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セドラン侯爵家のボーイになりました
第十二話
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◆◆◆
(ローランside)
その日、モーニングティーを持ってきたのはロジェだった。
「あれ?」
「どうされましたか?」
「エディは?」
「おやおや」
ロジェが含み笑いをした。それに妙にイラッとした。
「どうして笑う?」
「失礼。エディは休暇中です。ふふ」
「また笑った」
「いえ、エディのことを気に入ったんだなと思いまして」
「そ、それがどうした」
「嬉しいのですよ、私は」
エディが信頼できる人だと、出会って一カ月足らずで判断するのは早計だろうか。
だが、彼は他の人と明らかに違う。それだけははっきり言える。
「私もそう思いますよ。エディはあなたのことを性的な目で見ていません。一切ね」
「僕もそう思う。なんなら僕のことを弟かなにかだと思っている節がある」
「ふふ。そうかもしれません」
ここのところずっとそばにいたエディが、急にいなくなると調子が狂う。
ついロジェに「エディ」と呼び掛けてしまって恥ずかしい思いをしたし、久しぶりに一人でとる食事がつまらないと感じた。
「……退屈だ」
夕方、ロジェがベッドを整えているときに、僕はボソッと呟いた。
するとまた、ロジェが含み笑いをした。
「残念なお知らせですが、エディは五日間お休みですよ」
「……長くないか?」
「その分、今まで休みなく働いていたでしょう?」
「そうだが……」
つまり、明日も明後日も一人で食事をしないといけないということか。
貧乏ゆすりをしていると、ロジェに窘められた。
「そんなに寂しいのであれば、顔を出させますか?」
「いや。いい。休暇中はゆっくりさせてやれ」
「はい。ふふ」
「また笑った」
「よほどエディのことが気に入ったんだなあと」
「朝と同じことを言っているぞ」
「ローラン様が誰かを気に入るなんて、十五年間で初めてでしたので」
「……」
エディのような人と、もっと早く出会っていたかった。
「……正直、あんな人間がいたのかと驚いている」
「どのような?」
「教養はないが、その分素直で、裏表がなくて……純粋だ」
「そうですね。その通りです」
「彼はきっと……貧しいながらもすくすくと育ってきたんだろうな」
「そうかもしれません」
「家族に愛され、小さな幸せを分かち合い……汚れと欲情とは無縁のところで生きてきたんだろう」
彼はベータだ。最も人間らしい二次性を持った、真っ当な人間だ。
アルファとオメガの醜い欲情の渦に呑み込まれたことのない、美しい人間だ。
だからあんなに澄んだ目をしているのだろう。
だから僕に、あんな目を向けられるのだろう。
「エディがいつまでもきれいな存在でいてくれることを願うよ」
エディと一緒にいると、僕まで澄んでいくような気持ちになるから。
◆◆◆
(エディside)
「んっ……んんっ……あっ……うぅぅ……っ」
僕に自室があてがわれていて助かった。
多めに薬を呑んでいたせいか、いつもより発情が重い。
いや、もしかしたらローラン様とずっと一緒にいたからかもしれない。アルファのフェロモンを吸いすぎたのかも。
おしりがじんじんする。愛液が絶え間なく溢れ出る。
指を差し込んでみたけれど、ちょっとしか入らなくてもどかしさが増すだけだった。
「うぅぅ……っ、んん……」
おしりを満たせない代わりに、必死になってペニスを触った。
いくら触ってもおさまらない。何度出しても足りない。
「はっ……はっ……」
快感を求めるあまり、脳裏に一瞬ローラン様の姿が浮かんだ。
「っ……!」
僕は慌ててそのイメージを振り払った。
僕はなんてことを。ローラン様でこういうことは絶対にしちゃいけない。
次に浮かんだのが、次男のモーリスだった。
弟に触れられる感触を思い出し、性欲の捌け口にする。
(弟で抜くなんて……最低……)
自分に嫌悪感を抱きつつも、妄想をやめられない。
(あと四日……四日の辛抱だから……)
