二十年間レベル1のおっさん、恋人を寝取られた上にギルドを追放される〜ハズレスキル「ちからをためる」で溜め続けた力、今こそ解放します〜完全版

アキ・スマイリー

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第5話 ハーレム奪還。

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 城への移動は、魔術自動車に乗る事になった。これは一部の王侯貴族のみが使用を許されている、魔術機構の乗り物だ。

 四つの車輪の上に部屋が乗っかっているような形状で、馬車よりもずっと快適で静かだった。

「リーファス城へは、三十分程で到着致します。それまでごゆっくり、おくつろぎ下さいませ」

 魔術自動車を制御する御者、「運転士」ラーサリーが正面を向いたままでそう言った。

「ああ、そうするよ。ありがとう」

 俺はラーサリーの隣の席で、運転席から見える景色を堪能していた。これは実に面白い。ガラスによって守られた室内は、ほぼ視界を遮られる事なく周囲を見渡せる。景色の一部しか見られない馬車とは大違いだ。

「あーあ。私、ティムの隣に座りたかったな。まぁ、ちんちくりんの隣じゃないだけマシだけどね」

「それはこっちのセリフよ、ロリババァ!」

「何ですってぇ! またババァって言ったわね! もう許さないわよ!」

「二人とも落ち着いて下さい。せっかくティム様が車窓からの景色を堪能しておられるのですから」

 キーラ、ダフネ、シュミラの三人は後部座席に詰め込まれていた。通常は二人分の座席らしいが、キーラが小柄なお陰で三人でも大丈夫なようだ。

「子守をさせちまって、すまないなダフネ。しかし、まさかシュミラも招待されていたなんてなぁ。ちょっと意外だったよ」

「ええ、私も陛下よりお話を伺った時は驚きました。ティム様とシュミラ様のご両親が、かの英雄ファース様とソラ様だったとは。陛下はお二人を、良く覚えておいででしたよ」

「ああ。父さんも母さんも、王様に信頼されていたからな。昔一度、俺たちも城へ招待されたんだ。俺が二十歳、シュミラはまだ三歳の頃だ。そういや、あの時はシュミラがお漏らしを」

「ちょっとお兄ちゃん!」

 シュミラが慌てた様子で座席から乗り出し、俺の口を手で塞ぐ。

「ふふっ。本当に仲がよろしいですね。あ、ティム様、外をご覧ください。人々が手を振っています」

 言われて外を見ると、街道沿いに人が集まって手を振ってくれていた。みんな笑顔で、どうやら俺の名前を呼んでいるようだ。

「なんだか、夢を見てるみたいだ」

 俺は街の人々に手を振りながら、そっと独りごちた。

 その後もギャーギャー騒ぐロリっ子と妹の罵り合いを聞き流しつつ、しばらく走り続けた。

 やがてリーファス城の城門に到着。兵士達の敬礼を受けながら、堀にかかる跳ね橋を渡って城門を抜ける。

 美しい中庭を抜け、正門へ。車を降り、召使い達に荷物を渡して控室へ移動。ここでしばらく待機らしい。中々良い部屋だ。椅子とテーブルが複数あり、飲み物や軽食も用意してある。

「やぁダフネ! キーラ! 英雄様と一緒だったんだね」

 控え室には、他にも四人の冒険者がいた。彼らは全員Sクラスの有名人。他の冒険者達は、まだ病院だろう。どうやら上位ランクの冒険者は、傷の回復も早いようだ。

「ああ、シュタイン。君も回復したんだな」と返すダフネ。

 シュタイン・ラーハルト。「鷹の目の狙撃手」の二つ名を持つ弓術士。ダフネよりもさらに長身で、細マッチョだ。茶色の短髪でタレ目。口が大きく、鼻も高い。ハンサムで、いかにも女ったらしと言った顔だ。

 クライス姉妹は彼と三人でパーティーを組んでいる。だがダフネはなんだか冷たい態度だ。

「あらシュタイン。私達を置いて逃げようとしたあんたが、どうしてここに来てる訳?」

 キーラの台詞で俺は理解した。なるほど。シュタインは敵の強さにビビって逃げようとしたのか。二人の冷たい態度も、それなら納得が行く。

「それは誤解だよ、キーラ。僕は距離をとって狙撃しようとしただけさ。あの魔狼は思っていた以上に素早かった。至近距離では狙いが付けにくかったんだ」

 肩をすくめるシュタイン。 

「ふん。それで負けてりゃ世話ないわよ。死なずに済んだのはダフネとティムのお陰。二人に感謝するのね」

 冷たく言い放つキーラに、シュタインは「うっ」と口籠る。

「私のスキル【仲間を守る】が移動出来る範囲は百メートルだ。君はそれ以上に離れていたからな。倒れた君の側から魔狼を引き寄せるだけで精一杯だった。ティム様が来なければ私も姉上も魔狼共に喰われ、その後君達もむさぼり喰われていただろう。もしくは魔人の大火球で、灰になっていたところだ」

 キーラもダフネもシュタインを冷めた目で見つめ、それから俺に熱い視線を送ってきた。シュタインは舌打ちをしつつ、俺に握手を求める。

「やぁ、あなたが噂の英雄、ティムさんですね。初めまして。僕はシュタイン・ラーハルト。僕や仲間達を助けてくださって、ありがとうございます。ですが、ダフネとキーラは僕の彼女です。手を出さないで下さいね」

