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兄たちの邂逅
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窓から差し込む光は机で眠る上少女を守る様に照らしている。
その背後から近づく少年が1人。
「うわっ!」
突然、声がしたことに驚いた少女は安らかな眠り害され、じと目で少年を見る。
「クロ……」
そう呟いた少女は、日々の疲れと彼に対する呆れの混じったため息をこぼす。
「毎日頑張ってんなぁ。お前、そんなに勉強が好きだったなんて知らなかったな。」
「……別にいいでしょ。それよりなんか用?」
ぶっきらぼうにいう少女は、家族の様な存在のクロには敬語もお嬢様言葉も全てなしにありのままの自分でいられることに安心感を抱いていた。
「んー……なんだったっけな?お前を呼んでこいとかそんな感じだった気がする~」
へらへらと笑う彼にまたも呆れた声で言葉を返した。
「なんだったっけなって………。ちゃんとしなさいよ!そんなんじゃ、すぐ解雇されちゃうわよ…」
「お、寂しいんか?」
そう言ってにやにやと揶揄う様な笑みを向けてくる彼が憎たらしい。
「…そうよ、二度も離れたくはないの。」
そう言いながら彼の顔を見つめれば、勢いよく顔を逸らされてしまった。私の願いを拒むかのようなその態度にショックを受けてしまった。
「そんなに、私から離れたい……?」
少し泣きそうな顔で問えば、またまたすごい勢いで首を振られ、力強く抱きしめられた。
「そんなことない!俺は、俺は………」
言いかけて途中で俯いた彼を覗き込むように見る。
「俺は……何?」
顔を赤くした彼に……期待してもいいよね?
「おれ、は……お前を大事な家族だと思ってる」
かぞく、家族……まあ、そんなことだとは思ってたよ。少し残念感が否めないが、大切な存在に変わりはない。
「嬉しい、私にとってクロも大好きな家族だよ。」
抱きしめ返して彼に笑いかける私をどこか残念そうな顔で見てくるのは何故だ。お前も同じこと言ったじゃないか。
「………男として見てほしい。」
ぼそっと小声で呟いた言葉がうまく聞き取れない。
「え?何してほしいって?」
そう聞き返したが、なんでもないと言われればそれ以上聞くわけにはいかない。
そういえば、家族と言われたが、彼にとっての家族はどれくらいの位置なのだろう。すき?大好き?仲間?考えても埒があかない。
「私のこと、……好き?」
考えてたときのまま、首をこてんと傾けた状態で彼を見る。大分省略したので言いたいことが伝わったかわからないが、顔を赤くして頷いた彼の様子が可愛かったから良しとする。
突然、書庫の入り口の扉が開き、ハニルが中に入ってくる。書庫に入ってすぐ目の前の机で勉強していたので、彼には私たちが丸見えだ。入ってきたハニルが私たちに放つ黒いオーラに身がすくんでしまう。
「君たち、何しているの?」
闇夜に光る狼ような鋭い眼光に、いつもの面影はない。怯えながらも、説明しないと面倒だと思い、口を開く。
「か、彼はね?クロって言って私が孤児だった時の家族なの。ちょっとしたことがきっかけで離れちゃって。でも、ここで勉強してたら、うちに勤めてるって言う彼に再会して。……それで感極まって今に至る感じだよ。」
再会したのは数日前だが、説明が面倒なので最後は話を作ってしまった。感極まってというのは本当だから嘘は言ってない。
それにしても、シスコンのハニルの前でさっきからずっと抱きしめたまま離してくれないクロに「そろそろ離してくれないとハニル兄様に殺されるよ?」と小声で呟いたが、
「あんな怖いやつにお前を渡すか」と抱きしめる腕に余計に力が入り、逆効果だったと頭を抱える。
「ハニル兄様、どうしてここに?」
ハニルはクロと火花を散らしながら見つめあったまま、笑みだけは壊さない。
「今度入学する学校の手続きの話でメイドに呼んできてと頼んだんだけど、いくら待っても来ないから来たんだよ。……まさか、可愛い妹が野獣に襲われてるとは思わなかったけど。」
野獣?クロは目つきは悪いが、そんな酷いことされてない。……安眠を妨害はされたけど。でも。
「ハニル兄様!クロはそんなひどい人じゃありません!!私の大切な家族なんです。そんな言い方は、やめて……」
