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第3章 旅で得るもの、失うもの
11、晩餐会後のふたり(★)
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「二人きりで何を話してるかと思えば」
晩餐会がお開きになって二人で部屋に戻ってきても、カイリは口をへの字にしている。お互い既に楽な格好に着替えてソファに座っているのだが、妙に元気なカイリに比べて、百花はぐったりと背もたれに寄りかかっていた。
というのも、あの後こんな機会もうないかもしれないから! ともったいない精神が発動した百花が、皿にあれもこれも乗せて、その全てを食したからだ。今更のメインディッシュやガレットに手をつけた上でデザートもぽいぽい食べたので、もうお腹がはちきれんばかりだ。苦しい。
カイリに詰め寄られて、百花は閉じていた目をうっすらと開けた。青い目がどこかぼやけて見える。今頃になってお酒がまわっているらしい。視点が合わない。
「えー……? だからぁ、カイリがお母様が亡くなった後やけっぱちになって娼館に通ったって……」
「違う、別に通ってたわけじゃない!」
「まあまあ。わたし気にしないよ? それよりカイリに恋人いたかどうかの方が気になるよ」
「恋人なんていたことない」
「あ、そうなんだ。良かったぁー」
ふわりと微笑み、百花は再び目を閉じた。体を横向きにして丸くなると、眠気がやってくる。一瞬のうちに意識をもっていかれそうなところを、カイリが百花の身体にまたがるようにしてきた。体に加わる重みと、新緑のような爽やかなカイリの香りに、少しだけ意識が浮上する。
「でもモモカは違うでしょ」
経験あるって言ってたもんね。
そうカイリに言われ「そりゃ人並みにはあるよー。恋人もいたけど、カイリと会った時はいないって」と百花はのんびり返事をした。そんなの知ってるでしょ? と言ったのだが、カイリは不満そうに眉を寄せて、百花の耳に顔を近づけるなり舌で嬲りはじめた。
「んっ……ちょと……それより、ウェイン王子との……話……」
眠気と気持ち良さの狭間をたゆたいながら、百花はいやいやと身体を揺らした。今日は絶対相手は無理だ。酒がまわりすぎて頭がぼんやりしているし、何より食べ過ぎてお腹がぽっこりしている。
「そんなの今できる状態じゃないでしょ。明日でいいよ」
「えー! いや、でもそっちも気になるから……」
必死でまぶたをこじあけると、カイリは真面目な表情で百花を見つめ返した。
「端的に言うと、僕の予想通りだった。国王とアリス王女もニアだってことはびっくりしたけどね。モモカも知ってたんでしょ?」
「うん……こっちに来た日の夜に聞いたの。ごめんね、黙ってて」
「別にいいよ。言えないことなのは分かってる。あとはモモカがあと三十日足らずしかこっちにいられないことも聞いた」
百花はだんだんとはっきりしてきた意識の中で「あと一つ……」と呟いた。
「こっちにずっといられる方法は聞いた?」
見返すカイリの表情に、感情は浮かんでいない。それが百花を緊張させたが、返ってきたのは「多分モモカと同じ。大事なものを失う覚悟があるなら、できないこともないって」という言葉。
「ほんとだ、一緒。……人間を人間たらしめているもの、だよね」
「……そう」
全然検討がつかない。カイリはため息を吐き出して、ついでに百花の耳にその残りをそっと吹きかけた。真面目な話をしている間は落ち着いていたのに、再始動が早すぎる。
「とりあえず明日ちゃんと整理して、考えよう」
「……んっ……うんっ」
それに異論はない。大賛成だ。
でも、だからこそ耳を弄ぶのはもうやめてほしい。
「カイリ……わたし今日はもう眠いよ……」
「身体は起きてるよ」
前触れもなにもなくカイリが服の上から乳首をつまむ。あまりにその位置取りが的確で「ぎゃっ」と百花は小さく悲鳴をあげた。
「そ、それはお酒のせいで……」
「酔っ払うとこうなるの?」
「いや、わかんないけどさ……そうだってことにしとこうよ……」
とにかく無理。今日はもう寝たい。そう懇願すると「じゃあモモカは寝てていいよ」とこともなげにカイリは言った。そして百花の返答を待たずに首筋に吸い付いてくる。手は服の上から胸を揉みこむように動き始めた。
そんなことされたら眠れやしない! と思った百花だったが、ゆったりとした愛撫は穏やかな気持ち良さを運んで来て、また睡魔が戻って来た。
