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ナストとフラスト
7話【ナストとフラスト】
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「よし……消えたな」
「……フラスト様……」
僕が両腕を伸ばすと、フラスト様は顔をしかめた。何か葛藤しているようだった。しばらくイライラしていたが、乱暴に頭を掻き、舌打ちをしてから僕を抱きしめキスをした。
「……手放したくなくなるだろうが、愚か者め」
そう言って、僕の首筋を舌先でなぞった。
「あっ……」
「そんな声を出すな」
「だって、フラスト様が……」
「……だからお前を抱きたくなかった」
「そ、そんなこと言わないでください。悲しくなります。僕、そんなに良くなかったですか」
「察しが悪くてイライラする」
「……やっぱり僕のこと嫌いですよね?」
「ああ、嫌いだ。嫌いだよ。だからこれ以上嫌いにさせないでくれ。お前はヴァルアの恋人で、俺の家族なんだから」
少し前まで、フラスト様と話していたら胸がじくじくと膿んでいた。それなのに、今では彼の言葉を聞くたびに胸がとくとくする。嬉しい。嬉しい。
僕はおもむろにフラスト様の胸に両手を当て、押しのけた。
「? なんだ」
「……これ以上は、ダメです。なんだか、僕……」
それだけで、フラスト様は全てを理解してくれたようだった。
「……分かった。淫紋はもう消えている。これ以上はする必要のないことだ。いいか。これは淫紋を消すためだけの行為だ。ヴァルアにも包み隠さずに伝える。いいな?」
その問いかけが、僕に向けてなのかフラスト様自身に向けてなのかの判断が難しかった。おそらく両方だろうと思い、僕は返事をする。
「はい」
「よし。では行くぞ。服を着ろ」
改めてフラスト様は、別行動をしたことと、見つけるのが遅くなったことを謝った。
「別行動をとったのは……お前のそばにいたくなかったからだ。お前のことが疎ましかったからではない」
「そばにいたくないということは、疎ましかったということでは……?」
「察しが悪い。なぜお前は言葉の裏を読み取れんのだ」
「……?」
「見つけるのが遅くなったのは、俺も別の場所で地表に出ていたインキュバス・テールを発見したからだ。それの調査を済ませ、根元を辿っていくと、お前たちがいた」
「そうなんですね。……僕、結局迷惑ばかりかけて、なにもできませんでした」
「いいや。インキュバス・テールの根元を地表に引きずり出したのはお前の功績だ。代償は大きかったがな。ともあれ、よくやった」
謝られるよりも、褒めてもらえた方がずっと嬉しかった。
フラスト様と僕が戻った頃には、植物学者が調査を終え、護衛が退治を済ませていた。
「最低限の仕事はしたようだな。あとは戻ってヴァルトに知らせるだけだ」
「「ひぃぃ……」」
「お前たちと一緒に俺も叱られるハメになった。全く」
馬車の中では、変態二人が恐怖で縮み上がっており、フラスト様は悠々と読書をしていた。僕はフラスト様の腕にしがみいて、変態二人をビクビクと眺めていた。
フラスト様が本から目を離さずに言った。
「そんなに怖がらなくていい。あいつらも、俺の前で悪さはせんよ」
「で、でも。同じ空間にいるだけで気持ちが悪いです」
「そうか。お前たち、馬車の外に出ろ。掴まるところくらいあるだろう」
フラスト様は意外と僕を甘やかすつもりらしい。
城に戻った僕たちはヴァルア様の帰りを待った。緊急の知らせを受けたヴァルア様は、仕事をほっぽり出してすぐに戻って来た。
「ナストがひどい目に遭ったって本当か!? おい兄貴!! お前がついていながらなぜ!!」
