チート転生ものなんて嫌いな私がこの世界に産み落とされた理由はなんなんですか!?

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ここ、乙女ゲームの世界なんでしょうか………?

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 この世界はいわゆる西洋ファンタジーといったところだろうか。魔法、なんて訳の分からないものが存在するそうだ。しかし、原動力となる魔力というのは人それぞれで身分は関係ないらしい。
 

 魔力は、体の中に流れる血液に混じっているため自分ではわからない。魔力を持つ子は8歳になると体が光る。色は様々で、詳しくは解明されていない。




 謎が深い魔法という存在に惹かれつつも、他にもたくさん知らなければならないことがあると思い知らされる。




 色々なことを学ぶ中で、一つ気になることがあった。


 「デリック先生、先ほどから耳にする『クインティア』とはなんでしょうか。」


   その質問に家庭教師のデリック先生は少し決まりの悪い顔をした。


  「よくわからないんだよ。」


    多くの説明に使っている言葉なのにわからないとはどういうことだろう。頭にはてなを浮かべていると先生は躊躇うように口を開いた。


  「……クインティアはね、古代書物に書かれていたものなんだ。私たちの住むこの王国ができる遥かずっと前、この地は全くの更地で人が住めるなんてものじゃなかったらしい。その原因は大規模な火山噴火が起こったからみたいなんだ。で、更に隕石も落ちてきて、もう生き物達は生きることを諦めようとしていた。その時、隕石が衝突したかと思ったら衝突寸前で光だして消えてしまったという。そこに現れたのが、クインティアなんだ。」



   まるで恐竜絶滅の時みたいではないかと思いながら、前世の世界とは違う、クインティアという存在に何か引っ掛かりを感じていた。



 ー初めて聞いたはずなのにどこか聞き覚えのある言葉だ。




 少し頭を捻っていると、突然扉が叩かれる。
返事をし何かと尋ねれば、ティノからの呼び出しだと言われた。



 授業を一旦中断しデリック先生に一声かけ、ティノの待つ執務室へと急ぐ。


 
 扉の前に立てば中から話し声がする。独り言を言う人ではないため、誰かと一緒なのだろう。扉越しにティノに声をかければ、中へと通される。


 
 「おいで、紹介したい人がいるんだ。」


   手招きされてティノの元へ行けば、彼の横に立つ少年に既視感を覚える。


 
 「彼はハニル君だ。私の父の弟の次男で、今日から私の養子になる。」


    ティノに促されるまま、挨拶をすればハニルに改めて挨拶された。
 

 「君と同い年なんだ。敬語はいらないよ。これから家族としてよろしく。」


   蜂蜜色の髪にあった柔らかい笑みに思わず顔を赤らめると同時に、頭の中でパズルのピースがはまった。

 


 ここ、ゲームの世界じゃない?それも乙女ゲーム。




 普段ゲームをしない前世の私は、本ばかり読んでいたが、その中に紛れていた乙女ゲームの攻略本も知らないうちに読んでいた。初め、何だこれはと驚いたものだが、意外にも話がよく練られていて思わず最後まで読んでしまった。後にも先にも攻略本を読んだのはそれだけだが。



 読んだのは小さい頃だったので内容は大分薄れてしまっているが、今のハニルの表情と挨拶はスチルとして見開きで載っていたので印象的だった。

 


 NO.1   ハニル・ワスプラント

 辺境伯の養子。
 前辺境伯の弟の次男だが、優秀な長男と比べられ『出来損ない』として空気のように扱われていた。
    ティノから養子として欲しいと言われた時も一つ返事で決められた。
 
 この大きなチャンスを逃すかと彼は持てる力全てを使い、兄を越えようと努力する。魔力を持つ貴族の子供全員が通う名門校ラグワーン・ドルフで、再会した幼馴染を兄と取り合いになるが最後には負けてしまう。自分は何一つ兄に敵わないのかと自信を失いかけた時、ヒロインと出会う。


 


 
 長くなったが彼の説明はこんなとこだろう。




 ここで一つ疑問がある。



 ハニルには兄弟がいた設定はない。確かに血の繋がった兄はいる。しかし、辺境伯に養子入りした先で彼はティノの唯一の家族だったはずだ。私は存在していない。
 




 ………ここは本当に乙女ゲームの世界なのか?





 記憶違いの可能性もあるが、覚えている限りではやはり自分は存在していなかった。もしかしたら、似たような環境でここを乙女ゲームの世界だと思い込んでしまったのかもしれない。




 安易な考えを捨て、ハニルに「よろしくね」と精一杯の笑顔を作る。

 



 急に固まったハニルを見てティノが何やらブツブツ言っているが、面倒くさそうな予感しかしないため、デリック先生の元へ戻ろうと2人に声をかける。



 
 「それでは、失礼いたします。ティノ、ハニル。」





   一年間で叩き込んだ礼儀正しい挨拶をし、令嬢として恥じない振る舞いで部屋を出て行こうとすれば、思わずと言った感じでハニルに腕を掴まれる。



 何か?と首を傾げれば、顔を赤くし慌てた様子でなんでもないと答える彼を尻目に部屋を出た。



 
 女の子に対して顔を赤くするなんて彼は相当人馴れしていないか女の子に免疫がないのだなと、可愛らしさに思わずクスッと頬が緩んだ。


 
 そんな顔が変だったのか、その顔のまま部屋に戻ればデリック先生にふふ、と笑われ「何かいいことがあったんですか?」なんてからかってくるから、私はいつもの無表情に戻ってしまった。


 
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