(ほんとに寝たら怒るかな……)
いや、さすがにもっと先に進んだら起きるか。
もうどうにでもなれと思って百花は力を抜いて、カイリに全てを預けた。百花の変化に気づいたのか、カイリが「ベッドにいくよ」と囁く。かろうじて百花はうなずいてのろのろと身体を起こした。
◆
柔らかいベッドの感触に息をこぼし、再び丸まって眠る体勢になった百花を、カイリは後ろから抱きしめた。背中に密着するカイリの体温が気持ち良くて「あったかいねぇ」と百花がこぼすと「本当に眠いんだね」とカイリが呟いた。
「さっきからそう言ってるじゃん……」
「ん、そうだった」
カイリは再び百花の胸に手を伸ばした。今日はしばらくは服の上からにするようで、先ほどと同じく緩やかにちょっかいをかけられる。そっと包み込まれて揉まれて、右の次は左、というようにカイリは何かを確かめるかのようにしばらくそれを繰り返した。
「あー……気持ち良い」
まるでマッサージを受けているようだ。どこかぼんやりした心地で百花はつぶやく。このまま続けてくれればいいのになぁと思う反面、物足りなさも感じるような……。
そんなことを思っていると、カイリが胸の頂に触れた。服の上からの柔らかい刺激でも十分官能的で「んっ……」と百花は声をこぼした。そっと擦られ、触れるか触れないかといった加減で触られ、自分の下腹部がじんとしてくる。
花開き始めた百花の情欲を更に刺激するかのように、カイリは百花の髪をかきわけてうなじに口付けた。ふわりとカイリの髪の毛の感触がして、チリっとした刺激を感じる。
(明日の洋服、大丈夫かな……)
そんなことを考える百花に『集中するように』とでも言いたいのか、カイリの手がようやく服の下にもぐってきた。直接乳首を擦られると、比べ物にならないくらいの電流が流れる。そんな百花の身体を仰向けにして、カイリが跨ってきた。
「……まだ眠い?」
洋服を脱がせる気はないようで、精一杯まで裾をまくりあげるとカイリが素肌に顔を寄せてくる。唇と舌による刺激を受けながら百花は「半々……かな……」と途切れながら答えた。実際は眠気はほぼひいていってるのだが、身体の方はまるで布団に縫い付けられているかのように重い。
「そっか。……下だけは脱がせるね」
そっと秘密を囁くようにカイリが言って、すぐに手が百花のズボンにかかった。しゅるりと脱がされて、カイリの顔がどんどんと下半身の方へ移動していく。
ちょっと待てと思ったのと、内腿に口づけられたのは同時だった。ぞわりと粟立つ肌の感覚に、一気に百花の脳に血が集まる。
「あっ……カイリそっちは……」
だめだと言う前に、カイリは百花の足を押し広げ、その奥の秘所に口をつけた。指で触る前になめられるのは初めてだ。びっくりしたのと、急な強い刺激に、百花の腰が跳ねた。カイリの舌が秘裂をなぞるように動き、そのたびに「あっ……ああっ……」と百花はワントーン高い声で喘いだ。
「な、なっ……なんでっ……」
「やっぱり起きてくれた方がいいかなと思って」
「そっ、そこでしゃべらないでっ!!」
息がふきかかって、それさえも強い刺激になる。
確かにカイリの目論見通り、百花はばっちり目覚めてしまった。もはや眠気なんて彼方へと飛んで消えた。
「起きたみたいだね」
しゃべるついでに息を吹きかけた後、カイリが舌をねじ込んでくる。浅くかきまわされて、妖しく響く粘着質な音に羞恥心まで刺激された。どんどん高みに押し上げられていき、百花は足をばたつかせて逃げようとした……つもりだったが、足をおさえこまれていて実際は大した動きはできなかった。
「も、もうっ……これ以上はっ……」
「いいよ」
足をおさえていた手の片方を外して、カイリは百花の花芽をそっと擦った。その淡い刺激が十分な引き金となって、百花の目の前で官能が弾ける。真っ白い閃光が見えた気がした。
一度はりつめた身体が弛緩してぐったりと沈む。カイリはようやく百花の秘所から顔を離すと、手の甲で軽く口元をぬぐった。ふーふーと荒く息をしている百花を慈しむように見つめ、自身のズボンを脱ぐ。
カイリのそれは既に屹立していて、静かにあてがわれて、百花はまた一度だけ身震いした。
「一気にしてもいい?」
ゆっくりが良いという言葉は言わせてもらえず、カイリは最初からある程度の勢いをつけて百花の中に押し入った。今日はことごとく百花を起こすことに焦点をあてているようだ。『寝てていい』なんて言ったくせに、行動が裏腹すぎる。
