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弟から手紙が届きました
第五十七話
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「僕はずっと、ロジェに依存していた」
そばにロジェがいないと落ち着かなかった、とローラン様は言った。
「僕を一番大事に思っているロジェ。そばにいても手を出さないロジェ。それが僕に必要なものだった。そこに僕は、安らぎを見出していたんだ」
ローラン様が遠い目で窓の外を見る。
「今思えば、僕はロジェのことを特別愛していたんだと思う。ロジェが手を出してこないことに安らぎを覚えながら、心の底では繋がりたいと思っていたのかもしれない。でも、性行為を嫌悪していた僕は、ずっとその気持ちに目を背けていた」
頭では分かっていたけれど、ローラン様の口からそれを聞かされると心臓が痛くなった。
ローラン様が僕の手を放したので、僕は背筋がさっと寒くなった。
しかし彼の手は、そのまま僕の頬を挟んだ。
「エディ。君にこんな話をしてすまない。だが、今回の過ちについて話すのに必要なことだった」
「……」
「昨晩僕はロジェを求めた。ロジェに対する礼も兼ねていたが、僕の気持ちを満たすためでもあったんだ。すまない」
首を振ることも何かを言うこともできないでいると、ローラン様が口を開いた。
「だが……これで僕とロジェの気持ちの整理ができた。やっと僕たちは前に進める」
そしてローラン様は申し訳なさそうに微笑する。
「僕は、君を愛するようになってからもロジェに依存していた。君なら分かるだろう? 君と抱き合うときでさえ、僕はロジェをそばにおいていたんだから」
「……は、はい……」
「だが、これからは君と二人だけの時間にする。ロジェに依存するのは、昨晩で終わりにした」
それを君が許してくれるならだけれど、と言ってローラン様は苦笑した。
「不誠実な僕を許してくれないか。こんな話をしてからだと説得力に欠けるだろうけど、僕は君のことを一番に愛しているよ」
そう言って、ローラン様は僕を抱きしめる。
「ロジェとエディに対する僕の気持ちの違い……。先日の一件でやっと分かったんだ。聞いてくれるか?」
「はい……」
「僕はロジェに守られたい。だけど君のことは……守られるより、守りたい」
その言葉を聞いた瞬間、僕の目にじわっと涙が滲んだ。
守られること。それがローラン様にとって、一番心に響くことだった。
そんな一番大切なものを、与えられるよりも与えたいと思ってくれた。
その気持ちが本当だからこそ、自分を犠牲にしてでも借金取りから僕を守ってくれたんだろう。
「さきほど君は、筋骨隆々になって僕を守ると言ったね。そんなのいらない。僕が君を守りたいんだ。だから筋骨隆々にはならないでくれ頼む」
「は、はい……」
「あと……」
そのとき、僕を抱きしめる力が強くなった。(爪も立てられている……)
「さきほど君は……僕が抱かれる側の方がいいなら……などという話をしていたが……」
「……」
僕はなんてことを口走ってしまったんだろうか。
「そんなわけがないだろう……抱かれるより抱く方を好んでいるに決まっている……」
「す、すみません……」
「二度とあんなことは言うな……。できることなら経験があることも知られたくなかったんだから……」
「はい……」
ローラン様は僕を見つめる。その目は少しばかりの不安がうかがえた。
「エディ。これで僕の話したいことは全て話した。こんな僕だけど、君は今でも僕を受け入れてくれるかい?」
僕はローラン様を見つめ返し、目じりを下げる。
「あなたとロジェさんが愛し合っていたとしても、僕はあなたと離れるつもりなんてありませんでしたよ」
ロジェはすごいや。大好きでも、ローラン様を守るためならなんでも我慢できるし、耐えられる。
たとえローラン様が自分以外の人と愛し合うことになっても、ローラン様が幸せに生きられるならそれでいいと思えるんだから。
僕にはそんなこと思えなかった。恋人同士になるまではまだ冷静に考えることができたはずなんだけどな。
今じゃダメだ。離れたくないし、離れられない。
僕たちはじっと見つめ合い、自然と唇を重ね合った。