「悪い。目を離していた」
「なぜ目を離す!? なぜ!!」
「その理由を俺に言わせるのか?」
「はぁ!?」
「お前も察しが悪い。だから嫌いなんだお前なんか」
「なんだよ!! 機嫌悪いな!!」
「あ、いろいろあってナストを抱いた」
「はぁぁぁ!?」
「ナストがインキュバス・テールに淫紋を付けられた。それにかこつけて植物学者と護衛がナストを犯した。その尻ぬぐいのために俺がナストを抱いた。以上」
「情報量が多すぎるッ!!」
まあとりあえず、とヴァルア様はニコニコした顔で植物学者と護衛に視線を送った。
「君たちちょっと、お話しようか」
「「ひぃぃぃ……っ」」
半ば引きずられて地下に連れていかれた植物学者と護衛のことは、どうなったか教えてくれなかった。ただ、あれから一度も僕は彼らの姿を見ていない。
事情が事情ということもあり、フラスト様はお咎めなしだった。むしろ淫紋を消したのだから感謝しろとフラスト様に言われ、ヴァルア様が唇を噛みながら頭を下げていた。
そして僕は、城に帰った次の日に寝室に呼ばれ、一日中ヴァルア様に抱かれた。
「フラストとの方が良かったなんて言わないよね?」
「あっ、あぁっ、ヴァルア様っ……激しすぎっ……あぁぁっ、あぁっ、あぁぁっ!!」
「ねえ、答えになってないよ。俺よりフラストの方が良かったなんて言わないよね?」
「言わないっ!! 言わないからぁっ!! もうちょっと優しくっ……!!」
「ナスト。フラストより俺とのセックスの方が好きだよね?」
「好きっ、好きだからぁぁっ!! 優しくしてよぉっ……!!」
「ナストは俺のことが好きだよね? フラストの方が好きになったなんて言わないよね?」
「言わないっ!! 言わないぃっ、あぁあっ、あっ、あぁぁぁっ!!」
植物型淫魔に淫紋を付けられたことよりも、植物学者と護衛に犯されたことよりも、フラスト様に抱かれたことの方が、ヴァルア様にとって気になることだったようだ。
「……フラスト様……」
僕が両腕を伸ばすと、フラスト様は顔をしかめた。何か葛藤しているようだった。しばらくイライラしていたが、乱暴に頭を掻き、舌打ちをしてから僕を抱きしめキスをした。
「……手放したくなくなるだろうが、愚か者め」
そう言って、僕の首筋を舌先でなぞった。
「あっ……」
「そんな声を出すな」
「だって、フラスト様が……」
「……だからお前を抱きたくなかった」
「そ、そんなこと言わないでください。悲しくなります。僕、そんなに良くなかったですか」
「察しが悪くてイライラする」
「……やっぱり僕のこと嫌いですよね?」
「ああ、嫌いだ。嫌いだよ。だからこれ以上嫌いにさせないでくれ。お前はヴァルアの恋人で、俺の家族なんだから」
少し前まで、フラスト様と話していたら胸がじくじくと膿んでいた。それなのに、今では彼の言葉を聞くたびに胸がとくとくする。嬉しい。嬉しい。
僕はおもむろにフラスト様の胸に両手を当て、押しのけた。
「? なんだ」
「……これ以上は、ダメです。なんだか、僕……」
それだけで、フラスト様は全てを理解してくれたようだった。
「……分かった。淫紋はもう消えている。これ以上はする必要のないことだ。いいか。これは淫紋を消すためだけの行為だ。ヴァルアにも包み隠さずに伝える。いいな?」
その問いかけが、僕に向けてなのかフラスト様自身に向けてなのかの判断が難しかった。おそらく両方だろうと思い、僕は返事をする。
「はい」
「よし。では行くぞ。服を着ろ」
改めてフラスト様は、別行動をしたことと、見つけるのが遅くなったことを謝った。
「別行動をとったのは……お前のそばにいたくなかったからだ。お前のことが疎ましかったからではない」
