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第13話 パーティ解散。
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非常にまずい事になった。
現時点で最強の敵を前にして、唯一対抗出来る筈だった俺の力が、綺麗さっぱり失われていた。
レベル1。何度見ても、冒険者証のレベル表示はレベル1だ。
(ダフネ! 俺だ、ティムだ! 想定外の事が起こった! 俺の力が無くなってしまったんだ! 撤退する!)
連帯の指輪で念話を行い、まずはダフネに指示を出す。幸い、魔人は俺の力が無いことに気付いていないようだ。
(かしこまりました!)
ダフネが「仲間を守る」による瞬間移動で、俺の眼前に現れる。そしてすかさず俺の肩を掴み、瞬間移動でみんなの所へ戻った。現在の魔人との距離は、五十メートルくらいだ。
突然戻ってきた俺を見て、何事かと目を丸くする仲間達。
(ミスト! ティムだ! 俺の力が無くなった! プラカードでみんなに撤退だと伝えてくれ! 敵にバレないうちに逃げるぞ!)
(わかった)
ミストがすかさずプラカードでメッセージを表示し、みんなに見せる。
全員が状況を察し、キーラを守りに入る。
(キーラ!)
(わかってる! 空間転移でしょ! もうやってる!)
俺が指示を出す前に、キーラは「空間転移」の準備に入っていた。呪文を唱えながら、素早く印を結んでいる。
(どのくらいかかる!?)
(そうね、三十秒ってとこかしら!)
(わかった! よろしく頼む!)
三十秒。なんとしても、その時間を稼がなくてはならない。俺はなるべく平静を装って、魔人の方を見た。
「あー、あのな。やっぱりお前を倒すのはやめる事にした。今日の所は見逃してやる。そうだな、しばらく猶予をやるよ。それまでせいぜい余生を楽しむといい。じゃあ、俺たちは帰るから」
俺は友人にする様に手を顔の前に掲げ、「見逃して帰る」という事を強調した。
魔人は土下座の態勢から顔を上げ、微笑みながら立ち上がった。
「おっ、まじかよ! ありがとな! じゃあ次にお前がくる時まで、もっと強くなっておくぜ! 俺を生かした事、後悔させてやんよ!」
ニカッと歯を見せ、爽やかに親指を立てる魔人。
どうやらこちらの状況は、ばれていないようだ。単純な奴で助かった。
キーラを見る。まだ詠唱は続いている。もう少し会話する必要がありそうだ。
「あー、コホン。えー、俺の名前はティム。お前、名前はなんて言うんだ?」
「ん? おお、名前か。俺の名前はルーベントだ。よろしくなティム。なんだよ、お前なんか、話が分かりそうなやつじゃねぇか。茶でも飲んでくか?」
ルーベントがパチンと指を鳴らすと、目の前にテーブルが現れた。
「いや、今日の所は遠慮しておく。また今度な」
(こちらキーラ! 術が完成したわよティム! もういつでも行けるわ!)
キーラからの念話だ! よし!
(こちらティム! やってくれキーラ!)
(了解!)
