27 / 42
第27話 疫病消滅。
しおりを挟むオレは華麗に着地すると、崩れ落ちる灰を球体に閉じ込め、消滅させた。
さて、あとはみんなの治療だ。まぁ今のオレにとっては、造作もない事。
両手を広げ、天を見上げる。オレの体から光が放たれ、周囲の不浄なものが消滅して行く。そして傷を負った者、全てが癒されるだろう。
皆がゆっくりと目覚め始める。オレは白金に駆け寄った。
「白金! わしじゃ! 輝夜じゃ!」
倒れている白金の頭を膝に乗せ、髪を撫でる。白金はゆっくりと目を開け、オレを見て微笑んだ。
「おお、銀杏。俺たちキスの途中だったよな? あれ、なんでこんな......そういや俺、血ぃ吐かなかったか? んー、思い出せねぇ。おっ、銀杏、覚醒したのか? 色っぽいぜ」
オレは白金のほっぺたを、照れ隠しにペチンと叩いた。でもそんな軽口を聞けるようになって、嬉しい。
「照れるなよ。まぁそんな所も可愛いけどな」
「色っぽいとか言うから......。それより人の話を聞いとるのかお主は。わしは輝夜じゃと、そう申したのじゃぞ。わしの前世の名じゃ。聞き覚えはないかの? ちなみにそなたは、大和と言う名だったのじゃ。そ、そのう、わしらは、その時から、愛しあっていたのじゃ。何度も二人で夜を明かし、愛を語り合ったのじゃ......」
オレは潤んだ目で白金を見つめた。
「輝夜? 確か紅蓮様の亡くなった妹君がそんな名だったはずだぜ。何百年も昔の話らしいけどな。んじゃ俺がその大和って奴で、おまえが輝夜で、恋人同士だったと。そう言うこったな」
「そうじゃ。思い出したかの?」
「うーん、悪りぃ、思い出せねぇ。もちろん前世の記憶は夢で見るし、そのおかげでお前との接点も出来た。だけど俺は俺だし、俺にとっちゃお前は銀杏だ。それ以外の何者でもねぇさ」
そう言って歯を見せて笑う白金。
「そうか......ではあの熱い夜を覚えておるのはわしだけか。残念じゃのう」
少し寂しくなって、落ち込むオレ。白金が突然ガバッと起き上がり、座ったままオレを抱きしめる。
「馬鹿。確かに俺は前世の事なんて覚えてねぇ。だけど思い出はこれから二人で作ればいいじゃねぇか!そうだろ? だって俺は、誰よりもお前を、銀杏を愛してる。やっと思いが通じたんだ。絶対に離さねぇ。どんな事があっても、命がけでお前を守ってみせる。それじゃ駄目か?」
「駄目じゃないぞよ。嬉しい。わしも、同じ気持ちじゃ白金。わしは銀杏。そなたを愛する、一人の女じゃ」
見つめ合うオレたち。唇が重なり合う。
「あー!銀杏おねぇちゃんたち、またキスしてる!」
ドラザエモンの声に、素早く離れるオレたち。
「全く、油断も隙もあったもんじゃないわ! 銀杏様! 私だって、白金様と接吻したいのに!独り占めは駄目ですよ!」
「うう、すまぬ、累火」
謝るべきかどうかの判断が追いつかず、とりあえず謝るオレ。ん?てか累火は恋のライバルな訳だけど、「恋愛成就」の能力の対象にはならないんだろうか......力が働かない。
と言うより、もうすっかり力は消え失せていた。きっと白金が元気になったし、オレを愛してくれている事がわかったから、自動的に解除されたんだろう。
と、同時に、前世の記憶も消えて行く。ああ、もう少し覚えていたかったなぁ。
「まぁ何にせよ、緑爪を退治出来たようで良かったですね。一度全員倒れてしまったようですが......銀杏様が解決してくださったのでしょう?」
さすが亜水。状況判断に長けている。
「うむ、その通りじゃ。皆もっと感謝するが良い。特に累火。白金はわしのものじゃ。手を出すでないぞ」
「むー! それとこれとは別です! 銀杏様の事は尊敬してますけど、白金様を好きな気持ちに、嘘はつけません!」
くっ、結構手強いなこやつ。
「まぁまぁ累火。白金と銀杏様は両想いのようだし、邪魔するべきじゃないんじゃないか?」
憤る累火を、そっとたしなめる木蓮。
「お兄ちゃんだって、銀杏様の事が好きなんでしょ! だったら負けずにアタックしたらいいじゃないの!そうしたら私も白金様と一緒になれて、ハッピーよ!」
何故か英語を多用する累火。どこで覚えたんだ?
