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セドラン侯爵家のボーイになりました

第十三話

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「んっ……はっ……、くそぉ……、なんで……っ」

 どうして。
 五日経っても、発情が治まらない。

 どうしよう。今日からお仕事をしないといけないのに、こんな状態では部屋から出られない。

「どうしよう、どうしよう、どうしよう……」

 時計を見る。もう仕事の時間は始まっている。

「仕事……出なきゃいけないのに……」

 フェロモンを抑える薬を呑んでみたけれど、案の定効果はない。

「早く治まって……、お願いだからぁ……っ!」

 そのとき、ノックの音がした。

「エディ。起きてください。今日からまた仕事です」

 執事だ。
 僕の顔からサーッと血の気が引く。

「エディ? 寝坊ですか? 全く。しようのない子ですね」

 ドアの向こうで物音がする。次の瞬間、鍵穴がぐるりと回った。

「やめっ……」
「エディ。起きなさい。今日は出勤日で――」

 部屋に入った執事は、ベッドで苦しんでいる僕の姿を見て立ち尽くした。

「エディ……?」
「あ……あ……」

 僕は咄嗟に布団で体を隠し、ベッドの隅に逃げた。
 そんな僕に、執事がじりじりと近寄る。

「エディ……その様子……まさか……」
「ひっ……」
「嘘でしょう。あなた……あなたは……」

 そのときの執事も、顔面蒼白だった。

「オメガ……だったのですか……?」

 バレた。バレてしまった。解雇だ。
 まだお給金をもらっていない。借金が返せない。
 家族が……僕のかわいい弟妹たちが、売り飛ばされる。

 そんなのいやだ……!

「お願いします……! どうか……どうか解雇だけは……!!」
「……」
「僕……僕っ、なんでもしますから……っ! なんでも……っ!!」
「……」
「ぼ、僕っ、男のオメガなんです……っ、珍しいでしょう……っ、な、何かお役に立てるんじゃないでしょうか……っ、だからっ、だからどうか、解雇だけは――」

 勢いよく肩を掴まれた。
 執事は冷や汗を流し、がたがた震えている。

「このことは、誰にも言ってはいけません……!」
「えっ……」
「ローラン様に知られたら、どう思われるか……」
「……」
「それにあなただって……男オメガだと知られたら……それこそ……」

 執事は身震いして、独り言のように呟いた。

「侯爵に知られたら……あなた、死ぬまでおもちゃにされますよ……」
「ひっ……」
「だから……いいですね……。決して、このことは誰にも言ってはいけません……」

 僕はコクコク頷き、おそるおそる執事を見た。

「あ、あの……解雇には……」
「しません。ローラン様がはじめて心を許した人なのですから……。しませんが……」

 執事の言葉を最後まで聞く前に、僕はワッと泣き出してしまった。

「ありがとうございます……っ、嘘ついててごめんなさい……っ、ごめんなさい……っ」
「その話はあとでじっくり聞かせてもらいます。ただ……」
「……?」
「その発情はなんとかしてもらわないと……」
「本当は昨日で終わるはずだったんです……。でも、おさまらなくて……。ごめんなさい……」
「……」

 逡巡ののち、執事が口を開く。

「あなたは、発情を治めたいですか?」
「はい……そりゃ、治まるなら……」
「……あなたがよしとするならば、私が治めます」
「え……」
「よろしいですか?」

 それってつまり、執事が僕を……
 そう考えただけで、一段と発情が強くなってしまった。

「うぅぅ……っ」
「エディ、どうしますか」
「……」

 僕は小刻みに震えた指で、執事の手を握った。

「……執事、さん……」
「はい」
「ぼ、僕、こういうの、はじめて……なんです……」
「……」
「だから、怖いです……。でも……」

 そして、涙でうるんだ目で執事を見つめる。

「したくてしょうがないんです……ごめんなさい……た、助けて……ください……」
「……分かりました」

 執事は部屋に鍵をかけてから、ベッドに上がった。ジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイをしゅるりと緩める。

「エディ。できるだけ優しくしますから……。辛かったら言ってください」
「……はい……」
「体を見せて」
「……」

 布団から出た僕を、執事はそっとベッドに横たえた。

「足を開いてください」
「~~……」

 モーリス以外の人にこんなところを見られるのははじめてだ。恥ずかしい。

「あっ……!」

 おしりに指が添えられる。その指は、ゆっくりと中に入ってきた。

「あぁぁぁぁ……っ」
「本当に……濡れているんですね。男オメガのここは……」
「んんっ……ん、あぁっ……」

 指でほぐされるだけで、僕は射精してしまった。
 それを見て、執事がクスッと笑う。

「『汚れと欲情とは無縁のところ』、か……」
「……?」
「見当違いもはなはだしいですね」
「あぁぁっ!?」

 おしりの中を指で押し上げられた瞬間、経験したことのない快感が僕を襲った。
 頭の中がパチパチして、体の中が痙攣する。

「な、なに、今の……」
「気持ちいいところです」

 そう言いながら、執事がズボンを少し下ろした。
 執事のペニスが見え、僕は怯えた。僕に付いているものと同じ臓器とは思えないほど、大きくてムキムキしている。

「ひっ……?」
「そんな恐怖に満ちた声を出さないでください」
「そ、そんな大きいの……」
「入りますよ」
「ひぃぃ……」

 執事のペニスがおしりに当たる。

「うぐっ……」

 そして、ゆっくりと押し込まれる。

「う……うぐ……うぁぁぁ……」
「本当に初めてなんですね。よくもまあ今まで貞操を守ってきたものです」
「うぅぅぅ……っ」
「痛いですか?」
「痛い……痛いけど……」

 ……不思議なことに、気持ちいい。
 ずっと足りなかった体のパーツがやっと手に入ったような、そんな感覚がした。

「……動きます」
「あっ!? あっ、あぁっ、あぁぁ……っ!! んっ、んんっ……!!」

 執事が動くたびに、僕の声から変な声が出る。
 はじめてのはずなのに、気持ちよくてしょうがない。
 ずっと求めていた快感はこれだったんだと思うと、なんだかちょっと涙が出てきた。

 執事も、いつもと表情が違う。何かに耐えているような顔だ。苦しそうにも、気持ちよさそうにも見える。

「んっ……、エディ……っ、出します……っ!」
「あっ……あぁぁぁ……!?」

 体の中に熱いものが入ってきた。おしりがキューッと締まり、一滴残らずそれを呑み込もうとしている。
 全身が痙攣する。ペニスからは精液が噴き出した。

「あ……あぁ……」
「……終わりました。これで、今日中には治まるでしょう」
「あ……ありがとう……ございます……」
「今日は休暇でいいです。ローラン様にも上手いこと伝えておきますから」
「す、すみません……」

 執事はそそくさとベッドから出て、身だしなみを整えた。

「……ローラン様のお世話が終われば、また来ます。今後のことを話しましょう。それに……いろいろとあなたには聞きたいことがありますから」

 そう残して、執事は部屋を出て行った。
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