「あまのじゃくっ……」
百花は息もたえだえに文句を言いながらも、必死にカイリにしがみついた。
晩餐会がお開きになって二人で部屋に戻ってきても、カイリは口をへの字にしている。お互い既に楽な格好に着替えてソファに座っているのだが、妙に元気なカイリに比べて、百花はぐったりと背もたれに寄りかかっていた。
というのも、あの後こんな機会もうないかもしれないから! ともったいない精神が発動した百花が、皿にあれもこれも乗せて、その全てを食したからだ。今更のメインディッシュやガレットに手をつけた上でデザートもぽいぽい食べたので、もうお腹がはちきれんばかりだ。苦しい。
カイリに詰め寄られて、百花は閉じていた目をうっすらと開けた。青い目がどこかぼやけて見える。今頃になってお酒がまわっているらしい。視点が合わない。
「えー……? だからぁ、カイリがお母様が亡くなった後やけっぱちになって娼館に通ったって……」
「違う、別に通ってたわけじゃない!」
「まあまあ。わたし気にしないよ? それよりカイリに恋人いたかどうかの方が気になるよ」
「恋人なんていたことない」
「あ、そうなんだ。良かったぁー」
ふわりと微笑み、百花は再び目を閉じた。体を横向きにして丸くなると、眠気がやってくる。一瞬のうちに意識をもっていかれそうなところを、カイリが百花の身体にまたがるようにしてきた。体に加わる重みと、新緑のような爽やかなカイリの香りに、少しだけ意識が浮上する。
「でもモモカは違うでしょ」
経験あるって言ってたもんね。
そうカイリに言われ「そりゃ人並みにはあるよー。恋人もいたけど、カイリと会った時はいないって」と百花はのんびり返事をした。そんなの知ってるでしょ? と言ったのだが、カイリは不満そうに眉を寄せて、百花の耳に顔を近づけるなり舌で嬲りはじめた。
「んっ……ちょと……それより、ウェイン王子との……話……」
眠気と気持ち良さの狭間をたゆたいながら、百花はいやいやと身体を揺らした。今日は絶対相手は無理だ。酒がまわりすぎて頭がぼんやりしているし、何より食べ過ぎてお腹がぽっこりしている。
「そんなの今できる状態じゃないでしょ。明日でいいよ」
「えー! いや、でもそっちも気になるから……」
必死でまぶたをこじあけると、カイリは真面目な表情で百花を見つめ返した。
「端的に言うと、僕の予想通りだった。国王とアリス王女もニアだってことはびっくりしたけどね。モモカも知ってたんでしょ?」
「うん……こっちに来た日の夜に聞いたの。ごめんね、黙ってて」
「別にいいよ。言えないことなのは分かってる。あとはモモカがあと三十日足らずしかこっちにいられないことも聞いた」
百花はだんだんとはっきりしてきた意識の中で「あと一つ……」と呟いた。
「こっちにずっといられる方法は聞いた?」
見返すカイリの表情に、感情は浮かんでいない。それが百花を緊張させたが、返ってきたのは「多分モモカと同じ。大事なものを失う覚悟があるなら、できないこともないって」という言葉。
「ほんとだ、一緒。……人間を人間たらしめているもの、だよね」
「……そう」
全然検討がつかない。カイリはため息を吐き出して、ついでに百花の耳にその残りをそっと吹きかけた。真面目な話をしている間は落ち着いていたのに、再始動が早すぎる。
「とりあえず明日ちゃんと整理して、考えよう」
「……んっ……うんっ」
それに異論はない。大賛成だ。
でも、だからこそ耳を弄ぶのはもうやめてほしい。
「カイリ……わたし今日はもう眠いよ……」
「身体は起きてるよ」
前触れもなにもなくカイリが服の上から乳首をつまむ。あまりにその位置取りが的確で「ぎゃっ」と百花は小さく悲鳴をあげた。
「そ、それはお酒のせいで……」
「酔っ払うとこうなるの?」
「いや、わかんないけどさ……そうだってことにしとこうよ……」
とにかく無理。今日はもう寝たい。そう懇願すると「じゃあモモカは寝てていいよ」とこともなげにカイリは言った。そして百花の返答を待たずに首筋に吸い付いてくる。手は服の上から胸を揉みこむように動き始めた。
そんなことされたら眠れやしない! と思った百花だったが、ゆったりとした愛撫は穏やかな気持ち良さを運んで来て、また睡魔が戻って来た。
(ほんとに寝たら怒るかな……)
いや、さすがにもっと先に進んだら起きるか。
もうどうにでもなれと思って百花は力を抜いて、カイリに全てを預けた。百花の変化に気づいたのか、カイリが「ベッドにいくよ」と囁く。かろうじて百花はうなずいてのろのろと身体を起こした。
