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第6章
第72話 コンテスト申し込み⑤
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"引っ張り合い" の原因となったトオマスvsアリスの試合は行われなかった。 アリスは引っ張り合いでトオマスの実力に見当が付いたのだと言う。
「もういいんだー。 ナイトリングの実力は大体わかったし」
しかしアリスはクルチアらから離れる様子を見せず、5人組となった一行は『金の盾』の申し込みデスクへ向かった。
◇◆◇
『金の盾』のコンテストにはクルチアも出場するので、トオマスおよびクギナと一緒にエントリー申し込みの列に並んだ。 ミツキとアリスは、少し離れた場所で仲良くお喋り。
クルチアは、申し込みデスクで所員に混じって働くコミカグラ・サホウの姿に気付いた。
「あっ、コミカグラさん♡」 明日に本戦を控えてるのにコンテスト業務だなんて立派だな。
「コミカグラって、あれか、オマエが好きな有名ハンターの」
クギナはクルチアと違って、有名人への関心が薄い。
「うん。 昨日の予選会場でお話できたの」
トオマスは黙って2人の会話を聞いている。 コミカグラ・サホウほどの著名ハンターにして人格者なら、トオマスの主君レーダーが反応してしかるべき。 しかしトオマスの表情からは、その様子が全く窺えない。
◇◆◇
行列が進み、クルチアたちはデスクの前までやって来た。
サホウがクルチアに気付く。
「やあイナギリさん」
「お早うございます、コミカグラさん♡」
「ウチのコンテストを受けるの?」
「ハイ♡」
クルチアの返答に、サホウは怪訝な表情。
「きのう言ったよね、君もウチに入所してもらうって」カスガノミチくんが入所すればの話だけど。「その話、忘れちゃった?」
クルチアは慌てた。 いけない! コミカグラさんへの印象が悪くなっちゃう!
「もちろんそれは覚えてますっ!」 コミカグラさんのお誘いを忘れることなどっ!「それとは別に腕試しなんです。 ここなら木刀を貸して頂けるって聞いてそれで...」
慌てるクルチアを落ち着かせようと、サホウは優しく微笑む。
「ああ、そういうこと。 確かにウチは木刀で試合だよ。 イナギリさんも頑張ってね」
「ハイ! ありがとうございます♡」
◇◆◇
申し込みを終えてデスクを離れるクルチアら3人。 周囲の申込者からクルチアに雑多な視線が注がれる。
(入所が決まってるだって?)(羨ましいぜ)(何者だ、あの女の子?)
多数の視線を集め澄まし顔で前を歩くクルチアの尻を、背後からクギナが膝で蹴り上げる。
「おい」ドスッ
クルチアは尻を押さえて振り向き、クギナに抗議する。
「お尻に膝蹴りしないで!」
以前クギナに肩を小突かれてから、クルチアは密かに決意していた。 今度オウリンさんに何かされたら、はっきり抗議しようと。
しかしクギナは抗議をスルー。 クルチアに説明を迫る。
「どういうことだよ?」
クルチアは尻を押さえたまま尋ね返す。
「何が?」
「オマエ『金の盾』に入んのかよ?」 やけに可愛い子ぶってたけどよ。
「ミツキが入るならね」
「ミツキは『金の盾』に入んのか?」
クルチアはクギナに、ミツキを取り巻くスカウト状況を説明した。
「―というわけなの」
クルチアは気付かなかった。 傍らで話を聞いていたトオマスが追い詰められた表情でいることに。
「もういいんだー。 ナイトリングの実力は大体わかったし」
しかしアリスはクルチアらから離れる様子を見せず、5人組となった一行は『金の盾』の申し込みデスクへ向かった。
◇◆◇
『金の盾』のコンテストにはクルチアも出場するので、トオマスおよびクギナと一緒にエントリー申し込みの列に並んだ。 ミツキとアリスは、少し離れた場所で仲良くお喋り。
クルチアは、申し込みデスクで所員に混じって働くコミカグラ・サホウの姿に気付いた。
「あっ、コミカグラさん♡」 明日に本戦を控えてるのにコンテスト業務だなんて立派だな。
「コミカグラって、あれか、オマエが好きな有名ハンターの」
クギナはクルチアと違って、有名人への関心が薄い。
「うん。 昨日の予選会場でお話できたの」
トオマスは黙って2人の会話を聞いている。 コミカグラ・サホウほどの著名ハンターにして人格者なら、トオマスの主君レーダーが反応してしかるべき。 しかしトオマスの表情からは、その様子が全く窺えない。
◇◆◇
行列が進み、クルチアたちはデスクの前までやって来た。
サホウがクルチアに気付く。
「やあイナギリさん」
「お早うございます、コミカグラさん♡」
「ウチのコンテストを受けるの?」
「ハイ♡」
クルチアの返答に、サホウは怪訝な表情。
「きのう言ったよね、君もウチに入所してもらうって」カスガノミチくんが入所すればの話だけど。「その話、忘れちゃった?」
クルチアは慌てた。 いけない! コミカグラさんへの印象が悪くなっちゃう!
「もちろんそれは覚えてますっ!」 コミカグラさんのお誘いを忘れることなどっ!「それとは別に腕試しなんです。 ここなら木刀を貸して頂けるって聞いてそれで...」
慌てるクルチアを落ち着かせようと、サホウは優しく微笑む。
「ああ、そういうこと。 確かにウチは木刀で試合だよ。 イナギリさんも頑張ってね」
「ハイ! ありがとうございます♡」
◇◆◇
申し込みを終えてデスクを離れるクルチアら3人。 周囲の申込者からクルチアに雑多な視線が注がれる。
(入所が決まってるだって?)(羨ましいぜ)(何者だ、あの女の子?)
多数の視線を集め澄まし顔で前を歩くクルチアの尻を、背後からクギナが膝で蹴り上げる。
「おい」ドスッ
クルチアは尻を押さえて振り向き、クギナに抗議する。
「お尻に膝蹴りしないで!」
以前クギナに肩を小突かれてから、クルチアは密かに決意していた。 今度オウリンさんに何かされたら、はっきり抗議しようと。
しかしクギナは抗議をスルー。 クルチアに説明を迫る。
「どういうことだよ?」
クルチアは尻を押さえたまま尋ね返す。
「何が?」
「オマエ『金の盾』に入んのかよ?」 やけに可愛い子ぶってたけどよ。
「ミツキが入るならね」
「ミツキは『金の盾』に入んのか?」
クルチアはクギナに、ミツキを取り巻くスカウト状況を説明した。
「―というわけなの」
クルチアは気付かなかった。 傍らで話を聞いていたトオマスが追い詰められた表情でいることに。
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