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第7章
第80話 ゼンメイ・オニーロ
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「お食事に行きましょう。 次のコンテストまで時間があるから」
クルチアが提案した。
食堂へ移動しながら、クギナは『バスターズ』への不満をしきりに訴える。
「実力以外で採用とはな。 見損なったぜ。 こっちから願い下げだ」
クギナの声は大きかったので、横合いを歩く男性グループの注意を引いた。 そのうちの1人はクギナの顔を知る人物。
(あれは... 会長の姪。 チッ、面倒な)
彼の名はミダイドコロ・カケル。『天心ハンター事業所』の所長である。 いつだったかに同事業所がイメージアップのため無償で主催したモンスター退治講習会のおり、ミダイドコロはオニーロ商会の会長ゼンメイ・オニーロにクギナを紹介されたことがある。 ゼンメイはクギナの伯父。『天心ハンター事業所』はオニーロ商会が運営する事業の1つだ。
「所長、どうしました?」
「うん、ちょっとな」
ミダイドコロはゼンメイに指示されていた。 コンテスト会場でクギナの姿を見かけることがあれば連絡を入れろ、と。 見なかったことにしたいが、そうもいかない。 オニーロ会長は抜け目のない人物。 だから、今ミダイドコロが姪を目撃したことすら察知するかも。 例えば、"所長、どうしました?" と言った隣のコイツがオニーロ会長のスパイかもしれない。 ミダイドコロにとってオニーロ会長は底が見えない恐ろしい人物。 ゆえに、彼の指示は絶対だった。
「ちょっとテレホンしてくる。 先に行っててくれ」
ミダイドコロはグループを離れて人通りの少ない片隅へ移動。 懐から携帯ホンを取り出した。
◇◆◇
ミダイドコロはゼンメイの携帯ホンにつながるテレホン番号を押す。 プルルルル、プルルルル。
呼び出し音に続いて、シブい男性の声。
「俺だ」
「会長、ミダイドコロです。 姪御さんをダレノガレ競技場でお見かけしました」
「そうか。 何人か使って、ウチに連れ戻せ。 あれを採用する事業所は無いと思うが、念のためな」
クギナは母親と共に、伯父であるゼンメイの屋敷に住んでいる。 クギナの父は早逝した。
「承知しました」
「手荒になっても構わん。 素直に従う娘じゃないからな。 しかし絶対に怪我はさせるな。 手練を使え」
ゼンメイはクギナをエクレア小国の上流階級に送り込むつもりでいる。 貴族にクギナを嫁がせて、オーク混じりの血脈をエクレアの貴族社会に根付かせる。 それが彼の悲願だった。 そのためにクギナを名門校と名高いゲータレード市立高校にねじ込みもした。 大事な姪がハンター稼業のごときヤクザな世界に足を踏み入れるのを看過できようものか。
◇
通話を終えてゼンメイは溜息をつく。
「まったく、どうしてハンターなんぞに興味を」
講習会に連れて行けとせがまれたときから、こうなる気はしていた。
「オークの血のせい、か...」
ゼンメイ自身が若い頃はハンターだった。 天心ハンター事業を先代から継承し、そこから多方面に事業を広げたのだ。
クルチアが提案した。
食堂へ移動しながら、クギナは『バスターズ』への不満をしきりに訴える。
「実力以外で採用とはな。 見損なったぜ。 こっちから願い下げだ」
クギナの声は大きかったので、横合いを歩く男性グループの注意を引いた。 そのうちの1人はクギナの顔を知る人物。
(あれは... 会長の姪。 チッ、面倒な)
彼の名はミダイドコロ・カケル。『天心ハンター事業所』の所長である。 いつだったかに同事業所がイメージアップのため無償で主催したモンスター退治講習会のおり、ミダイドコロはオニーロ商会の会長ゼンメイ・オニーロにクギナを紹介されたことがある。 ゼンメイはクギナの伯父。『天心ハンター事業所』はオニーロ商会が運営する事業の1つだ。
「所長、どうしました?」
「うん、ちょっとな」
ミダイドコロはゼンメイに指示されていた。 コンテスト会場でクギナの姿を見かけることがあれば連絡を入れろ、と。 見なかったことにしたいが、そうもいかない。 オニーロ会長は抜け目のない人物。 だから、今ミダイドコロが姪を目撃したことすら察知するかも。 例えば、"所長、どうしました?" と言った隣のコイツがオニーロ会長のスパイかもしれない。 ミダイドコロにとってオニーロ会長は底が見えない恐ろしい人物。 ゆえに、彼の指示は絶対だった。
「ちょっとテレホンしてくる。 先に行っててくれ」
ミダイドコロはグループを離れて人通りの少ない片隅へ移動。 懐から携帯ホンを取り出した。
◇◆◇
ミダイドコロはゼンメイの携帯ホンにつながるテレホン番号を押す。 プルルルル、プルルルル。
呼び出し音に続いて、シブい男性の声。
「俺だ」
「会長、ミダイドコロです。 姪御さんをダレノガレ競技場でお見かけしました」
「そうか。 何人か使って、ウチに連れ戻せ。 あれを採用する事業所は無いと思うが、念のためな」
クギナは母親と共に、伯父であるゼンメイの屋敷に住んでいる。 クギナの父は早逝した。
「承知しました」
「手荒になっても構わん。 素直に従う娘じゃないからな。 しかし絶対に怪我はさせるな。 手練を使え」
ゼンメイはクギナをエクレア小国の上流階級に送り込むつもりでいる。 貴族にクギナを嫁がせて、オーク混じりの血脈をエクレアの貴族社会に根付かせる。 それが彼の悲願だった。 そのためにクギナを名門校と名高いゲータレード市立高校にねじ込みもした。 大事な姪がハンター稼業のごときヤクザな世界に足を踏み入れるのを看過できようものか。
◇
通話を終えてゼンメイは溜息をつく。
「まったく、どうしてハンターなんぞに興味を」
講習会に連れて行けとせがまれたときから、こうなる気はしていた。
「オークの血のせい、か...」
ゼンメイ自身が若い頃はハンターだった。 天心ハンター事業を先代から継承し、そこから多方面に事業を広げたのだ。
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