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16 緊迫の車中で

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バンは俺を荷台に乗せ、パーク内をゆっくり走っている。

家族連れが賑わうパークの中で、スピードを出したら返って目立ってしまうからであろう。

俺は手をバンの中の手すりに繋がれ、脚も縛られて身動きが取れずにいた。

俺を連れ去った二人組は、前の運転席に座り荷台との間なは壁があり、覗き窓から時々俺を観察している。

(畜生!まさか、やつらは桃香さん自身も狙っていたなんて、、。
しかし、身代わりの俺で良かったぜ。しかし、偽物だと分かったらどうなる?海に沈められちまうのか、、?)

相手の事も、目的も何も分からない。

希望は、マサトがボスに連絡してくれてる事だが、マサト自身も揉み合いになっていた為心配だ。

スモークされた窓の隙間から見える、家族連れの笑顔が呑気で羨ましかった。



暫くパーク内をゆっくり進んでいた。
しかし、もうすぐパークの裏口に着いてしまいそうだ。そうなったら、奴らはスピードアップして、どこだか分からないが目的地に向かうであろう。

、、、そこで、俺はどうされてしまうのか?

俺は不安に押しつぶされそうになりながら、窓の外をただ見ていた。




ん?



んん?



あ、あれは?!


あのハトは、、!!!



マ、マサト、、!!!



なんとマサトが、ハトになって一生懸命こちらに向かって飛んでくるのだ!!

ああ、あの飛ぶのが苦手なマサトが!

俺を助けるために、全速力で飛んでいる。

時々、人や看板にぶつかりそうになりながらも、だんだんと、バンに追いついてくる。


そして、、、




遂にはバンと並走し、換気の為に少しだけ開けられた窓の隙間から身体を細くし荷台の中に入り込んできた!!


「マ、マサト、、、!助けにきてくれたのか、、ありがとう!」


その時のマサトは、いつもの間抜け面ではなく、眼光鋭いイカす鳩面だった。


「クルッポ、、。」

小さく一言鳴くと、マサトの口から咥えた一本の釘がカランと床に落ちる。

そして、改めてそれを咥え直して、マサトが俺の手の手錠の穴にカチカチと差し込んでいる。


カチカチ、、カチカチ、、カラン、、

カチカチ、カチカチ、、カラン、、


マサトは何度も釘を落としながらも、懸命に俺の手錠を外そうとしてくれている。

何分も、、。

その内、マサトの嘴の縁に血が滲む。

「マサト、もういいよ!お前だけでも逃ろ。人間に戻ったらお前も危ない!」

二人一緒のお陀仏は何としても避けたい。
こんな奴でも、コミュ障だった俺と仲良なってくれた唯一無二の親友だ。


「グルッボッ💢グルッボッ💢」

マサトが今まで聞いたことのない低い声で鳴く。

ああ、怒っているんだと分かった。

「うう゛、、マサト、、。ありがとう、、。」


そして、無言の時間が刻々と流れて、いつしかバンは遊園地を出て、普通のスピードで街を走っていた。

どこに向かうか予想できない。

時々、前の二人が、覗き窓から様子を伺ってくるが、ハトのマサトの小さな身体は俺の陰に隠れ見えないようだ。

パークを出てかなり走った所で、遂にカチッとした音が聞こえた。

「クルッポー!!」

「やった!外れた!」

俺達は、二つの違う言語で静かに喜びを分かち合った。

手が自由になればこっちのもんだ。

俺は、マサトの咥えていた釘を受け取り脚の鍵をなんとか外した。

これで手足は自由になった。

しかし、どうやってバレずに脱出するか、、。

赤信号で止まっている内に出るにしても、さすがにドアから出れば音等でバレてしまうであろう。

うーむと悩む俺の手をマサトがツンツンとつつく。

「クルッポ、クルッポ、ホー、ホー!」

運転席を羽根で指差し、一生懸命何かを伝えようとしている。

しかし、何を言っているか、さっぱり分からん!!

「クルクル、クルッポッポーッッ!!」

俺にさっぱり伝わらない事に苛立ち、マサトハトが地団駄を踏む。

「す、すまん、、マジで分からない、、。」

「グルッ、、」

俺が降参すると、マサトが、諦めたように低い声で一言鳴き、窓の隙間から飛んで行ってしまったのだ。

「あ、、マサト、、!」


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