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第11話【最終話】因果を断ち切る。
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「着いた。もう間も無く、ドアがノックされる筈だ」
「過去の」エレイン宅に到着したチェシャは、じっと扉を見つめながらテディにそう伝えた。
「ソイツをやっつけるのカイ、チェシャしゃま。ペルシャ、とか言ったっケ」
パタパタと浮遊しながら返答するテディ。
「いや。その必要はないよ。重要なのは指輪をどうにかする事だ。だけどもしペルシャを倒さなきゃならないなら、僕は手段を選ばない」
チェシャがそう言った時、丁度ノッカーの音が響いた。シャムとして掃除をしていた時は驚いたが、今度は冷静だ。
「はい、どちら様でしょうか」
そう答えると、ハンスの声が返ってくる。
「あれ? あんた誰だ。姉さんはいるかい?」
「エレイン様でしたら、今は外出中です」
「そっか。あんた使用人? 俺はこの家に昔住んでたハンスってもんなんだけど、姉さんに渡したいものがあるから開けてくれるかい?」
「ええ、良いですよ」
今回のハンスは冷静だった。チェシャが余計な質問をしなかったからかも知れない。
チェシャがドアを開けると、そこにはハンスとペルシャが立っていた。ハンスは「ヒュー」と口笛を吹く。ペルシャは少しだけ目を見開いた。
「お姉さん、美人だね! 使用人にしておくのは勿体ないくらいだ」
ハンスはニヤニヤと笑った。チェシャは愛想笑いを返すだけにとどめた。
「その女は使用人などではないぞハンス。因果の聖女チェシャだ。僕達の陰謀を阻止に、少し先の未来からやって来たのだ」
「はぁ? マジすか、ペルシャ様」
ハンスは半信半疑のようだったが、ペルシャは自信ありげに微笑んでいた。
「君、一体何者なの」
チェシャはペルシャに問いかける。
「僕はホムンクルスのペルシャ。この世の全てを知る者。かつてこの世を破滅させようとした邪竜、アビス・ヴィルベヒモスの後継者さ」
そう言って肩をすくめるペルシャ。
アビス・ヴィルベヒモス。破壊神とも呼ばれる恐ろしい存在。かつてチェシャが対峙し、辛くも封印した邪竜だ。
「君が何を企んでいるのは知らないけど、お姉ちゃん......エレイン様を陥れようとしているのはわかっているんだ。そんなの、絶対にさせはしない!」
チェシャは編み棒を構える。
「わかっているさ、全てな。今の僕では君には勝てん。だからここは一旦引こう。指輪を渡したところで君に破壊されてしまうだろうしな。帰るぞ、ハンス」
「でもペルシャ様、俺は姉さんを味方にしたいんだ! 俺は......!」
食い下がるハンス。だがペルシャはハンスをギロリと睨みつける。
「死にたいのか?」
そう一言だけ言った。ハンスはギョッとした顔で口をつぐむ。
「いえ、すいません」
大人しくなったハンスを伴い、ペルシャは去って行った。「また会おう」と言い残して。
チェシャは少しの間、その後ろ姿を見送った。
「ふぅ。これでとりあえずは大丈夫だね。ありがとうテディ」
チェシャは微笑んで、テディの頭をそっと撫でた。
「ウウン。お安い御用さチェシャしゃま。またいつでも呼んでね。今日は会えて嬉しかったヨ。バイバイ」
そう言い残して、テディの体は毛糸となってほぐれて消えた。チェシャの体が輝き、シャムの姿に戻る。
「あっ、いけない。急いで掃除の続きをしなきゃ!」
シャムはニコニコと掃除を始める。しばらくして、エレインが帰って来た。
「ただいまぁ! シャム!」
沢山の荷物を抱えたエレインは満面の笑み。シャムは思わず、その体に抱きついた。
「おかえりなさい! お姉ちゃん!」
「うわっ、どうしたのシャム。なんだか積極的だね」
「えへへ。だってお姉ちゃんの事、大好きなんだもん」
笑顔で返すシャムに、エレインは顔を赤くする。
「あはっ。ありがとうシャム。私も大好きだよ」
エレインは荷物を置いて、シャムを抱きしめる。