「空間転移!」
キーラが高らかに叫ぶ。すると俺たちの体は、一瞬にして王都内、冒険者ギルドの前に移動した。この「空間転移」は、事前に設定しておいた場所にのみ、移動が可能なのだ。
迷宮から消える間際、ルーベントが手を振ってたのを思い出す。
変わった奴だった。もしかしたら、思っていたよりいい奴なのかも知れない。
いや、違う。昨日のジェイデン街道での戦い。俺が駆けつけなければ、ダフネも、キーラも、冒険者達は間違い無く死んでいた筈だ。あいつは敵だ。今度会った時は、絶対に倒す。
それにしても、危なかった。間一髪だった。まさか本当に力を奪われていたなんて。あの夢は、夢じゃなかったんだ。女神ルクスは、現実で俺に予言を授けていたんだ。
なんて事だ......。
俺は溜息を吐き、思わずその場にへたり込んだ。
「大丈夫ですか、ティム様」
ダフネがすかさず俺の側にしゃがみ込み、顔を覗き込んでくる。
「ああ、大丈夫だ。ありがとうダフネ」
俺はダフネの肩に手を乗せ、兜から覗く彼女の目を見た。慈愛に満ちた、優しい目だった。
「こっちは何にも大丈夫じゃない。どう言う事か、しっかり説明してもらうよ」
見上げると、シュタインが俺を見下ろしていた。眉間にしわを寄せたその表情は、一見すると怒っているようだ。だが、口元はニヤリと笑っていた。ザマァみろ、とでも言いたげな顔だった。
「ああ。全ての責任は俺にある。説明させてくれ」
俺は立ち上がり、みんなを冒険者ギルド内の酒場へと連れ立った。着席し、全員を見つめる。
みんな困惑しているようだった。無理もない。だが当事者の俺自身、何が起こったのか良くわかっていないのだ。力を奪われてしまった事だけは、確かだが。
「みんな、突然の撤退命令、すまなかった。実はな......」
「いらっしゃいませー。ご注文は何に致しますか?」
話そうとしたのと同タイミングで、看板娘のシェリーがやってきた。
「ああ、俺は麦茶で」
酒での失敗はもうこりごりだ。俺以外の全員は麦酒を頼んでいた。注文したものはすぐにテーブルに届けられ、とりあえず乾杯する。
「で? 一体何があったんです?」
シュタインはそう言って、麦酒を一気に飲み干した。そしてドンッとジョッキをテーブルに叩きつけ、シェリーにお代わりを要求した。
「実はな。何者かに、力を奪われてしまったみたいなんだ」
一瞬の沈黙。キーラとダフネ、そしてミストが、心配そうな目で俺を見る。念話でも話したし、少なくとも彼らは信じてくれている。
ノートンとキングスリー、モーラは戸惑っていた。お互いに目線を交わし、真偽を確かめようとしている。
シュタインは、そのどちらの反応とも違った。可笑しくて仕方がない、と言った顔で、満面の笑みを浮かべている。
「ティム様、誰が盗んだのかをただちに調べま」
「ふざけんじゃねぇよティム!」
ダフネの言葉を遮り、シュタインが怒鳴った。
「奪われただぁ!? ちょっとはマシな嘘つけよ!」
シュタインは立ち上がり、テーブルにバンッと手を叩きつける。
「いや、本当なんだ。夢で女神から予言を受けていた」
「はっ! 夢! そりゃ信憑性があるわなぁ。 じゃあ誰が奪ったのかも、その予言とやらでわかってんだろ?」
怒りと笑いが混ざった表情で、俺を見下ろすシュタイン。他のメンバーは、黙って成り行きを見守っている。事態の真相を知る為にも、余計な口を挟むべきではないと思っているのだろう。
「いや、それについては教えてくれなかった。女神は必要以上に人間に干渉出来ないらしい。だが、俺もこのまま諦めはしない。きっと力を取り戻して、もう一度あの魔人に挑むつもりだ」
「さすがです、ティム様!」
ダフネは小さく拍手をしながら、うっとりとした目で俺を見つめた。ちなみに全員、装備は解除している。ダフネも普段の爆乳男装姿だ。
「へぇ。そりゃ一体何十年先の事になるんだろうねぇ。きっとその前に、この王国はモンスター共に滅ぼされちまうさ。悪いけど、僕はあんたとのパーティーを解消させてもらうよ。他のみんなはどうする? いつまでもこんなクズと一緒にいても、メリットないぜ?」
「愚問だな。私は当然、死ぬまで添い遂げるつもりだ」
