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執事にオメガだとバレました
第十五話
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約一週間ぶりに、僕はローラン様の部屋にモーニングティーを持って行った。
僕の顔を見たローラン様の第一声は……
「遅い!!」
だった。なんだか怒っている。
予定の時間ぴったりに来たはずなんだけどな……。
「も、申し訳ありませんっ」
「一日も余計に休むとはどういうことだ!」
「あっ……! そうですねっ、ほんとにごめんなさい!」
「全く。退屈でしかたなかったじゃないか」
「ふふっ」
「……おい。今笑ったな?」
「はっ……! い、いえ!」
だって、こんなに寂しがってもらえるなんて、仕えている身として一番嬉しいことじゃないか。思わず笑みもこぼれちゃうよ。
その日、ローラン様は僕の名前をよく呼んだ。
「エディ」
「はいっ」
「水をくれ」
「はい、どうぞ」
「エディ」
「はいっ」
「そこの本を取ってくれ」
「はい、かしこまりました」
「エディ」
それに、今日のローラン様はおしゃべりだった。
話してばかりで、食事にほとんど手を付けなかったほど。
「ローラン様、お食事を」
「ん。そうだな。あ、そういえば、昨日――」
「……」
こんなにおしゃべりが止まらないなんて。ローラン様って寡黙な人だと思っていた。
「おい、聞いているのかエディ」
「はい。聞いていますよ」
「……なんだ、そんなにニコニコして」
「ローラン様が楽しそうにお話されているのが、嬉しくて」
「なっ。べ、別に楽しそうになんて話していない。き、近況報告だっ」
「はい。もっとお聞かせください」
寝る前には、何度も同じことを聞かれた。
「明日は休みじゃないだろうな?」
「はい。明日からむこう二十日間はお休みしません」
「そうか。昨日のように急な体調不良で休むんじゃないぞ」
「はい。それでは、おやすみなさいローラン様」
「明日は休むなよ!」
「休みませんからぁ!」
仕事を終えた僕は、新たな自室――執事との二人部屋――に戻った。
そこには、すでに寝衣に着替えた執事……ロジェが待っていた。
「本日もおつかれさまでした、エディ」
「おつかれさまです。……今日のローラン様はとってもおしゃべりでした」
「よほどエディと会えて嬉しかったんでしょうね」
「どうしてあんなに懐いてくれているのかが分かりませんが……」
「あなたの人柄が好ましいようですよ。それに、あなたはローラン様で興奮しませんし。安心できるのでしょう」
約一時間後、僕は寝る支度を終え、ベッドに潜り込んだ。
すると、ロジェがわざわざ僕のベッドに入ってきた。
「ロジェさん? あなたのベッドはあちらですよ。こっちじゃありません」
「ええ。情事を終えたら自分のベッドに戻ります」
「……え。今日もするんですか……?」
「はい。したいです」
執事はそう言って、硬くなった股間を僕に押し付けた。
「ひぇっ……」
「すごいでしょう。何もしていないのに、同じベッドで寝るだけでこうなってしまいました」
「ふぁー……」
「契約通り、優しくさせていただきますので」
そう。これは契約だ。
ここで働かせてもらうため、家族の生活の安全のために、執事と交わした契約。
発情期以外のときでも、僕は執事のお相手をしなければいけない。
……逆に、僕がもしそういうことがしたくなったら、執事は応えなければいけない。
この契約は、僕が男オメガであることを隠しつつ快適な生活をおくるためのものであり、男オメガの僕(か絶世の美少年ローラン様)でしか興奮できなくなった不能ぎみのロジェが性欲を発散するためのものであり、ローラン様が数少ない信頼している人――つまり僕とロジェ――に欲情の矛先を向けられないためのものである。
当然、この契約も、僕とロジェが性的な関係を持っているということも、ローラン様には絶対に知られてはいけない。僕たちがこういうことをしていると知られたら……考えただけでも恐ろしい。少なくとも僕は解雇されるだろう。
「エディ。情事中に考え事をするのはおやめなさい」
「あ……」
ロジェが僕の頬にキスをした。頬の次は首、首の次は肩。肩の次は胸と、どんどんロジェの唇が下りていく。
「んん……」
「体が強張っていますね。緊張しているのですか?」
「ちょっと……こわくて……」
「しばらくすれば、怖さなんてなくなります」
ロジェが僕の下着を下ろした。まだしなしなのペニスを優しくつまみ、舌でつーっと撫でる。
「ん、あっ……!? えっ。ロ、ロジェさん……? なにして……」
「あなたのペニスを舐めているのですが」
「ど、どうして……!?」
「気持ちいいかと思いまして」
「!? !?」
性交っておしりにペニスを挿入したらいいだけじゃないの!? どうしてペニスを舐める必要が!? 手でよくない!?