「そばにいたくないということは、疎ましかったということでは……?」
「察しが悪い。なぜお前は言葉の裏を読み取れんのだ」
「……?」
「見つけるのが遅くなったのは、俺も別の場所で地表に出ていたインキュバス・テールを発見したからだ。それの調査を済ませ、根元を辿っていくと、お前たちがいた」
「そうなんですね。……僕、結局迷惑ばかりかけて、なにもできませんでした」
「いいや。インキュバス・テールの根元を地表に引きずり出したのはお前の功績だ。代償は大きかったがな。ともあれ、よくやった」
謝られるよりも、褒めてもらえた方がずっと嬉しかった。
フラスト様と僕が戻った頃には、植物学者が調査を終え、護衛が退治を済ませていた。
「最低限の仕事はしたようだな。あとは戻ってヴァルトに知らせるだけだ」
「「ひぃぃ……」」
「お前たちと一緒に俺も叱られるハメになった。全く」
馬車の中では、変態二人が恐怖で縮み上がっており、フラスト様は悠々と読書をしていた。僕はフラスト様の腕にしがみいて、変態二人をビクビクと眺めていた。
フラスト様が本から目を離さずに言った。
「そんなに怖がらなくていい。あいつらも、俺の前で悪さはせんよ」
「で、でも。同じ空間にいるだけで気持ちが悪いです」
「そうか。お前たち、馬車の外に出ろ。掴まるところくらいあるだろう」
フラスト様は意外と僕を甘やかすつもりらしい。
城に戻った僕たちはヴァルア様の帰りを待った。緊急の知らせを受けたヴァルア様は、仕事をほっぽり出してすぐに戻って来た。
「ナストがひどい目に遭ったって本当か!? おい兄貴!! お前がついていながらなぜ!!」
「悪い。目を離していた」
「なぜ目を離す!? なぜ!!」
「その理由を俺に言わせるのか?」
「はぁ!?」
「お前も察しが悪い。だから嫌いなんだお前なんか」
「なんだよ!! 機嫌悪いな!!」
「あ、いろいろあってナストを抱いた」
「はぁぁぁ!?」
「ナストがインキュバス・テールに淫紋を付けられた。それにかこつけて植物学者と護衛がナストを犯した。その尻ぬぐいのために俺がナストを抱いた。以上」
「情報量が多すぎるッ!!」
まあとりあえず、とヴァルア様はニコニコした顔で植物学者と護衛に視線を送った。
「君たちちょっと、お話しようか」
「「ひぃぃぃ……っ」」
半ば引きずられて地下に連れていかれた植物学者と護衛のことは、どうなったか教えてくれなかった。ただ、あれから一度も僕は彼らの姿を見ていない。
事情が事情ということもあり、フラスト様はお咎めなしだった。むしろ淫紋を消したのだから感謝しろとフラスト様に言われ、ヴァルア様が唇を噛みながら頭を下げていた。
そして僕は、城に帰った次の日に寝室に呼ばれ、一日中ヴァルア様に抱かれた。
「フラストとの方が良かったなんて言わないよね?」
「あっ、あぁっ、ヴァルア様っ……激しすぎっ……あぁぁっ、あぁっ、あぁぁっ!!」
「ねえ、答えになってないよ。俺よりフラストの方が良かったなんて言わないよね?」
「言わないっ!! 言わないからぁっ!! もうちょっと優しくっ……!!」
「ナスト。フラストより俺とのセックスの方が好きだよね?」
「好きっ、好きだからぁぁっ!! 優しくしてよぉっ……!!」
「ナストは俺のことが好きだよね? フラストの方が好きになったなんて言わないよね?」
「言わないっ!! 言わないぃっ、あぁあっ、あっ、あぁぁぁっ!!」
植物型淫魔に淫紋を付けられたことよりも、植物学者と護衛に犯されたことよりも、フラスト様に抱かれたことの方が、ヴァルア様にとって気になることだったようだ。
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