ダフネが高らかに宣言する。
「私もよ。例え死んだって、ティムの側から離れるつもりはないわ」
キーラは自身の左手薬指に嵌った指輪を眺めながら、そう返す。
『ティムとは長い付き合いだ。今更相棒を辞めるつもりはない』
ミストもプラカードで、パーティー残留の意思を示した。
「はっ。まぁそっちの三馬鹿トリオは予想済みだよ。ノートン達はどうするんだい?」
シュタインは見下したように俺達を見回した後、ノートン、モリー、キングスリーの顔を見回した。
「私は、ティムさんが力を取り戻すまで待つつもりです。ですがそれまで何もしない、という訳にもいきません。モリーとキングスリーさえ良ければ、三人でクエストをこなしたり、迷宮内を巡ったりして力を高めたい。ティムさんが力を取り戻した暁には、また一緒に魔人に挑もうと思います。二人はどうですか?」
柔和な笑みを浮かべ、モリーとキングスリーを見つめるノートン。二人も笑顔で頷く。
「もちろん異論はないわ。私はどこまでだって、ノートンに付いていく。地の果てまでだって、一緒よ」
「押忍」
「ありがとうございます、二人共」
三人は固い握手を交わした。シュタインは「ケッ」と悪態をつく。
「あーそうかい。じゃああんたらも今から僕の敵だ。僕は新しい仲間を見つけて、先に迷宮を踏破してやるよ。依頼を受けたのはティムだけど、依頼承認時のパーティーに含まれていれば、遂行は可能だからね。んじゃ、せいぜい頑張んな、クズ共」
シュタインはそう吐き捨てて、乱暴に椅子を倒して酒場を去っていった。
「なんなのアイツ。パーティーに入れて下さいって泣きついてきた癖に」
キーラが苛立った様子で、酒場の扉を睨む。
「全くですね。自分がクズの癖に、私達を、そしてティム様をクズ呼ばわり。許せません。本当に最低の人間です」
ダフネも愚痴をこぼしつつ、麦酒をグイッとあおる。
『だが、まるでこうなる事を予想していたような節がある。ティム、シュタインには気をつけた方がいい』
ミストがプラカードで俺に警告した。彼の勘は鋭い。
「そうだな。俺も何か引っかかってたんだ。今回の撤退、確かに俺に落ち度はあるが、シュタインの態度は明らかにおかしい。今後の奴の動向には注意した方が良さそうだ」
もしかしたら、力を奪ったのはシュタインかも知れない。そう考えたが、言うのは止めておいた。確たる証拠も無く人を貶める発言は良くない。例え相手が最低の人間であっても。
「私達も、シュタインの動向には注意を払うようにします。奪われた力に関しても、何か情報があればすぐにお伝えしますので。ティムさんが力を早く取り戻せるよう、私達も女神ルクス様に祈っています」
「ありがとう、ノートン」
俺たちは再び乾杯し、しばしの歓談を楽しんだ。
じわじわと心を侵食する不安を、打ち消すかのように。
現時点で最強の敵を前にして、唯一対抗出来る筈だった俺の力が、綺麗さっぱり失われていた。
レベル1。何度見ても、冒険者証のレベル表示はレベル1だ。
(ダフネ! 俺だ、ティムだ! 想定外の事が起こった! 俺の力が無くなってしまったんだ! 撤退する!)
連帯の指輪で念話を行い、まずはダフネに指示を出す。幸い、魔人は俺の力が無いことに気付いていないようだ。
(かしこまりました!)
ダフネが「仲間を守る」による瞬間移動で、俺の眼前に現れる。そしてすかさず俺の肩を掴み、瞬間移動でみんなの所へ戻った。現在の魔人との距離は、五十メートルくらいだ。
突然戻ってきた俺を見て、何事かと目を丸くする仲間達。
(ミスト! ティムだ! 俺の力が無くなった! プラカードでみんなに撤退だと伝えてくれ! 敵にバレないうちに逃げるぞ!)
(わかった)
ミストがすかさずプラカードでメッセージを表示し、みんなに見せる。
全員が状況を察し、キーラを守りに入る。
(キーラ!)
(わかってる! 空間転移でしょ! もうやってる!)
俺が指示を出す前に、キーラは「空間転移」の準備に入っていた。呪文を唱えながら、素早く印を結んでいる。
(どのくらいかかる!?)
(そうね、三十秒ってとこかしら!)
(わかった! よろしく頼む!)