「はぁ?」

「君は何を言っている」

 異論を唱える美女二人を無視し、シュタインは俺の手をギュッと強く握りしめた。俺のレベルが高いせいか痛くもなんとも無いが、嫉妬と怒りだけは伝わってくる。

「よろしく。キーラとダフネは、君の彼女だったのか。知らなかったよ」

 俺はなるべく穏やかな口調で返した。出来れば事を荒立てたくはない。俺はモラリスト。道徳を重んじる男だ。きっと神様も、俺の日頃の善行を見ている筈だ。

 そのまま無言で俺を見つめ、威嚇してくるシュタイン。その様子を見ていたシュミラは「何なのこの人」と小声で囁いた。俺も同感である。

「騙されないでティム! ちょっと! 私がいつ、あんたの彼女になったっつーのよ!」

 ピンクのツインテールを揺らしつつ、キーラがツカツカとシュタインに詰め寄る。

「いや、毎日のようにデートしてるじゃないか」

「あれは、あんたを荷物持ちに使ってるだけよ!」

「ふふっ、まぁそう照れないでよ」

 そう言ってキーラを抱き寄せるシュタイン。彼女にキスをしようと迫る。本当に恋人同士なのだろうか。

 なんだろう、凄く嫌な気分だ。だが間に割って入るべきか、分からない。ただ戯れあっているようにも見える。それに俺は、キーラの恋人じゃない。

「シュタイン。姉上が嫌がっているだろう。その辺にしておけ」

「なんだいダフネ、ヤキモチ? しょうがないなぁ、君にもキスしてあげるよ。なんならその大きなおっぱいも、じっくり揉みしだいてあげる」

 グイッとダフネの腰も引き寄せるシュタイン。下品な奴だ。キーラもダフネも、本当にこんな奴と恋人同士なのだろうか。

 ぐあああ! モヤモヤする!

「ほら、早く揉ませてよ」

「やめろ! 放せ!」

 体を捻って抵抗するダフネ。重そうな両胸が、ゆさゆさと揺れる。何というおっぱい! じゃなくて! ダフネは明らかに嫌がっている! キーラも顔を背けている! これはもう迷うべきじゃない!

「ねぇ、お兄ちゃん! この人多分、言っても無駄!」

 シュミラの直感は鋭い。ならば、ちょいと良心は痛むが実力行使だ!

「許せシュタイン! せいっ!」

「ふがっ!」

 俺は目に見えない程のスピードで、シュタインの鼻っ柱に拳を打ち込み、そのまま素早く引いた。

 奴の鼻からは血が吹き出し、鼻はひしゃげて潰れた。きっと骨が折れたんだろう。中々の二枚目だったが、もはや見る影もない。

 かなり軽くパンチしたつもりだったが、思った以上にダメージを食らわせちまったようだ。まぁ、美女を苦しめた罰だ。きっと神様も許してくれるだろう。

「ティム!」

「ティム様!」

 キーラとダフネはシュタインを振り払い、俺に駆け寄る。俺はすかさず二人を抱きしめた。彼女達の体や髪から、良い香りがホワンと漂い、鼻腔をくすぐった。

「鼻が! 僕の鼻がぁぁぁ!」

 シュタインは鼻を両手で押さえつつ、俺をギロリと睨んだ。

「てめぇ! 覚えてろよ!」

 捨て台詞を吐きながら、少し離れた所で談笑している三人の冒険者の所へと戻っていく。

「助けてくれてありがとう、ティム♡」

 キーラがジャンプして俺の首に両腕をまわし、ほっぺたにキスをする。

「あー! ちょっと何すんのよキーラちゃん!」

 叫ぶ妹。

「別にいいじゃない。減るもんじゃなし。シュミラだけ独り占めなんてずるいわ」

「やだ! シュミラのお兄ちゃんだもん!」

 ロリっ子と妹のバトルが再び勃発する中、ダフネが胸をギュッと寄せつつ、もじもじと俺に擦り寄ってくる。

「ティム様、そ、その、私の胸、もしよかったら好きなだけ揉んでくださって構いませんよ。私は、ティム様になら、全てを捧げられます!」

 そう言って両胸を鷲掴みにし、突き出してくるダフネ。

「い、いやいや、大丈夫! もっと自分を大事にしろダフネ!」

「ちょっとダフネちゃん! ハレンチ!」

 更に叫ぶ妹。

「いえ、ティム様が私の胸を見つめているのは気づいていました! さぁどうぞ! 好きなだけ揉みしだいてください!」

「本当なのお兄ちゃん! ド変態! バカ!」

 ビンタしてくる妹。

「大きいおっぱいよりも、小さいおっぱいの方がいいのよ!」

 抱きついてくるキーラ。

「ダメェ! お兄ちゃんは私のおっぱいを揉むんだから!」

 なんだか話がおかしな方向に。

 いっそ正直に言おうか。俺はおっぱいが大好きだと。誰かを贔屓になんか出来ない。みんなのおっぱいを平等に揉ませてくれと!

 だめだ。そんな事したら、絶対シュミラに変態の烙印を押される。

「みんな、一旦落ち着いてくれ。揉む、揉まないは非常にデリケートで重要な話だ。祝賀会が終わってから、じっくり話し合おう。な?」

「仕方ないわね。んじゃ、夜にまた話しましょ。勝者がそのままベッドインってのはどう?」

「ベッドインとは、添い寝の事ですね? わかりました。いいでしょう。負けませんよ」

「シュミラも負けない! 絶対お兄ちゃんにおっぱい揉んでもらって、一緒に寝るんだから!」

 なんだか、更に話がおかしくなってるぞ。まぁ、いっか。きっと夜までには忘れてくれるだろう。



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