自然に発情が治まるまで、こうして自室に引きこもっているしかない。
(ローランside)
その日、モーニングティーを持ってきたのはロジェだった。
「あれ?」
「どうされましたか?」
「エディは?」
「おやおや」
ロジェが含み笑いをした。それに妙にイラッとした。
「どうして笑う?」
「失礼。エディは休暇中です。ふふ」
「また笑った」
「いえ、エディのことを気に入ったんだなと思いまして」
「そ、それがどうした」
「嬉しいのですよ、私は」
エディが信頼できる人だと、出会って一カ月足らずで判断するのは早計だろうか。
だが、彼は他の人と明らかに違う。それだけははっきり言える。
「私もそう思いますよ。エディはあなたのことを性的な目で見ていません。一切ね」
「僕もそう思う。なんなら僕のことを弟かなにかだと思っている節がある」
「ふふ。そうかもしれません」
ここのところずっとそばにいたエディが、急にいなくなると調子が狂う。
ついロジェに「エディ」と呼び掛けてしまって恥ずかしい思いをしたし、久しぶりに一人でとる食事がつまらないと感じた。
「……退屈だ」
夕方、ロジェがベッドを整えているときに、僕はボソッと呟いた。
するとまた、ロジェが含み笑いをした。
「残念なお知らせですが、エディは五日間お休みですよ」
「……長くないか?」
「その分、今まで休みなく働いていたでしょう?」
「そうだが……」
つまり、明日も明後日も一人で食事をしないといけないということか。
貧乏ゆすりをしていると、ロジェに窘められた。
「そんなに寂しいのであれば、顔を出させますか?」
「いや。いい。休暇中はゆっくりさせてやれ」
「はい。ふふ」
「また笑った」
「よほどエディのことが気に入ったんだなあと」
「朝と同じことを言っているぞ」
「ローラン様が誰かを気に入るなんて、十五年間で初めてでしたので」
「……」
エディのような人と、もっと早く出会っていたかった。
「……正直、あんな人間がいたのかと驚いている」
「どのような?」
「教養はないが、その分素直で、裏表がなくて……純粋だ」
「そうですね。その通りです」
「彼はきっと……貧しいながらもすくすくと育ってきたんだろうな」
「そうかもしれません」
「家族に愛され、小さな幸せを分かち合い……汚れと欲情とは無縁のところで生きてきたんだろう」
彼はベータだ。最も人間らしい二次性を持った、真っ当な人間だ。
アルファとオメガの醜い欲情の渦に呑み込まれたことのない、美しい人間だ。
だからあんなに澄んだ目をしているのだろう。
だから僕に、あんな目を向けられるのだろう。
「エディがいつまでもきれいな存在でいてくれることを願うよ」
エディと一緒にいると、僕まで澄んでいくような気持ちになるから。
◆◆◆
(エディside)
「んっ……んんっ……あっ……うぅぅ……っ」
僕に自室があてがわれていて助かった。
多めに薬を呑んでいたせいか、いつもより発情が重い。
いや、もしかしたらローラン様とずっと一緒にいたからかもしれない。アルファのフェロモンを吸いすぎたのかも。
おしりがじんじんする。愛液が絶え間なく溢れ出る。
指を差し込んでみたけれど、ちょっとしか入らなくてもどかしさが増すだけだった。
「うぅぅ……っ、んん……」
おしりを満たせない代わりに、必死になってペニスを触った。
いくら触ってもおさまらない。何度出しても足りない。
「はっ……はっ……」
快感を求めるあまり、脳裏に一瞬ローラン様の姿が浮かんだ。
「っ……!」
僕は慌ててそのイメージを振り払った。
僕はなんてことを。ローラン様でこういうことは絶対にしちゃいけない。
次に浮かんだのが、次男のモーリスだった。
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(弟で抜くなんて……最低……)
自分に嫌悪感を抱きつつも、妄想をやめられない。
(あと四日……四日の辛抱だから……)
自然に発情が治まるまで、こうして自室に引きこもっているしかない。
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