「あのっ、あのぉっ……! 手じゃだめなんですか……!? 汚いですよ、そこ……!!」
「私は咥えるのが好きなのです」
「んんん……っ!!」
ロジェが僕のペニスを根元まで咥え込んだ。
ロジェの口の中、温かくて、ぬるぬるしていて……手で触られるよりも気持ちいい。
「んっ……はっ……、うぅ……っ」
「ふふ。気に入っていただけたようでなによりです」
「んん……っ、きもち……」
……と言いかけて、僕は慌てて口を噤んだ。危ない。今、僕はとってもはしたないことを言いそうになってしまった。恥ずかしい。
ロジェはクスッと笑い、ペニスの先をちろちろと舐める。
「気持ちよかったら気持ちいいと、口に出していいのですよ」
「~~……、さっきのは、忘れてくださいぃ……」
「忘れませんし、もっと言ってほしいです」
「……いやです……っ」
「ふふ」
執拗にペニスを舐められ続けた僕は、我慢できなくなってロジェの口内で射精してしまった。
「あわわわ……っ。ごめんなさいロジェさんっ、う、うわぁぁ、どうしよう……っ、早く吐き出して――」
僕が慌てふためいている間に、ロジェはごくんとそれを呑み込んだ。
「……え?」
「面白い。男オメガの精液は、とても甘いのですね」
「……え!? の、呑んだ……!! こ、この人、精液呑んだ!!」
「はい。好きなんです。精液を呑むの。いやあ、いつもローラン様にも叱られるんですが、やめられなくて――」
「どうしよう!! この人ほんとうに気持ち悪い!!」
「あはは。エディもローラン様と同じことを言うんですねえ」
こんなに気持ち悪い人なのに、セックスはとても優しい。
やっぱり、僕のオメガの体は性交するために作られているのだろう。はじめは怖いとか気持ち悪いとか思っていたのに、ロジェと繋がった途端そんなことはどうでもよくなった。
気持ちよくて、いっぱい変な声が出たし、さっきまで恥ずかしいと思っていた言葉も平気で言ってしまった。
中に精液を注がれると、達成感や多幸感で頭がいっぱいになった。
満ち足りた気持ちとほどよい疲れで、僕はそのままぐっすり眠ってしまった。
……結局、ロジェが自分のベッドに戻ることはなく、朝まで僕の隣で寝ていた。
僕の顔を見たローラン様の第一声は……
「遅い!!」
だった。なんだか怒っている。
予定の時間ぴったりに来たはずなんだけどな……。
「も、申し訳ありませんっ」
「一日も余計に休むとはどういうことだ!」
「あっ……! そうですねっ、ほんとにごめんなさい!」
「全く。退屈でしかたなかったじゃないか」
「ふふっ」
「……おい。今笑ったな?」
「はっ……! い、いえ!」
だって、こんなに寂しがってもらえるなんて、仕えている身として一番嬉しいことじゃないか。思わず笑みもこぼれちゃうよ。
その日、ローラン様は僕の名前をよく呼んだ。
「エディ」
「はいっ」
「水をくれ」
「はい、どうぞ」
「エディ」
「はいっ」
「そこの本を取ってくれ」
「はい、かしこまりました」
「エディ」
それに、今日のローラン様はおしゃべりだった。
話してばかりで、食事にほとんど手を付けなかったほど。
「ローラン様、お食事を」
「ん。そうだな。あ、そういえば、昨日――」
「……」
こんなにおしゃべりが止まらないなんて。ローラン様って寡黙な人だと思っていた。
「おい、聞いているのかエディ」
「はい。聞いていますよ」
「……なんだ、そんなにニコニコして」
「ローラン様が楽しそうにお話されているのが、嬉しくて」
「なっ。べ、別に楽しそうになんて話していない。き、近況報告だっ」
「はい。もっとお聞かせください」
寝る前には、何度も同じことを聞かれた。
「明日は休みじゃないだろうな?」
「はい。明日からむこう二十日間はお休みしません」
「そうか。昨日のように急な体調不良で休むんじゃないぞ」
「はい。それでは、おやすみなさいローラン様」
「明日は休むなよ!」
「休みませんからぁ!」
仕事を終えた僕は、新たな自室――執事との二人部屋――に戻った。
そこには、すでに寝衣に着替えた執事……ロジェが待っていた。
「本日もおつかれさまでした、エディ」
「おつかれさまです。……今日のローラン様はとってもおしゃべりでした」
「よほどエディと会えて嬉しかったんでしょうね」
「どうしてあんなに懐いてくれているのかが分かりませんが……」
「あなたの人柄が好ましいようですよ。それに、あなたはローラン様で興奮しませんし。安心できるのでしょう」
約一時間後、僕は寝る支度を終え、ベッドに潜り込んだ。
