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奴隷から聖女へ。
第22話【最終話】魔の森最北の地へ。
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奴隷商人達を壊滅させた私達は、無事に王都へ到着。【聖王】カインド・ファレス様に謁見し、私は聖女、ネリスは勇者に任命される事が出来た。
「君たちはどうやら、複雑な事情を抱えているようだね。特に聖女アリエッタ。だが多くは問うまい。君は君の成すべき事を果たすがいい」
【聖王】カインド・ファレス様は、そう言って私を送り出してくれた。
「行こう、アリエッタ。魔王国シェダールの奴隷達を解放するんだ!」
「うん!」
私、ネリス、ルーフェンの三人は、再び馬車でシェダールを目指す。馬車の御者はアムレアだ。シーラは王都で別れる事になった。彼女はこの町で、医師を務めると言う目的があったらしい。
私は当初、シーラの正体はシエラだと思っていた。だが違った。彼女の姿と名前は嘘偽りなく、シーラだった。
だがその代わりに、ルーフェンは嘘をついていた。
「あなたがシエラだったなんてね、ルーフェン」
馬車に揺られながら、私は目の前の少女に微笑んだ。ルーフェンの姿は、与えられた仮の姿だった。今の姿は魔王城にいた時と変わらない、私と同い年の可憐な少女。奴隷商との戦いで見せた特異な能力は生まれつき。だが、ずっと隠していたのだそうだ。
「本当にごめん、アリエッタ。ガルフェイン様に、固く口止めされていたから」
シエラの口調は魔王城にいた時と違い、かなり砕けたものになっていた。ルーフェンとして一緒にいた事が影響しているのだろう。
「その魔勇者ガルフェイン様が、姉さんを魔王城から逃してくれたんだよね。でも、どうして逃してくれたんだろう」
ネリスの質問に、一瞬答えを詰まらせるシエラ。
「これをあなたに渡せと、ガルフェイン様はそう言っていたわ」
シエラはそう言って、懐から鍵を出した。見事な装飾が施されている美しい鍵だ。
「これは......?」
私は鍵を受け取り、シエラを見つめる。
「混沌の神ケイオス。今回の一連の事件は、全てそのケイオスの仕業よ。伝説の怪物の出現、そして伝説の精霊機構。それらを甦らせ、邪な心を持つもの達に使わせ、この世界を混沌に落とし入れようとした。魔女ファリアンヌの反乱の裏にも、ケイオスがいるわ。そしてこの鍵は、ケイオスを封じる為の墓所へ通じる鍵。その場所で、聖王様より授かった聖女の錫杖を使うの。そうすれば、ケイオスを封印出来る」
シエラは真剣な顔で、私を見つめ返した。そしてほろほろと涙をこぼす。
「ガルフェイン様は、私を逃す為に犠牲になったの。ケイオスに見つかった時に、庇ってくれた......きっともう、殺されてしまったわ。だから何としても、ケイオスは封印しなきゃ」
「そうだったの......わかったわ。そのケイオスの墓所の場所はわかるの?」
「ええ、知っているわ。魔の森の奥深く、最北の地に墓所はあるわ」
「そう。なら、そこに向かいましょう。アムレア、頼める?」
「へい! ガッテン承知!」
アムレアは元気よく、馬に鞭を入れる。
「アリエッタ、姉さん。二人の事は、僕が絶対に守ってみせるからね」
「うん。頼りにしてるよ、私の旦那様♡」
「ありがとう、私の愛する弟♡」
私とシエラは、両側からネリスに抱きつく。ネリスは照れ臭そうにしながら、私達を抱きしめたのだった。
「君たちはどうやら、複雑な事情を抱えているようだね。特に聖女アリエッタ。だが多くは問うまい。君は君の成すべき事を果たすがいい」
【聖王】カインド・ファレス様は、そう言って私を送り出してくれた。
「行こう、アリエッタ。魔王国シェダールの奴隷達を解放するんだ!」
「うん!」
私、ネリス、ルーフェンの三人は、再び馬車でシェダールを目指す。馬車の御者はアムレアだ。シーラは王都で別れる事になった。彼女はこの町で、医師を務めると言う目的があったらしい。
私は当初、シーラの正体はシエラだと思っていた。だが違った。彼女の姿と名前は嘘偽りなく、シーラだった。
だがその代わりに、ルーフェンは嘘をついていた。
「あなたがシエラだったなんてね、ルーフェン」
馬車に揺られながら、私は目の前の少女に微笑んだ。ルーフェンの姿は、与えられた仮の姿だった。今の姿は魔王城にいた時と変わらない、私と同い年の可憐な少女。奴隷商との戦いで見せた特異な能力は生まれつき。だが、ずっと隠していたのだそうだ。
「本当にごめん、アリエッタ。ガルフェイン様に、固く口止めされていたから」
シエラの口調は魔王城にいた時と違い、かなり砕けたものになっていた。ルーフェンとして一緒にいた事が影響しているのだろう。
「その魔勇者ガルフェイン様が、姉さんを魔王城から逃してくれたんだよね。でも、どうして逃してくれたんだろう」
ネリスの質問に、一瞬答えを詰まらせるシエラ。
「これをあなたに渡せと、ガルフェイン様はそう言っていたわ」
シエラはそう言って、懐から鍵を出した。見事な装飾が施されている美しい鍵だ。
「これは......?」
私は鍵を受け取り、シエラを見つめる。
「混沌の神ケイオス。今回の一連の事件は、全てそのケイオスの仕業よ。伝説の怪物の出現、そして伝説の精霊機構。それらを甦らせ、邪な心を持つもの達に使わせ、この世界を混沌に落とし入れようとした。魔女ファリアンヌの反乱の裏にも、ケイオスがいるわ。そしてこの鍵は、ケイオスを封じる為の墓所へ通じる鍵。その場所で、聖王様より授かった聖女の錫杖を使うの。そうすれば、ケイオスを封印出来る」
シエラは真剣な顔で、私を見つめ返した。そしてほろほろと涙をこぼす。
「ガルフェイン様は、私を逃す為に犠牲になったの。ケイオスに見つかった時に、庇ってくれた......きっともう、殺されてしまったわ。だから何としても、ケイオスは封印しなきゃ」
「そうだったの......わかったわ。そのケイオスの墓所の場所はわかるの?」
「ええ、知っているわ。魔の森の奥深く、最北の地に墓所はあるわ」
「そう。なら、そこに向かいましょう。アムレア、頼める?」
「へい! ガッテン承知!」
アムレアは元気よく、馬に鞭を入れる。
「アリエッタ、姉さん。二人の事は、僕が絶対に守ってみせるからね」
「うん。頼りにしてるよ、私の旦那様♡」
「ありがとう、私の愛する弟♡」
私とシエラは、両側からネリスに抱きつく。ネリスは照れ臭そうにしながら、私達を抱きしめたのだった。
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