15 / 15
レモネードと綿飴
しおりを挟む
目を覚ませば、目の前にイケメン。夜空で染めたような漆黒の髪に蜂蜜色の目。その目に写るのは……美少女。
って、私のことだ!
急に意識がはっきりして慌てて起きあがろうとすれば、頭が痛み力なく後ろへ倒れ込んでしまう。
落ちた背中に痛みはなく、あるのは柔らか過ぎるほどの枕。
うまく回らない頭で
「ここは………?」
と尋ねれば、いつのまにか自分の手を握っていたイケメンが、空いた手で頭を撫でてくる。
「ここは客室だよ。雪の代替の部屋。風呂場で倒れていたのをここまで運んできたんだ。」
そうだ、意識を失ったあの後、誰かが運んでくれたのか。
メイドに運ばれるにしては身長が高い雪の身体。
ここには、執事がいた気がするが歳をとっていてそこまでの力はないように思える。
「めいどさんがここまではこんできてくれたんですか?」
呂律が回らず、とろんとした目でそう問い掛ければ、胸を押さえ苦しむ様子のイケメン。
「だ、だいじょうぶですか?」
手をこちらに向け、大丈夫だ、という彼を見て安心した。
……にしても、この人はいったい誰だろう。
知り合いだとまずいので、誰なのか聞くに聞けない。
すると、心臓の発作?が収まった彼は真剣な目で見つめてくる。
「雪、どうして私に敬語を使うんだ。」
親しい仲なのだろうか。
仕方ない、聞くしかないか。
「ご、ごめんなさい。あたまにもやがかかっててあなたが誰だかよくわからないんです。」
「そ、そんなっ!メイドは覚えているのに私のことがわからなくなってしまうなんて。……………しばらく家を開けていたのがよくなかったようだ。今度の出張の話はあいつらに全部行かせるか。」
よくわからないが、私の発言のせいで罪なきものが犠牲となるのは心が痛い。
「だ、だめですよ?おしごとはちゃんとしないと、
めっ!ですよ?」
年甲斐もなく、 めっ!なんて言ってしまった自分を殴りたいが、彼が胸を押さえているところを見ると、また発作が起きたようで聞こえてなかったかもしれない。
「失礼、私は君の兄さんだよ。…それすらも忘れてしまったかい?」
寂しそうな彼の姿を見ると無性に抱きしめたくなった。どうして、同じ兄なのにうちとは大違いなんだろう。
兄、ということは御影颯汰のことだよね。
雪に教えてもらった「そう兄」という名で呼べば
なんだい?と顔を近づけてくる。
手の届く距離になって首に手を回し、グッと引き寄せる。
「忘れるわけないでしょ。僕のたった1人のお兄ちゃんなんだから。」
彼の喋りに似せたが、バレてないよね?
急に頬に冷たいものが一筋の道を辿るように落ちていく。
腕の力を緩めれば、彼の目からは決壊が壊れたように大粒の涙が溢れていた。
どうしようもできずオロオロしていると止まらない涙をハンカチで拭い頬にキスされた。
顔を薔薇色に染め、放心状態の自分を揶揄うように笑う彼に頬を膨らます。
やっぱり、どこの兄も一枚上<<うわ>>手<<て>>のようだ。
今ので完全に意識を取り戻した私は、起き上がり
彼の頬にキスで仕返しをしようとしたが、ちょうどその時彼が顔を少しずらし口端にしてしまった。
お互い固まる状況で、やってしまったという空気に耐えられず、布団に潜り込み狸寝入りをした。
また、揶揄うような笑いで隠れきれていなかった頭を撫で
「愛してるよ、雪」
そう言うと部屋を閉める音が聞こえた。
好きというのはルー兄にいつも言われてるが
"愛してる"
初めて言われた言葉に初めての気持ちが芽生える。
レモネードのような甘酸っぱさと綿飴のようなとろけるような甘さ。
この高鳴る胸をどう表現すればいいのだろうか。
って、私のことだ!