抱きしめられながら、シャムは幸せを感じていた。そして何があろうとも、エレインを守り抜こうと誓ったのだった。
「過去の」エレイン宅に到着したチェシャは、じっと扉を見つめながらテディにそう伝えた。
「ソイツをやっつけるのカイ、チェシャしゃま。ペルシャ、とか言ったっケ」
パタパタと浮遊しながら返答するテディ。
「いや。その必要はないよ。重要なのは指輪をどうにかする事だ。だけどもしペルシャを倒さなきゃならないなら、僕は手段を選ばない」
チェシャがそう言った時、丁度ノッカーの音が響いた。シャムとして掃除をしていた時は驚いたが、今度は冷静だ。
「はい、どちら様でしょうか」
そう答えると、ハンスの声が返ってくる。
「あれ? あんた誰だ。姉さんはいるかい?」
「エレイン様でしたら、今は外出中です」
「そっか。あんた使用人? 俺はこの家に昔住んでたハンスってもんなんだけど、姉さんに渡したいものがあるから開けてくれるかい?」
「ええ、良いですよ」
今回のハンスは冷静だった。チェシャが余計な質問をしなかったからかも知れない。
チェシャがドアを開けると、そこにはハンスとペルシャが立っていた。ハンスは「ヒュー」と口笛を吹く。ペルシャは少しだけ目を見開いた。
「お姉さん、美人だね! 使用人にしておくのは勿体ないくらいだ」
ハンスはニヤニヤと笑った。チェシャは愛想笑いを返すだけにとどめた。
「その女は使用人などではないぞハンス。因果の聖女チェシャだ。僕達の陰謀を阻止に、少し先の未来からやって来たのだ」
「はぁ? マジすか、ペルシャ様」
ハンスは半信半疑のようだったが、ペルシャは自信ありげに微笑んでいた。
「君、一体何者なの」
チェシャはペルシャに問いかける。
「僕はホムンクルスのペルシャ。この世の全てを知る者。かつてこの世を破滅させようとした邪竜、アビス・ヴィルベヒモスの後継者さ」
そう言って肩をすくめるペルシャ。
アビス・ヴィルベヒモス。破壊神とも呼ばれる恐ろしい存在。かつてチェシャが対峙し、辛くも封印した邪竜だ。
「君が何を企んでいるのは知らないけど、お姉ちゃん......エレイン様を陥れようとしているのはわかっているんだ。そんなの、絶対にさせはしない!」
チェシャは編み棒を構える。
「わかっているさ、全てな。今の僕では君には勝てん。だからここは一旦引こう。指輪を渡したところで君に破壊されてしまうだろうしな。帰るぞ、ハンス」
「でもペルシャ様、俺は姉さんを味方にしたいんだ! 俺は......!」
食い下がるハンス。だがペルシャはハンスをギロリと睨みつける。
「死にたいのか?」
そう一言だけ言った。ハンスはギョッとした顔で口をつぐむ。
「いえ、すいません」
大人しくなったハンスを伴い、ペルシャは去って行った。「また会おう」と言い残して。
チェシャは少しの間、その後ろ姿を見送った。
「ふぅ。これでとりあえずは大丈夫だね。ありがとうテディ」
チェシャは微笑んで、テディの頭をそっと撫でた。
「ウウン。お安い御用さチェシャしゃま。またいつでも呼んでね。今日は会えて嬉しかったヨ。バイバイ」
そう言い残して、テディの体は毛糸となってほぐれて消えた。チェシャの体が輝き、シャムの姿に戻る。
「あっ、いけない。急いで掃除の続きをしなきゃ!」
シャムはニコニコと掃除を始める。しばらくして、エレインが帰って来た。
「ただいまぁ! シャム!」
沢山の荷物を抱えたエレインは満面の笑み。シャムは思わず、その体に抱きついた。
「おかえりなさい! お姉ちゃん!」
「うわっ、どうしたのシャム。なんだか積極的だね」
「えへへ。だってお姉ちゃんの事、大好きなんだもん」
笑顔で返すシャムに、エレインは顔を赤くする。
「あはっ。ありがとうシャム。私も大好きだよ」
エレインは荷物を置いて、シャムを抱きしめる。
抱きしめられながら、シャムは幸せを感じていた。そして何があろうとも、エレインを守り抜こうと誓ったのだった。
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