三十秒。なんとしても、その時間を稼がなくてはならない。俺はなるべく平静を装って、魔人の方を見た。
「あー、あのな。やっぱりお前を倒すのはやめる事にした。今日の所は見逃してやる。そうだな、しばらく猶予をやるよ。それまでせいぜい余生を楽しむといい。じゃあ、俺たちは帰るから」
俺は友人にする様に手を顔の前に掲げ、「見逃して帰る」という事を強調した。
魔人は土下座の態勢から顔を上げ、微笑みながら立ち上がった。
「おっ、まじかよ! ありがとな! じゃあ次にお前がくる時まで、もっと強くなっておくぜ! 俺を生かした事、後悔させてやんよ!」
ニカッと歯を見せ、爽やかに親指を立てる魔人。
どうやらこちらの状況は、ばれていないようだ。単純な奴で助かった。
キーラを見る。まだ詠唱は続いている。もう少し会話する必要がありそうだ。
「あー、コホン。えー、俺の名前はティム。お前、名前はなんて言うんだ?」
「ん? おお、名前か。俺の名前はルーベントだ。よろしくなティム。なんだよ、お前なんか、話が分かりそうなやつじゃねぇか。茶でも飲んでくか?」
ルーベントがパチンと指を鳴らすと、目の前にテーブルが現れた。
「いや、今日の所は遠慮しておく。また今度な」
(こちらキーラ! 術が完成したわよティム! もういつでも行けるわ!)
キーラからの念話だ! よし!
(こちらティム! やってくれキーラ!)
(了解!)
「空間転移!」
キーラが高らかに叫ぶ。すると俺たちの体は、一瞬にして王都内、冒険者ギルドの前に移動した。この「空間転移」は、事前に設定しておいた場所にのみ、移動が可能なのだ。
迷宮から消える間際、ルーベントが手を振ってたのを思い出す。
変わった奴だった。もしかしたら、思っていたよりいい奴なのかも知れない。
いや、違う。昨日のジェイデン街道での戦い。俺が駆けつけなければ、ダフネも、キーラも、冒険者達は間違い無く死んでいた筈だ。あいつは敵だ。今度会った時は、絶対に倒す。
それにしても、危なかった。間一髪だった。まさか本当に力を奪われていたなんて。あの夢は、夢じゃなかったんだ。女神ルクスは、現実で俺に予言を授けていたんだ。
なんて事だ......。
俺は溜息を吐き、思わずその場にへたり込んだ。
「大丈夫ですか、ティム様」
ダフネがすかさず俺の側にしゃがみ込み、顔を覗き込んでくる。
「ああ、大丈夫だ。ありがとうダフネ」
俺はダフネの肩に手を乗せ、兜から覗く彼女の目を見た。慈愛に満ちた、優しい目だった。
「こっちは何にも大丈夫じゃない。どう言う事か、しっかり説明してもらうよ」
見上げると、シュタインが俺を見下ろしていた。眉間にしわを寄せたその表情は、一見すると怒っているようだ。だが、口元はニヤリと笑っていた。ザマァみろ、とでも言いたげな顔だった。
「ああ。全ての責任は俺にある。説明させてくれ」
俺は立ち上がり、みんなを冒険者ギルド内の酒場へと連れ立った。着席し、全員を見つめる。
みんな困惑しているようだった。無理もない。だが当事者の俺自身、何が起こったのか良くわかっていないのだ。力を奪われてしまった事だけは、確かだが。
「みんな、突然の撤退命令、すまなかった。実はな......」
「いらっしゃいませー。ご注文は何に致しますか?」
話そうとしたのと同タイミングで、看板娘のシェリーがやってきた。
「ああ、俺は麦茶で」
酒での失敗はもうこりごりだ。俺以外の全員は麦酒を頼んでいた。注文したものはすぐにテーブルに届けられ、とりあえず乾杯する。
「で? 一体何があったんです?」
シュタインはそう言って、麦酒を一気に飲み干した。そしてドンッとジョッキをテーブルに叩きつけ、シェリーにお代わりを要求した。
「実はな。何者かに、力を奪われてしまったみたいなんだ」
一瞬の沈黙。キーラとダフネ、そしてミストが、心配そうな目で俺を見る。念話でも話したし、少なくとも彼らは信じてくれている。
ノートンとキングスリー、モーラは戸惑っていた。お互いに目線を交わし、真偽を確かめようとしている。
シュタインは、そのどちらの反応とも違った。可笑しくて仕方がない、と言った顔で、満面の笑みを浮かべている。
「ティム様、誰が盗んだのかをただちに調べま」
「ふざけんじゃねぇよティム!」