急に意識がはっきりして慌てて起きあがろうとすれば、頭が痛み力なく後ろへ倒れ込んでしまう。
落ちた背中に痛みはなく、あるのは柔らか過ぎるほどの枕。
うまく回らない頭で
「ここは………?」
と尋ねれば、いつのまにか自分の手を握っていたイケメンが、空いた手で頭を撫でてくる。
「ここは客室だよ。雪の代替の部屋。風呂場で倒れていたのをここまで運んできたんだ。」
そうだ、意識を失ったあの後、誰かが運んでくれたのか。
メイドに運ばれるにしては身長が高い雪の身体。
ここには、執事がいた気がするが歳をとっていてそこまでの力はないように思える。
「めいどさんがここまではこんできてくれたんですか?」
呂律が回らず、とろんとした目でそう問い掛ければ、胸を押さえ苦しむ様子のイケメン。
「だ、だいじょうぶですか?」
手をこちらに向け、大丈夫だ、という彼を見て安心した。
……にしても、この人はいったい誰だろう。
知り合いだとまずいので、誰なのか聞くに聞けない。
すると、心臓の発作?が収まった彼は真剣な目で見つめてくる。
「雪、どうして私に敬語を使うんだ。」
親しい仲なのだろうか。
仕方ない、聞くしかないか。
「ご、ごめんなさい。あたまにもやがかかっててあなたが誰だかよくわからないんです。」
「そ、そんなっ!メイドは覚えているのに私のことがわからなくなってしまうなんて。……………しばらく家を開けていたのがよくなかったようだ。今度の出張の話はあいつらに全部行かせるか。」
よくわからないが、私の発言のせいで罪なきものが犠牲となるのは心が痛い。
「だ、だめですよ?おしごとはちゃんとしないと、
めっ!ですよ?」
年甲斐もなく、 めっ!なんて言ってしまった自分を殴りたいが、彼が胸を押さえているところを見ると、また発作が起きたようで聞こえてなかったかもしれない。
「失礼、私は君の兄さんだよ。…それすらも忘れてしまったかい?」
寂しそうな彼の姿を見ると無性に抱きしめたくなった。どうして、同じ兄なのにうちとは大違いなんだろう。
兄、ということは御影颯汰のことだよね。
雪に教えてもらった「そう兄」という名で呼べば
なんだい?と顔を近づけてくる。
手の届く距離になって首に手を回し、グッと引き寄せる。
「忘れるわけないでしょ。僕のたった1人のお兄ちゃんなんだから。」
彼の喋りに似せたが、バレてないよね?
急に頬に冷たいものが一筋の道を辿るように落ちていく。
腕の力を緩めれば、彼の目からは決壊が壊れたように大粒の涙が溢れていた。
どうしようもできずオロオロしていると止まらない涙をハンカチで拭い頬にキスされた。
顔を薔薇色に染め、放心状態の自分を揶揄うように笑う彼に頬を膨らます。
やっぱり、どこの兄も一枚上<<うわ>>手<<て>>のようだ。
今ので完全に意識を取り戻した私は、起き上がり
彼の頬にキスで仕返しをしようとしたが、ちょうどその時彼が顔を少しずらし口端にしてしまった。
お互い固まる状況で、やってしまったという空気に耐えられず、布団に潜り込み狸寝入りをした。
また、揶揄うような笑いで隠れきれていなかった頭を撫で
「愛してるよ、雪」
そう言うと部屋を閉める音が聞こえた。
好きというのはルー兄にいつも言われてるが
"愛してる"
初めて言われた言葉に初めての気持ちが芽生える。
レモネードのような甘酸っぱさと綿飴のようなとろけるような甘さ。
この高鳴る胸をどう表現すればいいのだろうか。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
入学初日に告白してきた美少女には、『好き』がないらしい。~欠けた感情を追い求めて~
true177
恋愛
怠惰に流されて底辺校に入った龍太郎(りゅうたろう)は、差出人不明の手紙で屋上に呼び出される。
待っていたのは、見違えるような美少女。
『キミのことが好きです!』
これはもらった、と興奮するのもつかの間、彼女の様子が見るからにおかしいことに気付く。テンプレートしか話さないのだ。
荒ぶる少女と、それに付き合う龍太郎。一緒に行動する間にも、龍太郎の疑問は積み重なっていく。
そして、違和感が耐えきれなくなった日。彼女が告げた言葉。
「『好き』って、なんだろう……」
この言葉をきっかけにして、彼女の『好き』を探す旅が始まる……。
※完結まで毎日連載です。内部では既に完結しています。
※小説家になろう、ハーメルン、pixivにも同一作品を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる