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執事なんてきらいです

第三十二話

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(ローランside)

 エディの口内で射精したばかりなのに、僕の興奮は増すばかりだ。ペニスは依然、今までにないくらい勃起している。

 ロジェがエディの耳元で囁く。

「エディ。あなたが上ですよ」
「は、はい……」

 エディが僕にまたがる。

「あ……」

 僕のペニスとエディのアナルが触れ合う。カウパーが溢れすぎていたせいで、ペニスが滑った。
 エディが恥ずかしそうに、僕のペニスの位置を整える。

「……」

 したい。
 エディと早く繋がりたい。
 僕が上になって、思うがまま腰を振りたいと思うほどに。

 でも――

「っ……」

 僕は、エディを突き放した。

「ロ、ローラン様……」
「……恥をかかせてすまない、エディ。やっぱり……できない」

 そのときのエディの顔は、きっと忘れられないだろう。
 まるで、この世の終わりのような表情だった。

「ぼ、僕のこと、嫌になりましたか……?」
「ちがう。ちがうんだ、エディ」

 僕はロジェをじろっと睨んだ。

「僕の大切な人を利用するな」

 ここはロジェが用意した、僕がショックにならないための性交の場だ。
 僕に想いを寄せていようとも、今ここにいるエディはロジェに命令されたボーイにすぎない。

 ここで僕が欲情に流され最後までしてしまったら……
 今後するであろうエディとの性交も、ボーイが主人の性欲を発散させるためのものになり下がるだろう。

 僕はエディと、そんな虚しい関係にはなりたくない。

 涙をこらえているエディを、僕は抱きしめる。

「僕もエディと同じ気持ちだ。でも、こんなに大切なことを、ロジェの命令でしたくないんだ」
「……」
「ロジェが見ていない、二人きりのときにしたいんだ」
「はい……」
「そのときは、僕から君を抱きしめるから」

 エディは小さく頷き、僕にしがみついた。

 僕たちのやりとりをそばで見ていたロジェは、うんざりしたようにため息を吐いた。

「ここまでお膳立てしてもダメなのですか? あなた、今だってびっくりするくらい欲情しているでしょう?」
「ベータのお前には一生分からないほどにな」
「よく我慢できますねえ。見ているこっちが気が狂いそうになります」
「ああ。今にもショックを起こしそうだ」

 そう言ったそばから、僕はショックになった。
 ロジェとエディは顔を真っ青にして応急処置をした。おかげで今回も、なんとか一命を取り留めた。

 ロジェはエディを帰したあとも、朝まで僕を看病した。

「あなたは私の気持ちをちっとも分かってくださいませんね」

 僕がショックになると、ロジェは決まって涙を流す。僕の手を握り、ぶるぶる震えて。

「あなたを失いたくないんです、私は」
「お前はなんて……タチの悪いヤツなんだ……」
「……」
「お前がお父様のように……僕のことをおもちゃだと思っていたらよかったのに……」

 そしたら、ひどいことをするロジェを嫌いになれたのに。
 こいつが僕のことを一番愛しているのが伝わってくるせいで、どうにも突き放すことができない。

「それにしても、だ……。ロジェ……。よくもエディに手を出してくれたな……」
「ふふ。ごめんなさい」
「全く反省の色が見えない……」
「言い訳を聞いてください。あのですね、あなたがエディに惹かれる前から私たちはそういう仲でして。あなたと良い感じになってきたタイミングで手放そうと思っていたのですが……。あんまりエディが可愛らしくて、手放すのが惜しくなってしまいまして……」
「おい……」
「うかつにも、ローラン様とエディの両方に惹かれている自分が――」
「もういい。それ以上聞きたくない」
「はい」

 僕はロディの腕を(できるだけ痛むように)つねり上げる。

「いてて」
「いいか。過去のことは不問にしてやる。だがな。今後絶対、エディには手を出すな」
「ええ……。エディに求められたときは……?」
「エディに……求められる……だとぉ……?」
「ふふ。今回のことで分かったでしょう? エディだって年頃の男の子なんです。あなたが潔癖なあまりに、エディはずっと欲情を持て余していまして。それで、その発散の先として毎晩私を――」
「それ以上聞きたくない!!」
「はい」

 僕はロジェの胸ぐらを掴み、ぎりぎりと歯ぎしりする。

「エディに求められてもダメだ。そのときは僕の部屋に行けと言え。分かったな?」
「かしこまりました」
「お前までついてくるなよ?」
「……」
「つ い て く る な よ ?」
「……はい」

 ロジェにエディを好き勝手されていたことも、エディが僕じゃなくロジェを求めていたことも、はらわたが煮えくりそうなほど腹が立つ。

「いえいえ。それはあなたのせいですよ。あなたがはじめに『寄るな』とか『触るな』とか言うから」
「わ、分かってる!」
「あなたが潔癖すぎて、エディはずいぶん無理をしていましたからねえ」
「それは……申し訳ないことをしたな……」
「でも、そうやってエディが一生懸命無理をしてきたから、あなたの心を掴めたのでしょうね」
「……そうかもしれないな」

 今まで散々無理をさせてきたんだ。
 これからは、ありのままのエディを受け入れてあげよう。

「で、どうでした? 昨晩のエディは」
「……」
「ああいうエディも、なかなかよかったでしょう?」
「どうしてお前が得意げなんだ! エディはお前のものじゃないんだぞ!」
「そうですね。それで? どうでしたか?」
「……正直に言えば、興奮した」
「そうですか。それはよかったです」
「まさか僕が……ラットにもなっていないときに……」
「抑えられないほど激しく抱きたいと思ったのですか? それは素晴らしいことです」

 ロジェは僕に顔を寄せ、囁いた。

「次はお邪魔しませんから」
「……」

 僕はこくりと頷いた。
 次、エディと二人きりになったとき……僕から誘おう。
 それで、エディを心ゆくまで満足させてあげたい。

「ロジェ」
「はい」
「今日は……その……。エディ以外、誰も部屋に入れるな」

 ロジェは目を瞬いてから、何度も頷いた。

「はい! はい、もちろんです!!」
「……」
「ドキドキしますね、ローラン様!」
「……そ、そうだな。ちゃんとできるかな……」
「できますよ!! 下手っぴでも愛があれば大丈夫です!」
「そ、そうかな。……今からそわそわしてきた」
「まー! なんと愛らしい!」

 ――しかし、エディはその日、姿を現さなかった。
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