そのキスはだんだんと熱を帯びていき、二人して余裕のない顔で激しく舌を絡めた。
そばにロジェがいないと落ち着かなかった、とローラン様は言った。
「僕を一番大事に思っているロジェ。そばにいても手を出さないロジェ。それが僕に必要なものだった。そこに僕は、安らぎを見出していたんだ」
ローラン様が遠い目で窓の外を見る。
「今思えば、僕はロジェのことを特別愛していたんだと思う。ロジェが手を出してこないことに安らぎを覚えながら、心の底では繋がりたいと思っていたのかもしれない。でも、性行為を嫌悪していた僕は、ずっとその気持ちに目を背けていた」
頭では分かっていたけれど、ローラン様の口からそれを聞かされると心臓が痛くなった。
ローラン様が僕の手を放したので、僕は背筋がさっと寒くなった。
しかし彼の手は、そのまま僕の頬を挟んだ。
「エディ。君にこんな話をしてすまない。だが、今回の過ちについて話すのに必要なことだった」
「……」
「昨晩僕はロジェを求めた。ロジェに対する礼も兼ねていたが、僕の気持ちを満たすためでもあったんだ。すまない」
首を振ることも何かを言うこともできないでいると、ローラン様が口を開いた。
「だが……これで僕とロジェの気持ちの整理ができた。やっと僕たちは前に進める」
そしてローラン様は申し訳なさそうに微笑する。
「僕は、君を愛するようになってからもロジェに依存していた。君なら分かるだろう? 君と抱き合うときでさえ、僕はロジェをそばにおいていたんだから」
「……は、はい……」
「だが、これからは君と二人だけの時間にする。ロジェに依存するのは、昨晩で終わりにした」
それを君が許してくれるならだけれど、と言ってローラン様は苦笑した。
「不誠実な僕を許してくれないか。こんな話をしてからだと説得力に欠けるだろうけど、僕は君のことを一番に愛しているよ」
そう言って、ローラン様は僕を抱きしめる。
「ロジェとエディに対する僕の気持ちの違い……。先日の一件でやっと分かったんだ。聞いてくれるか?」
「はい……」
「僕はロジェに守られたい。だけど君のことは……守られるより、守りたい」
その言葉を聞いた瞬間、僕の目にじわっと涙が滲んだ。
守られること。それがローラン様にとって、一番心に響くことだった。
そんな一番大切なものを、与えられるよりも与えたいと思ってくれた。
その気持ちが本当だからこそ、自分を犠牲にしてでも借金取りから僕を守ってくれたんだろう。
「さきほど君は、筋骨隆々になって僕を守ると言ったね。そんなのいらない。僕が君を守りたいんだ。だから筋骨隆々にはならないでくれ頼む」
「は、はい……」
「あと……」
そのとき、僕を抱きしめる力が強くなった。(爪も立てられている……)
「さきほど君は……僕が抱かれる側の方がいいなら……などという話をしていたが……」
「……」
僕はなんてことを口走ってしまったんだろうか。
「そんなわけがないだろう……抱かれるより抱く方を好んでいるに決まっている……」
「す、すみません……」
「二度とあんなことは言うな……。できることなら経験があることも知られたくなかったんだから……」
「はい……」
ローラン様は僕を見つめる。その目は少しばかりの不安がうかがえた。
「エディ。これで僕の話したいことは全て話した。こんな僕だけど、君は今でも僕を受け入れてくれるかい?」
僕はローラン様を見つめ返し、目じりを下げる。
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ロジェはすごいや。大好きでも、ローラン様を守るためならなんでも我慢できるし、耐えられる。
たとえローラン様が自分以外の人と愛し合うことになっても、ローラン様が幸せに生きられるならそれでいいと思えるんだから。
僕にはそんなこと思えなかった。恋人同士になるまではまだ冷静に考えることができたはずなんだけどな。
今じゃダメだ。離れたくないし、離れられない。
僕たちはじっと見つめ合い、自然と唇を重ね合った。
そのキスはだんだんと熱を帯びていき、二人して余裕のない顔で激しく舌を絡めた。
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