【完結】【R18BL】Ω嫌いのα侯爵令息にお仕えすることになりました~僕がΩだと絶対にバレてはいけません~

ちゃっぷす

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入ってきちゃいけません

第三十七話

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「僕を……オメガの僕を、受け入れてくれるのですか……?」

 僕の問いに、ローラン様が申し訳なさそうに笑う。

「それを聞きたいのは僕の方だ。あんなひどいことをした僕を……君は受け入れてくれるのか?」

 ローラン様の瞳がかげる。

「僕は……ラットのときの僕が怖い。もしかしたら君に、また醜態を見せてしまうかもしれない。君にひどいことを言ってしまうかもしれない」
「あ……」

 僕が大きな勘違いをしていたことに、そのときやっと気付いた。
 ローラン様はオメガが嫌いなのではない。ラットになった自分が嫌いなのだ。
 そう考えると、それまで抱いていた不安や恐れが共感に変わった。

「ローラン様……! そのお気持ち、分かります……! 僕も発情したときの自分がちょっと嫌ですもの……。いつもよりずっと、その……卑猥な言葉で頭がいっぱいになって……」

 ローラン様の目からぶわっと涙が溢れた。

「まさかこの気持ちを誰かと共有できる日が来るなんて……っ」
「僕もですぅぅ……」

 それから僕たちは、ラットのときの悩みや、発情による大変さなどを語らった。
 以前よりも遠慮がちな距離感で話していたけれど、心の距離がぐっと縮まったような気がした。

 ティーカップが空になった頃、ローラン様が呟いた。

「エディは神からの授かりものだ」
「えっ? これまた大げさなっ」

 それからローラン様は、ぎこちなく両腕を広げる。

「いつも僕を守ってくれるエディ。僕の悩みに共感してくれるエディ。これからは僕も君を守れるように頑張るから。君の悩みに寄り添いたいから。だからまた、もう一度……僕の胸の中に戻ってきてくれる?」

 僕はおそるおそる、ローラン様に抱きついた。

「これからは隠し事しません。だから、おそばにおいてください」

 ローラン様は安堵の吐息をつき、強く僕を抱きしめる。

「ありがとう、エディ……」

 しばらく抱き合っていると、ローラン様が舌打ちした。

「……エディからロジェの匂いがする」
「うっ……」
「エディ……。これからはロジェと触れ合わないでほしい……」
「はい……」

 あの……と、僕は上目遣いでローラン様を見た。

「ローラン様も……ロジェさんに、その……舐めてもらうのを、やめてもらっていいですか……?」
「えっ」
「ぼ、僕がするので……その……僕がしたいです……」

 ローラン様は顔を真っ赤にしてコクコク頷いた。

「ぼ、僕も、エディだけに触れられたい、から……」

 そこでロジェが、しめたと言わんばかりに手を叩く。

「かしこまりましたローラン様! それでは今晩から、エディはあなたのベッドで寝ることにしますので!」
「ちょっと待てロジェ! 話が早すぎないか!」
「そんなことありませんよ。こちとらもうニカ月も待ちましたのでね! これ以上は待てません! それに――」

 ロジェがニヤニヤとローラン様を見下ろす。

「いいのですか? 今、エディは私の部屋で寝起きしているのですよ?」
「よし。今すぐエディの荷物をここに移動しろ」
「かしこまりました」

 そこでやっと、ローラン様が僕の意向を確かめる。

「いいか? エディ」

 正直に言うと、まだ心の準備ができていない……!
 つまり毎晩ローラン様と一緒に寝るってことでしょ!?
 そんなの僕……我慢できるかちょっと不安だよ……!?

 なかなか頷かない僕に、ローラン様が不機嫌そうな目を向ける。

「なんだ。僕よりロジェと同じ部屋の方がいいのか?」
「いいえ!? そんなはずありません!!」
「そうか。ロジェ、早速作業にかかれ」
「分かりました」

 ロジェが部屋から出て行ったあと、ローラン様が背を向けたまま言った。

「同じベッドで寝るからといって焦る必要はない。ゆっくり僕たちのペースでやっていけばいいから……」

 それが僕に向けた言葉なのか、ローラン様自身に言い聞かせるための言葉なのか、僕には分からなかった。
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