木蓮は真っ赤な顔をしてオレを見る。何度もチラ見する。
「い、いや、オレはいいんだ。銀杏様のお気持ちがはっきりとわかっただけで、充分満足だよ。俺の事、もしかしたら好きになってくれるかも知れないって思ってたけど、もう脈はないみたいだし、いいんだ! ぜんっぜん、未練はないんだ!」
いや、絶対あるでしょそれ。なんかごめんね木蓮。オレがふわふわした態度とっちゃったから。でも初めて抱きしめられた時、キュンとしちゃったのは確かだよ。
でもオレは、それでもやっぱり白金が好きだ。この気持ち、絶対譲れない。例えば相手が累火でも、負ける訳にはいかないんだ!
オレは木蓮を励ます累火を見つめた。累火もオレの視線に気がつき、お互いの視線がぶつかり合う。ばちばちと火花が散っているような錯覚すら覚える。
「あらあら。白金様も大変ねぇ。まぁ、色男の宿命だと思って諦めなさいな。ほらみんな、帰るわよ。そろそろ夜が明けるわ。朝食の準備をしなくっちゃね」
「僕も手伝うよ! お母さん!」
帰宅の準備を始める葉月に、日凛が抱きつく。
「んじゃオレも手伝う!」
ドラザエモンも葉月に抱きつく。
「ドラはいいよ! だってお母さんにいたずらするだろ!」
「しねぇって! ちゃんと手伝うからさ!」
「ほらほら、喧嘩しないの。行くわよ」
「はーい!」
二人の声が元気に合わさる。亜水も二人の頭を撫でながら、葉月に続く。
「俺たちも行こう、累火」
「うん、お兄ちゃん」
そう言って歩き始める兄妹。累火が何か言いたそうにしていたが、木蓮に肩を叩かれて、そのまま去っていった。
「オレたちも行こうか、銀杏」
「うむ。じゃが、出来れば二人っきりになりたいのう」
立ち上がる白金に、オレは甘えるように抱きついた。
「俺も同じ事を考えてた。朝飯、食わなくても平気か?」
「平気じゃ。もし腹が減ったら、その時はわしが作る」
「おっ、いいねぇ。お前の手料理、食べてみたいと思ってたんだ」
「まぁ、得意ではないがのう。術を使えばなんとかなるじゃろ」
「おいおい、そりゃ反則だろ。まぁいいけどよ。さ、行こうぜ」
そう言ってスタスタと歩き出す白金。オレはテテテッと小走りしてついて行く。
「のう、抱っこ、抱っこしてほしいぞよ!」
「はははっ! ったくしょうがねぇお姫様だ!」
白金は笑いながら、オレをお姫様抱っこしてくれた。
「やっぱ軽いなぁ、銀杏は」
「あはは。のう、さっきの続き......」
オレが恥ずかしさをこらえて言うと、白金がニヤリとする。
「なんだよ、我慢できねぇのか?」
「うむ。出来ぬ」
白金はオレを抱っこしたまま、キスしてくれた。とても濃厚で、甘いキスだった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!
世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。
美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。
忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。
そこでひどい仕打ちを受けることになる。
しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。
魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。
彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。
感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。
深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。
一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。
さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。
彼らはどん底へと沈んでいく……。
フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》
魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます
こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。
こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる