭吾は歩く。思考能力が低下している圭吾は、ホテルの部屋に案内されて初めて違和感を覚えた。

「あれ…?ここ、どこですか…?」

「ホテルだよ。こんなに酔い潰しちゃったって知られたら親御さんに叱られてしまうからね。今日はここで一泊して帰りなさい。安心して。君におかしなことはしないから」

「え…だめです。家にかえります…」

「帰るにしても、少し休憩しなさい。今のままでは一人で歩くこともできないんだよ?」

「はい…」

磯崎に介抱されながら、圭吾は広いベッドに横たわった。眠いのか、枕を抱きしめて目を瞑っている。

「圭吾くん。僕はシャワーを浴びてくるから、ゆっくりしててね」

「はい…」

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