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32 まさかの後日談2

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「ああ、ゆうや君、昨日は災難だったね。」

「ああ、本当に災難でした。(あなたの不手際のせいで!!)まさか自分が、マサトの二の舞になってしまうだなんて、、。」


出迎えてくれたボスの言葉に、少々嫌味を含めてみたが、当人はまるで気付いていない。

「まあまあ、ゆうや君、ハムスターとハサミは使い様さ。ハムスターの変身が、便利な事もあるだろう。二週間で解毒剤ができるんだから、楽しんだもん勝ちさ。」

他人事だからって、呑気なものである。

ボスが、俺の代わりにハムスターになって、マサトに赤ちゃん言葉で話しかけられる恐怖を味わうがいいにとすら思う。

「で、ボス、突然俺達を呼び出して、今度はどんな依頼ですか?俺、まだ、ハムスター態になれてないんで、無茶させないでくださいよ。」

「ははっ!大丈夫さ。簡単な依頼だ。ハムスターのゆうや君なら造作もない。」

ボスが優雅に紅茶に口を付けながら、机の上に置かれた本を開く。

その表紙には動物図鑑と書かれていて、ボスが開いたのは齧歯類のページであった。

「うむ。ハムスターはネズミの仲間だね。食べ物も同じだ。きっと鳩のマサト君とインコのピーちゃんが話せたぐらいだから、ハムスターとネズミも話せるんじゃないかと思ってね。」

「はぁ、、、。そうかもしれませんね。それが何か?」

「うん。桃香さんの部屋にねずみが出たらしい。ゆうや君、そのネズミに話をつけて、出て行ってもらるよう説得してくれ。」

「へ、ネズミと話を、、、?」

「そう、桃香君の家から出て他の家に映ってくれって。手土産として、ひまわりの種を持っていくといい。」

「はぁ、、。」

正直、どんな正義感溢れる人助けができるのかと思っていたが、まさかの雑用じみた案件で、がっかりである。

べつにそんな事、桃香さんがねずみ取りでもしかければ俺はやらなくて済む仕事じゃないのだろうか?

ブーブー文句を言えば、ボスは女性のご機嫌をとるのは事件解決なんかより難しいと言う。

「桃香君が騒ぐと、博士も彼女に巻き込まれて研究どころでは無くなるからね。」

「マサトが桃香さんの、機嫌をとればいいじゃないか、、。」

すっかり他人事と決め込んだマサトは、先程から、椅子に腰掛け、眠そうにアクビをしていたが、突然話を振られアワアワと手を降る。

「お、俺ムリだぁぁぁーー!桃香さんにあったら、この前の返事しなきゃなんねーっ!!
勘弁してくんろーっ!!」

顔を赤くしたり、青くしたり忙しいマサトを見ると、哀れに思えてきた。

この情けない姿を見れば、桃香さんだって目が醒めるのではないかと思うのだが、、、

「ああ、そうだったな、、。大丈夫だ。俺がやる。とりあえず、桃香さんの家まで運んでくれよ、、。」


仕方なく、その下らない依頼を引き受ける事にした俺は、マサトの車に乗り、桃香さんの家まで向かったのであった。





「おい、ゆうや、そろそろ時間だな。初仕事上手くやれよ。
俺は、ここで車を止めて待ってる。終わったら、窓を叩いてくれ。」

「分かった。ちっ、、いいなぁ、待ってる方は楽ちんで、、、。」

まぁ、今までは逆の立場だったから、あまり文句も言えないのだが。

ピピっ!!

6時にセットしたタイマーが鳴ると同時に俺はハムスターへと変身した。


「ハムちゃん!何度見てもやっぱりキャワいい♡♡気をちゅけていってきてねつ♡」

マサトが頬を緩めながら送りだしてくれたのだ。


(フヒーっ!いよいよだ!相手が怖いネズミだったらどうしよう、、。俺、マサトみたいなコミュ力ないしなぁ、、、
でも、ひまわりの種も持ってるし、がんばるぞっ!)


桃香さんの家の前、ハムスターの小さな身体でみる玄関のドアはとても大きかった。

ピンポーン!

よじ登り、チャイムを鳴らすと、暫くして桃香さんがドアから顔を出す。

「あれ?誰もいないわ。イタズラかしら、、?」

その隙に足元から部屋の中に侵入する。

すると、確かに気になる匂いを発見し、その匂いを辿ると、家具の隙間の奥に穴を見つけた。

(ああ!ネズミはきっとこの中だ!匂いが強い!)


中は真っ暗であったが、不思議と夜目が効く。


耳を澄ませばチューチューと鳴き声が聞こえ、寄ると一匹の灰色のネズミがじっとこちらを見ていたのだ!!

そして、ネズミの目が俺の目を捉えた瞬間、ギラリと光った!
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