【完結】魔王、奴隷、聖女。それが私の経歴です。〜追放されし奴隷魔王は聖女となり、勇者を育て復讐する〜

アキ・スマイリー

文字の大きさ
上 下
14 / 23
奴隷から聖女へ。

第13話 魔怪騎士団。

しおりを挟む
「ブヒィー! アリエッタ貴様ぁ! ブヒ殺す!」

 パンデリンの体から、無数の触手が伸びて私を捕らえる。触手は一本一本が蛇のように蠢き、私の手足の自由を奪い、首や体を締め付ける。

「何これ、気持ち悪っ!」

「ブヒブヒ、このまま骨を砕いて柔らかくしてから食ってやる!」

 パンデリンは口の端から流れ落ちた唾液を手首で拭い、ブヒヒッと笑う。

「アリエッタ!」

 ネリスが女体化変身し、拳に炎をまとわせる。

「おおっと! 手を出すなよネリス。この女の骨を砕くのが、少し早まるぞ。ブヒィ!」

「くっ......」

 ネリスは悔しそうに歯を食いしばる。

「ブヒッ! いまだぁー!」

 パンデリンの体から、さらに無数の触手が伸びる。それはネリスの豊満かつ引き締まった女体を捕らえ、がんじがらめにする。

「くぅぅっ!」

 身悶えするネリス。ちょっとセクシーだ。

「ブヒヒ! ネリス! 貴様さえ封じてしまえばこちらのものよ! もはや私に敵はおらんわ! さぁて、ゆっくり味わって食ってやろう!」

 触手達は意思を持ったように蠢き、私とネリスの服の中まで侵入を始めた。これはちょっとまずいかも知れない。少しだけ急ぐとしょう。

「ねぇパンデリン。どうだった、監獄での下級奴隷としての仕事は。楽しかった?」

 私の質問に、パンデリンのこめかみに青筋が浮かび上がる。

「楽しい訳があるか! 看守共め、私がこれまで目をかけてやった事も忘れて私をこき使いおって! おまけに侮辱も受けた! 罰も受けた! 新しい看守長も、私を見下していた! 仕事を失敗するたびに殴られ、魔獣に食わせると脅された! ふざけおって! 貴様らをブヒ殺したら、あの監獄の連中も皆殺しだ! ブヒー!」

 ワナワナと震えるパンデリン。ロークが新たに制定した奴隷使用に関する規約は、奴隷に人権を保護するものだが......パンデリンだけは除外する様に指示しておいたのだ。

「そう、それは良かった。それが今まであなたがやってきた事。思い知ったでしょう?」

 私はパンデリンを嘲笑するような口調でそう言った。パンデリンは目を血走らせ、触手を波打たせる。

「やかましいブヒ! 食う! 喰い殺す!」

「無駄よ!」

 私は絡みつく触手を、勢いよく手足を伸ばす事で引きちぎり、首やその他色々な場所に這いずり回る触手達も、素早くちぎって捨てた。

「ネリス!」

「ああ!」

 ネリスも私の無事を確認し、自分の体に絡みつく触手を引きちぎる。

「ブヒィ! ば、馬鹿な! アリエッタ! 貴様のどこにそんな力が......」

 うろたえるパンデリンに、私はもう一度指を差す。

「魔王を侮るな。私は魔術が無ければ何も出来ぬ訳ではないのだ。隷属の首輪による拘束も消えた以上、私は世界最強。武術も魔術も剣術も、私の右に出る者はおらぬ。ネリスは私が同等に育てるつもりだがな。さて、もういいか? 貴様の豚面にももう飽きたぞ」

「魔王だと!? 笑わせるな! 魔王はこの世にただ一人、ファリエッダ・シェダール様のみ! 貴様などではないわ! ブヒブヒ!」

 怒りをあらわに叫ぶパンデリン。どうやら本気で言っているようだ。オークラルド大監獄で私が魔王であると宣言した事を、すっかり忘れている。

 だが、いくらパンデリンが低脳でも、それは奇妙な事だった。何者かが彼に魔術、もしくは何らかの「加護」能力を使い、記憶の書き換えと姿の変貌を成したのだ。

「ブヒッ! 魔王を騙る不届き者め! 魔王様の直属の部下【魔怪騎士団】の一員であるこの私が、成敗してくれるわ!」

 パンデリンは再び全身から触手を生やし、ビュワーッと伸ばしてくる。

「アリエッタ、危ない! ヘル・バーニング!」

 ネリスが私の前に躍り出て、燃える手足で触手を消し炭へと変えて行く。私一人でも対処可能だが、恋人に守られるのは嬉しいものだ。

「ありがとうネリス。今、そいつ殺すわ」

 私は一瞬、周囲の状況を確認する。現在地である「魔の森の手前の街道」は無人で、周囲には建築物も無い。ワールの乗った馬車もだいぶ遠くまで逃げた。

 魔術の使用に問題は無さそうだ。

「バラギウス・アスモダイ! 砕け散れ!」

 魔術「粉砕の呪文」を放つ。

「ふごぉっ! アリエッ、ダァー!」

 パンデリンの体は内部から一瞬で膨れ上がり、爆裂した。粉砕された肉片や血液は空中で消滅し、わずかに赤い霧を残す。

「やったね、アリエッタ!」

 胸を揺らしながら駆け寄ってくるネリス。本当に羨ましいくらいの曲線美だ。

「うん! ネリスのおかげだよ。ありがとう」

 私達は抱き合い、キスをする。

「馬車、行っちゃったね」

 ひとしきりキスを楽しんだ後、ネリスは馬車の逃げだった方向を見つめて目を細める。

「そうだね......だけど幸いな事に、荷物は全部私の【異空間収納】に仕舞ってある。それに魔の森はもうすぐ。このまま歩いて行きましょう。元々その予定だったしね」

「そうだね。魔の森の中は魔獣でいっぱいだ。人間には危険すぎる。まぁ、半魔人である僕達にとっても、それは同じ事だけど」

 ネリスはそう言って微笑む。危険すぎるとは言いつつも、全く恐れてはいない。元々勇敢ではあったけど、素晴らしい成長ぶりだ。

「あなたがいれば、どこだろうと平気だよ。さぁ行こう、ネリス!」

「うん!」

 私達は魔の森に向かって走り出した。パンデリンの裏にいる存在が気にはなるが、今は考えるだけ無駄だろう。おそらくそいつは、私とネリスを狙っている。ならばいずれ答えは見えてくる筈だ。

 まずは「力」を手に入れる。聖女と勇者の力。全てはそれからだ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~

秋鷺 照
ファンタジー
 強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...