クロを悪く言われるのは非常に嫌な気分だ。自分でも驚くくらい感情的に叫んでしまった。弱々しくやめてと言う私の様子にハニルは慌てている。
「いや、そんなつもりはなかったんだ。ただ、知らない男が君を抱きしめていたら心配になるだろう?」
「だから、さっきから家族だって言ってるじゃないですか。何をそんなに心配することがあるんですか?」
突然口を挟んできたクロに驚きながらも、敬語話せるんだ……と、違う意味でも驚いた。
「血は繋がってない、だろう?」
そう返すハニルとクロの間にはまた亀裂が見える。
まあ、全く似ていない私たちは確かに血は繋がっていない……と思う。
「…おそらくは。俺らは孤児なんで親が分からないから何ともいえないのですが。」
私と同じ考えだったのだろう。少し歯切れの悪い言い方だ。
「君は…クロだっけ。それじゃあ、妹にクロを近づけるわけにはいかないなぁ。」
「それを決めるのは貴方ではないですよね?」
切り返されたクロの言葉に、ハニルは眉間に皺を寄せる。このめんどくさい攻防に私を巻き込まないでくれとクロを睨むが、抱きしめられた状態ではどうにも私の視線は伝わらないようだ。
「2人とも私にとっては同じ大切な家族です。血のつながりを言えば、ハニル兄様も私に近づいてはいけないことになりますよ。兄様、私は自分の身くらい自分で守れます。だから、そんなに心配しなくても大丈夫ですから。」
私の言葉についに黙り込んでしまったハニルは、諦めたようにため息をついた。
「…わかった。でも、何かあったらすぐに叫ぶか僕を呼んで。自分の身を守る方法を知ってても、力では勝てない相手は沢山いるんだ。絶対に、絶対に!!自分で何とかしようとしないで。」
彼の言うことはもっともだ。私は彼の目を見て頷く。
「でも、とりあえずクロは妹から離れてくれない?……目障りだ」
後半、ハニルの声が小さくて聞き取れなかった。
聞き返そうとしたがその前にクロが話し始めた。
「まあ、お兄様が心配性なだけでよかったですよ。私も兄として妹が大事なんでね。貴方から彼女を守ってたつもりなんですけど、目障りでしたかね?」
営業スマイルを浮かべるクロがまたもハニルと目で戦っている状況をめんどくさいと思うのは私だけだろうか。
「2人とも、もういいですよね?それに学校の手続きがあるなら早く済ませなければなりませんから、早く行きましょう、ハニル兄様。また、後でね、クロ。」
やっと離してくれたクロの元を離れ、ハニルの背中をぐいぐいと押しながら書庫から出ていく。ティノの待つ執務室へ向かう途中、わざわざ私の手を握り歩くハニルに恥ずかしいから離して下さいと頼んだが、珍しくヤダとダダをこねる子供のように言われてしまい、何も言えない。
不意に窓から見えた彼の庭でまた見たことのない花が咲いていて、何故か強く惹かれるものがあった。
その様子を見ていた少年は、手を握る少女の目が一瞬光ったのに気づいていなかった。
その背後から近づく少年が1人。
「うわっ!」
突然、声がしたことに驚いた少女は安らかな眠り害され、じと目で少年を見る。
「クロ……」
そう呟いた少女は、日々の疲れと彼に対する呆れの混じったため息をこぼす。
「毎日頑張ってんなぁ。お前、そんなに勉強が好きだったなんて知らなかったな。」
「……別にいいでしょ。それよりなんか用?」
ぶっきらぼうにいう少女は、家族の様な存在のクロには敬語もお嬢様言葉も全てなしにありのままの自分でいられることに安心感を抱いていた。
「んー……なんだったっけな?お前を呼んでこいとかそんな感じだった気がする~」
へらへらと笑う彼にまたも呆れた声で言葉を返した。
「なんだったっけなって………。ちゃんとしなさいよ!そんなんじゃ、すぐ解雇されちゃうわよ…」
「お、寂しいんか?」
そう言ってにやにやと揶揄う様な笑みを向けてくる彼が憎たらしい。
「…そうよ、二度も離れたくはないの。」
そう言いながら彼の顔を見つめれば、勢いよく顔を逸らされてしまった。私の願いを拒むかのようなその態度にショックを受けてしまった。
「そんなに、私から離れたい……?」
少し泣きそうな顔で問えば、またまたすごい勢いで首を振られ、力強く抱きしめられた。
「そんなことない!俺は、俺は………」
言いかけて途中で俯いた彼を覗き込むように見る。
「俺は……何?」
顔を赤くした彼に……期待してもいいよね?
