【完結】【R18BL】Ω嫌いのα侯爵令息にお仕えすることになりました~僕がΩだと絶対にバレてはいけません~

ちゃっぷす

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入ってきちゃいけません

第三十五話

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 ◇◇◇
(エディside)

 ロジェは自室に帰ってくるなり僕を抱きしめた。小刻みに震えながら、強く、強く。
 ロジェの腕の中に包まれ、それまで我慢していた涙がとめどなく流れる。

「うぅっ……うぇぇぇぇんっ……ひぐっ……うぅぅぅ……っ」
「辛かったですね。あなたはよく頑張りました。えらいです」
「うわぁぁぁぁぁん!!」

 ローラン様に僕の秘密が全てバレた。
 発情した僕に向けられたローラン様の目。恐怖と憎しみがいっぱいつまっていた。
 真っ青な顔で、僕から離れようとあとずさっていた。
 恐れていた言葉を、やっぱり言われてしまった。

「僕、ローラン様に嫌われちゃった……」

 口に出したら余計に涙が溢れた。
 嫌われたくない。ローラン様と過ごした幸せな時間を嘘にしたくない。
 でも……きっと、それは難しいのだろう。
 だって僕はオメガなのだから。

「どうして僕はオメガなの……? 僕がオメガじゃなかったらこんなことにならなかったのに……っ!!」
「っ……」

 ロジェが唇を噛み、僕を突き放した。なぜかロジェまで泣きそうな顔になっている。

「ロジェ……?」
「……エディ」

 ロジェが僕の顔を上向かせる。そして――

「んっ……」

 ――僕に、キスをした。

「んっ……、んんっ……、んんん……!!」

 ロジェの舌が僕の口内をかき回す。激しくも優しいキスに、発情中の僕は簡単に射精した。

「はっ……はっ……。ロ、ロジェ……急に何をするんですか……っ。キスはしないって約束だったのに……っ。んんっ……!」

 ロジェは僕の頭を抱き寄せ、また激しいキスをした。
 そのまま僕を押し倒す。

「エディ……」
「あ……」

 ロジェが、屹立したペニスを僕のおしりに当てる。

「どうして……?」

 ロジェはこの六日間、いくら僕がお願いしても、一度も相手をしてくれなかった。
 その理由を「ローラン様に禁止されたから」だと言っていた。
 それなのに、どうしてロジェは今さら僕を……

「……ローラン様が、いいって言ったの……?」
「……」
「ローラン様以外の人に抱かれてもいいって、言ったの……?」

 ロジェは黙ったままだ。

 そっか。ローラン様は、僕のことなんてもうどうでもよくなったんだ。
 仕方ないよね。僕が、すごく大事なことを隠していたせいだ。

 ローラン様はオメガのことが大嫌いだもん。今まで僕によくしてくれていたのは、僕をベータだと思っていたからなんだから。
 僕がオメガだと分かれば嫌いになるのは仕方ないよ。
 大嫌いなオメガに騙されていたって知ったら、僕を憎んでも仕方ない。

 虚ろな目から涙を流す僕に、ロジェがまたキスをした。
 それから僕の耳元で囁く。

「私が愛します、エディ。オメガのあなたを、私は……」
「やめてロジェ……そんなこと言わないで……」

 それって、ローラン様がオメガの僕を愛してくれないって言っているようなものじゃないか……。

 ロジェのペニスが、ゆっくりと僕の中に入ってくる。

「あ……あっ……」

 六日間、ずっと欲しかったこの感覚。
 誰のでもいい。とにかくペニスと精液が欲しかった。
 そこに愛なんて必要なかった。
 ただ、快感と精液をもらえれば、それで……

「あぁぁぁぁっ!!  あっ、あぁぁっ、あっ、あっ……!!」

 無意識に、ロジェの首に腕を回していた。
 快感を与えられるがままに悦び、甘い声でロジェの名前を呼んで、僕は……オメガの僕は……
 そのひと時だけ何もかも忘れ、必死にロジェを求めた。