ダフネの言葉を遮り、シュタインが怒鳴った。
「奪われただぁ!? ちょっとはマシな嘘つけよ!」
シュタインは立ち上がり、テーブルにバンッと手を叩きつける。
「いや、本当なんだ。夢で女神から予言を受けていた」
「はっ! 夢! そりゃ信憑性があるわなぁ。 じゃあ誰が奪ったのかも、その予言とやらでわかってんだろ?」
怒りと笑いが混ざった表情で、俺を見下ろすシュタイン。他のメンバーは、黙って成り行きを見守っている。事態の真相を知る為にも、余計な口を挟むべきではないと思っているのだろう。
「いや、それについては教えてくれなかった。女神は必要以上に人間に干渉出来ないらしい。だが、俺もこのまま諦めはしない。きっと力を取り戻して、もう一度あの魔人に挑むつもりだ」
「さすがです、ティム様!」
ダフネは小さく拍手をしながら、うっとりとした目で俺を見つめた。ちなみに全員、装備は解除している。ダフネも普段の爆乳男装姿だ。
「へぇ。そりゃ一体何十年先の事になるんだろうねぇ。きっとその前に、この王国はモンスター共に滅ぼされちまうさ。悪いけど、僕はあんたとのパーティーを解消させてもらうよ。他のみんなはどうする? いつまでもこんなクズと一緒にいても、メリットないぜ?」
「愚問だな。私は当然、死ぬまで添い遂げるつもりだ」
ダフネが高らかに宣言する。
「私もよ。例え死んだって、ティムの側から離れるつもりはないわ」
キーラは自身の左手薬指に嵌った指輪を眺めながら、そう返す。
『ティムとは長い付き合いだ。今更相棒を辞めるつもりはない』
ミストもプラカードで、パーティー残留の意思を示した。
「はっ。まぁそっちの三馬鹿トリオは予想済みだよ。ノートン達はどうするんだい?」
シュタインは見下したように俺達を見回した後、ノートン、モリー、キングスリーの顔を見回した。
「私は、ティムさんが力を取り戻すまで待つつもりです。ですがそれまで何もしない、という訳にもいきません。モリーとキングスリーさえ良ければ、三人でクエストをこなしたり、迷宮内を巡ったりして力を高めたい。ティムさんが力を取り戻した暁には、また一緒に魔人に挑もうと思います。二人はどうですか?」
柔和な笑みを浮かべ、モリーとキングスリーを見つめるノートン。二人も笑顔で頷く。
「もちろん異論はないわ。私はどこまでだって、ノートンに付いていく。地の果てまでだって、一緒よ」
「押忍」
「ありがとうございます、二人共」
三人は固い握手を交わした。シュタインは「ケッ」と悪態をつく。
「あーそうかい。じゃああんたらも今から僕の敵だ。僕は新しい仲間を見つけて、先に迷宮を踏破してやるよ。依頼を受けたのはティムだけど、依頼承認時のパーティーに含まれていれば、遂行は可能だからね。んじゃ、せいぜい頑張んな、クズ共」
シュタインはそう吐き捨てて、乱暴に椅子を倒して酒場を去っていった。
「なんなのアイツ。パーティーに入れて下さいって泣きついてきた癖に」
キーラが苛立った様子で、酒場の扉を睨む。
「全くですね。自分がクズの癖に、私達を、そしてティム様をクズ呼ばわり。許せません。本当に最低の人間です」
ダフネも愚痴をこぼしつつ、麦酒をグイッとあおる。
『だが、まるでこうなる事を予想していたような節がある。ティム、シュタインには気をつけた方がいい』
ミストがプラカードで俺に警告した。彼の勘は鋭い。
「そうだな。俺も何か引っかかってたんだ。今回の撤退、確かに俺に落ち度はあるが、シュタインの態度は明らかにおかしい。今後の奴の動向には注意した方が良さそうだ」
もしかしたら、力を奪ったのはシュタインかも知れない。そう考えたが、言うのは止めておいた。確たる証拠も無く人を貶める発言は良くない。例え相手が最低の人間であっても。
「私達も、シュタインの動向には注意を払うようにします。奪われた力に関しても、何か情報があればすぐにお伝えしますので。ティムさんが力を早く取り戻せるよう、私達も女神ルクス様に祈っています」
「ありがとう、ノートン」
俺たちは再び乾杯し、しばしの歓談を楽しんだ。
じわじわと心を侵食する不安を、打ち消すかのように。
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