「おれ、は……お前を大事な家族だと思ってる」
かぞく、家族……まあ、そんなことだとは思ってたよ。少し残念感が否めないが、大切な存在に変わりはない。
「嬉しい、私にとってクロも大好きな家族だよ。」
抱きしめ返して彼に笑いかける私をどこか残念そうな顔で見てくるのは何故だ。お前も同じこと言ったじゃないか。
「………男として見てほしい。」
ぼそっと小声で呟いた言葉がうまく聞き取れない。
「え?何してほしいって?」
そう聞き返したが、なんでもないと言われればそれ以上聞くわけにはいかない。
そういえば、家族と言われたが、彼にとっての家族はどれくらいの位置なのだろう。すき?大好き?仲間?考えても埒があかない。
「私のこと、……好き?」
考えてたときのまま、首をこてんと傾けた状態で彼を見る。大分省略したので言いたいことが伝わったかわからないが、顔を赤くして頷いた彼の様子が可愛かったから良しとする。
突然、書庫の入り口の扉が開き、ハニルが中に入ってくる。書庫に入ってすぐ目の前の机で勉強していたので、彼には私たちが丸見えだ。入ってきたハニルが私たちに放つ黒いオーラに身がすくんでしまう。
「君たち、何しているの?」
闇夜に光る狼ような鋭い眼光に、いつもの面影はない。怯えながらも、説明しないと面倒だと思い、口を開く。
「か、彼はね?クロって言って私が孤児だった時の家族なの。ちょっとしたことがきっかけで離れちゃって。でも、ここで勉強してたら、うちに勤めてるって言う彼に再会して。……それで感極まって今に至る感じだよ。」
再会したのは数日前だが、説明が面倒なので最後は話を作ってしまった。感極まってというのは本当だから嘘は言ってない。
それにしても、シスコンのハニルの前でさっきからずっと抱きしめたまま離してくれないクロに「そろそろ離してくれないとハニル兄様に殺されるよ?」と小声で呟いたが、
「あんな怖いやつにお前を渡すか」と抱きしめる腕に余計に力が入り、逆効果だったと頭を抱える。
「ハニル兄様、どうしてここに?」
ハニルはクロと火花を散らしながら見つめあったまま、笑みだけは壊さない。
「今度入学する学校の手続きの話でメイドに呼んできてと頼んだんだけど、いくら待っても来ないから来たんだよ。……まさか、可愛い妹が野獣に襲われてるとは思わなかったけど。」
野獣?クロは目つきは悪いが、そんな酷いことされてない。……安眠を妨害はされたけど。でも。
「ハニル兄様!クロはそんなひどい人じゃありません!!私の大切な家族なんです。そんな言い方は、やめて……」
クロを悪く言われるのは非常に嫌な気分だ。自分でも驚くくらい感情的に叫んでしまった。弱々しくやめてと言う私の様子にハニルは慌てている。
「いや、そんなつもりはなかったんだ。ただ、知らない男が君を抱きしめていたら心配になるだろう?」
「だから、さっきから家族だって言ってるじゃないですか。何をそんなに心配することがあるんですか?」
突然口を挟んできたクロに驚きながらも、敬語話せるんだ……と、違う意味でも驚いた。
「血は繋がってない、だろう?」
そう返すハニルとクロの間にはまた亀裂が見える。
まあ、全く似ていない私たちは確かに血は繋がっていない……と思う。
「…おそらくは。俺らは孤児なんで親が分からないから何ともいえないのですが。」
私と同じ考えだったのだろう。少し歯切れの悪い言い方だ。
「君は…クロだっけ。それじゃあ、妹にクロを近づけるわけにはいかないなぁ。」
「それを決めるのは貴方ではないですよね?」
切り返されたクロの言葉に、ハニルは眉間に皺を寄せる。このめんどくさい攻防に私を巻き込まないでくれとクロを睨むが、抱きしめられた状態ではどうにも私の視線は伝わらないようだ。
「2人とも私にとっては同じ大切な家族です。血のつながりを言えば、ハニル兄様も私に近づいてはいけないことになりますよ。兄様、私は自分の身くらい自分で守れます。だから、そんなに心配しなくても大丈夫ですから。」
私の言葉についに黙り込んでしまったハニルは、諦めたようにため息をついた。
「…わかった。でも、何かあったらすぐに叫ぶか僕を呼んで。自分の身を守る方法を知ってても、力では勝てない相手は沢山いるんだ。絶対に、絶対に!!自分で何とかしようとしないで。」
彼の言うことはもっともだ。私は彼の目を見て頷く。
「でも、とりあえずクロは妹から離れてくれない?……目障りだ」
後半、ハニルの声が小さくて聞き取れなかった。
聞き返そうとしたがその前にクロが話し始めた。
「まあ、お兄様が心配性なだけでよかったですよ。私も兄として妹が大事なんでね。貴方から彼女を守ってたつもりなんですけど、目障りでしたかね?」
営業スマイルを浮かべるクロがまたもハニルと目で戦っている状況をめんどくさいと思うのは私だけだろうか。
「2人とも、もういいですよね?それに学校の手続きがあるなら早く済ませなければなりませんから、早く行きましょう、ハニル兄様。また、後でね、クロ。」
やっと離してくれたクロの元を離れ、ハニルの背中をぐいぐいと押しながら書庫から出ていく。ティノの待つ執務室へ向かう途中、わざわざ私の手を握り歩くハニルに恥ずかしいから離して下さいと頼んだが、珍しくヤダとダダをこねる子供のように言われてしまい、何も言えない。
不意に窓から見えた彼の庭でまた見たことのない花が咲いていて、何故か強く惹かれるものがあった。
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