◆
柔らかいベッドの感触に息をこぼし、再び丸まって眠る体勢になった百花を、カイリは後ろから抱きしめた。背中に密着するカイリの体温が気持ち良くて「あったかいねぇ」と百花がこぼすと「本当に眠いんだね」とカイリが呟いた。
「さっきからそう言ってるじゃん……」
「ん、そうだった」
カイリは再び百花の胸に手を伸ばした。今日はしばらくは服の上からにするようで、先ほどと同じく緩やかにちょっかいをかけられる。そっと包み込まれて揉まれて、右の次は左、というようにカイリは何かを確かめるかのようにしばらくそれを繰り返した。
「あー……気持ち良い」
まるでマッサージを受けているようだ。どこかぼんやりした心地で百花はつぶやく。このまま続けてくれればいいのになぁと思う反面、物足りなさも感じるような……。
そんなことを思っていると、カイリが胸の頂に触れた。服の上からの柔らかい刺激でも十分官能的で「んっ……」と百花は声をこぼした。そっと擦られ、触れるか触れないかといった加減で触られ、自分の下腹部がじんとしてくる。
花開き始めた百花の情欲を更に刺激するかのように、カイリは百花の髪をかきわけてうなじに口付けた。ふわりとカイリの髪の毛の感触がして、チリっとした刺激を感じる。
(明日の洋服、大丈夫かな……)
そんなことを考える百花に『集中するように』とでも言いたいのか、カイリの手がようやく服の下にもぐってきた。直接乳首を擦られると、比べ物にならないくらいの電流が流れる。そんな百花の身体を仰向けにして、カイリが跨ってきた。
「……まだ眠い?」
洋服を脱がせる気はないようで、精一杯まで裾をまくりあげるとカイリが素肌に顔を寄せてくる。唇と舌による刺激を受けながら百花は「半々……かな……」と途切れながら答えた。実際は眠気はほぼひいていってるのだが、身体の方はまるで布団に縫い付けられているかのように重い。
「そっか。……下だけは脱がせるね」
そっと秘密を囁くようにカイリが言って、すぐに手が百花のズボンにかかった。しゅるりと脱がされて、カイリの顔がどんどんと下半身の方へ移動していく。
ちょっと待てと思ったのと、内腿に口づけられたのは同時だった。ぞわりと粟立つ肌の感覚に、一気に百花の脳に血が集まる。
「あっ……カイリそっちは……」
だめだと言う前に、カイリは百花の足を押し広げ、その奥の秘所に口をつけた。指で触る前になめられるのは初めてだ。びっくりしたのと、急な強い刺激に、百花の腰が跳ねた。カイリの舌が秘裂をなぞるように動き、そのたびに「あっ……ああっ……」と百花はワントーン高い声で喘いだ。
「な、なっ……なんでっ……」
「やっぱり起きてくれた方がいいかなと思って」
「そっ、そこでしゃべらないでっ!!」
息がふきかかって、それさえも強い刺激になる。
確かにカイリの目論見通り、百花はばっちり目覚めてしまった。もはや眠気なんて彼方へと飛んで消えた。
「起きたみたいだね」
しゃべるついでに息を吹きかけた後、カイリが舌をねじ込んでくる。浅くかきまわされて、妖しく響く粘着質な音に羞恥心まで刺激された。どんどん高みに押し上げられていき、百花は足をばたつかせて逃げようとした……つもりだったが、足をおさえこまれていて実際は大した動きはできなかった。
「も、もうっ……これ以上はっ……」
「いいよ」
足をおさえていた手の片方を外して、カイリは百花の花芽をそっと擦った。その淡い刺激が十分な引き金となって、百花の目の前で官能が弾ける。真っ白い閃光が見えた気がした。
一度はりつめた身体が弛緩してぐったりと沈む。カイリはようやく百花の秘所から顔を離すと、手の甲で軽く口元をぬぐった。ふーふーと荒く息をしている百花を慈しむように見つめ、自身のズボンを脱ぐ。
カイリのそれは既に屹立していて、静かにあてがわれて、百花はまた一度だけ身震いした。
「一気にしてもいい?」
ゆっくりが良いという言葉は言わせてもらえず、カイリは最初からある程度の勢いをつけて百花の中に押し入った。今日はことごとく百花を起こすことに焦点をあてているようだ。『寝てていい』なんて言ったくせに、行動が裏腹すぎる。
「あまのじゃくっ……」
百花は息もたえだえに文句を言いながらも、必死にカイリにしがみついた。
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