すると、ロジェがわざわざ僕のベッドに入ってきた。
「ロジェさん? あなたのベッドはあちらですよ。こっちじゃありません」
「ええ。情事を終えたら自分のベッドに戻ります」
「……え。今日もするんですか……?」
「はい。したいです」
執事はそう言って、硬くなった股間を僕に押し付けた。
「ひぇっ……」
「すごいでしょう。何もしていないのに、同じベッドで寝るだけでこうなってしまいました」
「ふぁー……」
「契約通り、優しくさせていただきますので」
そう。これは契約だ。
ここで働かせてもらうため、家族の生活の安全のために、執事と交わした契約。
発情期以外のときでも、僕は執事のお相手をしなければいけない。
……逆に、僕がもしそういうことがしたくなったら、執事は応えなければいけない。
この契約は、僕が男オメガであることを隠しつつ快適な生活をおくるためのものであり、男オメガの僕(か絶世の美少年ローラン様)でしか興奮できなくなった不能ぎみのロジェが性欲を発散するためのものであり、ローラン様が数少ない信頼している人――つまり僕とロジェ――に欲情の矛先を向けられないためのものである。
当然、この契約も、僕とロジェが性的な関係を持っているということも、ローラン様には絶対に知られてはいけない。僕たちがこういうことをしていると知られたら……考えただけでも恐ろしい。少なくとも僕は解雇されるだろう。
「エディ。情事中に考え事をするのはおやめなさい」
「あ……」
ロジェが僕の頬にキスをした。頬の次は首、首の次は肩。肩の次は胸と、どんどんロジェの唇が下りていく。
「んん……」
「体が強張っていますね。緊張しているのですか?」
「ちょっと……こわくて……」
「しばらくすれば、怖さなんてなくなります」
ロジェが僕の下着を下ろした。まだしなしなのペニスを優しくつまみ、舌でつーっと撫でる。
「ん、あっ……!? えっ。ロ、ロジェさん……? なにして……」
「あなたのペニスを舐めているのですが」
「ど、どうして……!?」
「気持ちいいかと思いまして」
「!? !?」
性交っておしりにペニスを挿入したらいいだけじゃないの!? どうしてペニスを舐める必要が!? 手でよくない!?
「あのっ、あのぉっ……! 手じゃだめなんですか……!? 汚いですよ、そこ……!!」
「私は咥えるのが好きなのです」
「んんん……っ!!」
ロジェが僕のペニスを根元まで咥え込んだ。
ロジェの口の中、温かくて、ぬるぬるしていて……手で触られるよりも気持ちいい。
「んっ……はっ……、うぅ……っ」
「ふふ。気に入っていただけたようでなによりです」
「んん……っ、きもち……」
……と言いかけて、僕は慌てて口を噤んだ。危ない。今、僕はとってもはしたないことを言いそうになってしまった。恥ずかしい。
ロジェはクスッと笑い、ペニスの先をちろちろと舐める。
「気持ちよかったら気持ちいいと、口に出していいのですよ」
「~~……、さっきのは、忘れてくださいぃ……」
「忘れませんし、もっと言ってほしいです」
「……いやです……っ」
「ふふ」
執拗にペニスを舐められ続けた僕は、我慢できなくなってロジェの口内で射精してしまった。
「あわわわ……っ。ごめんなさいロジェさんっ、う、うわぁぁ、どうしよう……っ、早く吐き出して――」
僕が慌てふためいている間に、ロジェはごくんとそれを呑み込んだ。
「……え?」
「面白い。男オメガの精液は、とても甘いのですね」
「……え!? の、呑んだ……!! こ、この人、精液呑んだ!!」
「はい。好きなんです。精液を呑むの。いやあ、いつもローラン様にも叱られるんですが、やめられなくて――」
「どうしよう!! この人ほんとうに気持ち悪い!!」
「あはは。エディもローラン様と同じことを言うんですねえ」
こんなに気持ち悪い人なのに、セックスはとても優しい。
やっぱり、僕のオメガの体は性交するために作られているのだろう。はじめは怖いとか気持ち悪いとか思っていたのに、ロジェと繋がった途端そんなことはどうでもよくなった。
気持ちよくて、いっぱい変な声が出たし、さっきまで恥ずかしいと思っていた言葉も平気で言ってしまった。
中に精液を注がれると、達成感や多幸感で頭がいっぱいになった。
満ち足りた気持ちとほどよい疲れで、僕はそのままぐっすり眠ってしまった。
……結局、ロジェが自分のベッドに戻ることはなく、朝まで僕の隣で寝ていた。
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