 ◇◇◇


 気を失っていたようだ。
 目が覚めたとき、僕ははだかのロジェに腕枕されていた。

「おはようございます。エディ」
「……」
「ふむ。発情は治まったようですね」

 ロジェが顔を近づける。キスされそうになり、僕はとっさに顔を背けた。

「おや」
「……キスはダメです」
「昨晩はあんなにさせてくれたのに。残念です」
「……」

 僕は両手で顔を覆った。

「ローラン様に愛想を尽かされても、これじゃしかたありませんね……」
「……」
「発情中の僕は……抱いてくれるなら誰でもいいんですから」

 僕はのろのろと体を起こしながら言った。

「ローラン様は、もう僕と会ってくれないでしょうね」
「……」
「僕に笑顔を向けることも、僕に甘えることも、もうしてくれないんでしょうね……」

 たった三カ月しか一緒にいなかったのに、数えきれないほどの思い出をもらってしまった。
 普段はツンケンしているローラン様が、僕にだけは甘えてくるのがすごく可愛かった。
 指一本触れられたくないって言っておきながら、僕にハグを求めるところも愛らしくて。
 熱っぽい目をしてキスをしてくれるときのローラン様に、何度ドキドキしたか分からない。

「っ……」

 こんなことなら、もっと早く正体を打ち明けておけばよかった。
 早いうちに嫌われておけば、あんなに幸せな時間をローラン様と一緒に過ごさずにすんだのに。
 そうしたら、潔くここを去れたかもしれないのに。

 今の僕は、どうしてもそれができない。

「ロジェさん……。僕を解雇しないでください……。ローラン様のボーイからは外れますから……他のお仕事を……なんでもしますから……。どうか、ここを追い出さないで……」

 それを聞いたロジェは、ちょっと考え込んでから僕を押し倒した。
 そして僕を見下ろし、ニッコリ笑う。

「では、私の恋人にでもなりますか?」
「……」
「嫌なら男娼でもいいですよ」
「……ここにいさせてくれるなら……ロジェさんの男娼でも……」
「へえ?」

 どうせここを解雇になれば、オメガらしく体を売って、家を支えるしかないんだ。
 ロジェは基本的にひどくはしないし、ローラン様と同じ場所にいられるのなら、僕にとっても悪い条件じゃないし……

 ロジェの顔が近づいてくる。キスをされると分かり、咄嗟に顔を背けそうになった。
 でも、僕はグッとこらえてロジェのキスを受けた。

「んっ……んん……」
「ふふ。無理をして」

 キスを終えたロジェが、僕のあごの下を撫でる。

「そこまでして、ローラン様の元を離れたくないのですか?」
「往生際が悪いって、自分でも思います。でも……」
「あなた、昨晩のローラン様のご様子を覚えているのでしょう?」
「……」
「あんなひどい目を向けられても、ローラン様への気持ちは変わらないのですか?」

 僕は唇を噛み、小さく頷いた。

「なぜ? 悲しかったのでしょう? あんなに泣いていたじゃありませんか」
「悲しかったですけど……。だからってローラン様への気持ちがそう簡単に変わるわけでは……」

 ロジェが僕をじっと見つめる。僕はそっぽを向いたまま、ぽろぽろと涙をこぼした。
 しばらくして、ロジェはふっと頬を緩める。

「おいたがすぎましたね」
「そうですね……正体を隠してローラン様の心を弄んだんですから、ここにいる資格なんて僕にはありません」
「いいえ。おいたがすぎたのは、私です」

 ロジェは甘い手つきで僕の頬を撫でる。

「エディ、気付いていませんか? 私は昨晩から何も、ローラン様のお気持ちをあなたに伝えていませんよ」
「伝えていたようなものでしたよ……。もう僕にはだいたい分かっていますから――」
「いいえ。あなたが見ているのは、あなたが勝手に想像しているだけのローラン様です。なぜなら……」

 ロジェはうるんだ瞳で僕をじっと見つめ、微笑んだ。

「ローラン様は今でも、……いえ、今までよりも、あなたを大切な人だと思っているんですから」
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