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愛が叶わないと出れない部屋 前編

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「な、何故、裸にならんといかんのだ…」

「しょうがないだろ…。それが規則っていうんだからよ…」

神殿に続く前の間で、2人でぶつくさ話している。2人とも良い大人なのに、意外と文句が多い。

「ほう、其方、腹のそれは…。魔王につけられたか?その紋を付けて、よくそこまで耐えておるな…。」

手で隠してはいたのだが、先生の怪しく光る淫紋は隠しきれずに、すぐにルランドに見つかってしまう。

「その呪いの所為で身を堕としていった者達を何人も見てきた。魔力の強いエルフ族でも耐えるのが難しい。益々興味深い。」

ルランドは、先生の前にしゃがみ込み、紋を観察し始めてしまった。先生の薄い下生えを手で押さえて模様を指でなぞった。そして、そのまま先生のペニスを摘み、しげしげと眺めている。

「あっ…はぁっ♡ル、ルランド殿っ、それはっ…や、止めて、頂きたいっ…」

「ん?ああ、失礼。ついな。知識欲が暴走してしまうのだ。その紋をつけていながら清い性器であるな。」

ルランドは全く悪びれないが、その横でアレンが物凄い目で睨んでいる。



「うむ。では、アレンとファガスとやら。其方達の検討を祈る。雄同士の番が実を持ち帰るのを楽しみにしておるぞ。」

ルランドが、祭壇の前に世界樹の根から作られた御神酒を並べ、2人はそれを飲み干し、神殿の中へと入っていった。



****


神殿の中には何も無かった。

真ん中に粗末なベッドが置いてあるだけだ。

素っ裸の2人は少し離れてそこに腰掛けた。

『…………。』

『…………。』

なかなかの時間、2人の無言の時間が過ぎた。もどかしい。

『……なんで離れて座るんだよ。』

『は、恥ずかしいではないか。』

『…明日の朝までに、愛を証明しなきゃなんねーんだ。もっとこっちに来い。』

『………そ、そうだが。』

先生がほんの少しアレンに近づいた。それをアレンが腰を抱き、ぐっと近くに引き寄せた。

「…ま、まだ、お前から返事を聞けてない。あの件は考えてくれたか?俺はお前と一緒になりたい。」

確かに旅の途中に何度もいい雰囲気になった2人だが、アレンの求める答えは貰えていないのだろう。

「…アレン、私もお前と気持ちは同じだが、どこかで、お前が子供を抱いて笑う未来を打ち消せない。その幸せを奪って良いものか、答えが…でない。」

「全く変なとこ頭が硬いなぁ…。そんな未来望んでねーって俺が言ってんだろ!ずべこべ言わずに嫁に来い!!」

アレンが先生の顎を引き寄せ、口づける。

急なことに始めは驚いて抵抗した先生も、アレンにベッドに押し倒されれば、観念したのか大人しくアレンの首に腕を回した。

それは、戦いでは誰よりも荒々しく勇敢な軍神とは思えぬ優しい口付けだった。行為中の欲望をぶつけるものとは違う、愛を確かめ合うキスだ。唇を喰み、舌を柔らかく絡め、アレンが長年の想いを乗せて先生を求める。

唇を繋ぐ銀糸がプツリと切れ、2人は見つめ合った。


「…し、素面でされるのは、始めてだな…」

「どうだ…?」

「…っ、わ、悪くない。」

「嫁に来たら、毎日してやる。」

「ーーーっ//」

先生はそこで顔を覆い隠してしまう。しかし、その覆ったままの顔が、こくこくと頷いたのだ。

「…ア、アレン、、私を、貰って欲しい…」

小さな声だがアレンにはちゃんと届いたようで、2人は暫し抱きしめ合ったのだ。




ガチャリ…


「…なんだ、其方たち、まだ番ってなかったのか?そんな事で良くこの試練に臨もうとおもったなぁ」

「き、貴様は…」

そこに現れたのはエルフの長ルランドであった。立ち会い人として別室に待機しているはずなのにいつの間にか居なくなったと思ったら、試練の間に来ていたとは…。

「さあ、お前達、前段が終わったらさっさと契れ。我は人間の雄同士の交尾に大変興味がある。子孫も残さぬ非生産的な交尾にどんな意味があるのか?我の興味が満たされたらお前達に実をやろう。」


世界樹の木から生まれるはずの子宝の実は、実はルランドが木に力を与える事で生まれるもので、それはエルフの中でも明かされていない秘密のようだった。


「儀式だとか記録だとか色々ほざいていたのに、結局はあんたの采配次第ってことかよ。」


「まぁ、そう言う事だ。歴代の挑戦で、興味を唆る者には実を授けてきたが、興味をそそらぬ者には力を使う価値もない。記憶を消して帰した。さて、お前達はどう転ぶか楽しみだ。」


ルランドは部屋の壁際に設置された椅子にドカリと座り、どうやら高見の見物を決め込むことにしたようだ。

「ちっ…、全くいい所を邪魔すんじゃねぇ💢」

「なんだ、ここまで来て、やらぬのか?実は手に入らんぞ」

「アレン、やらねば記憶を消されて帰されるだけだ。お前との記憶は消したくない。…やるぞ。」

「クソッ!!ルランド、お前はそっから動くなよ!ファガスに指一本でも触れたら、ぶち殺すからな!」

賽は投げられたのだった。
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