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第4章
第34話 充実した時間
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シノバズ侯爵に会った翌日の月曜日。 クルチアはクシナダさん経由で、放課後にミツキを喫茶店に呼び出していた。
「そういうわけで、ミツキは今週末から土日月と開催される武術大会に出場するの」
ミツキは真剣な表情で問う。
「罠の恐れは?」
「あんたも心配性ねえ」
「侯爵が悪者だって可能性も...」
「大丈夫だって。 侯爵もクイックリングの血を引いているのよ?」 きょう図書室で調べたの。「腹をくくって出場しなさい。 あっ、キングズブリッジ先輩に護衛に来てもらおっか。 何かあったときミツキが逃げやすいでしょ」
「キングズブリッジって、こないだクルチアに主君を断られてた人?」
「そう、その人。 でも主君を引き受けたの」
唐突に突きつけられた凶報にミツキは青ざめる。 主君と配下といえば幼馴染以上に親密な関係。 自分との間にクルチアがトオマスを割り込ませたと感じた。 自分がクルチアに粗略に扱われていると感じた。
青ざめる自分に気付かずミツキは平静を装う。
「ふ~ん」
「なによ暗い顔して」 そんなにショックだった?
「暗い顔なんてしてない。 あいつ、これからずっとクルチアと一緒にいるの?」
「"あいつ" じゃないでしょ。 "キングズブリッジ先輩" って呼びなさい」
「長すぎる」
12文字は確かに長い。
「じゃあ "先輩" とかは?」
「呼び方なんかどうでもいい」
ミツキはムスっと答えた。 呼び方どうこう以前に、トオマスと交流するつもりがない。
「先輩と仲良くするのよ?」 これから仲間になるんだから。
「フン」
ミツキはテーブルに頬杖をし、そっぽを向いた。 もう片方の手でメロンソーダのグラスを掴み、ストローで緑色の液体を吸う。 チューッ
「もー」
クルチアは不満げに頬を膨らませていたが、ふと気付いた。
「そういえばミツキ、あんたダイエット中でしょ。 メロンソーダなんて注文して」 もう、ダメじゃない。
「ダイエットなんてクルチアたちが勝手に言ってるだけだろ」
ダイエットに関連して、クルチアはクシナダさんとの会話を思い出した。
「そういえばさあ、あんたクシナダさんにおねだりするんだって?」
「してない」
「ちょっと私にもおねだりしてみて」
「イヤ だ」
こんな具合にクルチアは、久々にミツキと充実した時間を過ごした。
「そういうわけで、ミツキは今週末から土日月と開催される武術大会に出場するの」
ミツキは真剣な表情で問う。
「罠の恐れは?」
「あんたも心配性ねえ」
「侯爵が悪者だって可能性も...」
「大丈夫だって。 侯爵もクイックリングの血を引いているのよ?」 きょう図書室で調べたの。「腹をくくって出場しなさい。 あっ、キングズブリッジ先輩に護衛に来てもらおっか。 何かあったときミツキが逃げやすいでしょ」
「キングズブリッジって、こないだクルチアに主君を断られてた人?」
「そう、その人。 でも主君を引き受けたの」
唐突に突きつけられた凶報にミツキは青ざめる。 主君と配下といえば幼馴染以上に親密な関係。 自分との間にクルチアがトオマスを割り込ませたと感じた。 自分がクルチアに粗略に扱われていると感じた。
青ざめる自分に気付かずミツキは平静を装う。
「ふ~ん」
「なによ暗い顔して」 そんなにショックだった?
「暗い顔なんてしてない。 あいつ、これからずっとクルチアと一緒にいるの?」
「"あいつ" じゃないでしょ。 "キングズブリッジ先輩" って呼びなさい」
「長すぎる」
12文字は確かに長い。
「じゃあ "先輩" とかは?」
「呼び方なんかどうでもいい」
ミツキはムスっと答えた。 呼び方どうこう以前に、トオマスと交流するつもりがない。
「先輩と仲良くするのよ?」 これから仲間になるんだから。
「フン」
ミツキはテーブルに頬杖をし、そっぽを向いた。 もう片方の手でメロンソーダのグラスを掴み、ストローで緑色の液体を吸う。 チューッ
「もー」
クルチアは不満げに頬を膨らませていたが、ふと気付いた。
「そういえばミツキ、あんたダイエット中でしょ。 メロンソーダなんて注文して」 もう、ダメじゃない。
「ダイエットなんてクルチアたちが勝手に言ってるだけだろ」
ダイエットに関連して、クルチアはクシナダさんとの会話を思い出した。
「そういえばさあ、あんたクシナダさんにおねだりするんだって?」
「してない」
「ちょっと私にもおねだりしてみて」
「イヤ だ」
こんな具合にクルチアは、久々にミツキと充実した時間を過ごした。
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