【完結】魔王、奴隷、聖女。それが私の経歴です。〜追放されし奴隷魔王は聖女となり、勇者を育て復讐する〜

アキ・スマイリー

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魔王から奴隷へ。

第3話 オークラルド大監獄。

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 目を覚ますと、そこは牢獄の中のようだった。ガバッと上半身を起こして周囲を見る。出入り口は一枚の鉄扉。小さな引き戸が付いている。

 天井には丸い穴がいくつか空いていて、上からぼんやりとした薄明かりが漏れて部屋を照らしている。そんな暗く寒い部屋に、私を含めて四人もの奴隷が閉じ込められている。

 全員が隷従の首輪と、シンプルな黒い上下の服を身につけている。それは下級奴隷である証だった。

「気がついたんだね。良かった。僕はネリス。年は十七歳。こっちの二人は僕と同い年で、二人共女の子だよ。ミルダとフォリー。宜しくね」

 優しい目をした黒髪の少年が、私が起き上がるのを見てそう言った。

「ちょっとネリス。性別の説明、必要かな。どう見たって私とフォリーは女の子でしょ?」

 ミルダと呼ばれた少女が、笑いながらネリスに詰め寄る。

「薄暗いし、みんな同じ服だからわからないかも知れないと思って。それにほら、ミルダは男勝りだし」

「何ですって!」

「ちょっと二人とも、やめなさいよ。新人さんがびっくりしているわ」

 ネリスの返答にミルダが冗談っぽく殴りかかり、フォリーがそれを仲裁する。

 こんなやりとりを見るのは、なんだか久しぶりだった。私は思わず吹き出し、それから声を上げて笑った。

「あはは、面白かった? 君、名前はなんていうの?」

 ネリスが私の隣に座り、壁に寄り掛かった。

 名前、か。ファリエッダという名前は魔王として、おそらく知れ渡っているだろう。

 別の名前......少し文字って、アリエッタにしよう。

「アリエッタだよ。十八歳。よろしくね、みんな」

「アリエッタ。いい名前だね」

「うん! 素敵な名前!」

「ええ、女の子らしくて......まるで聖女様みたいね」

 どうやら気にってもらえたらしい。聖女、か。私は魔王なんかじゃなく、出来れば聖女になりたかった。

 傲慢で強欲、自己中心的な魔人という種族の中に生まれながら、とても思いやりがあって優しかった母。母は私が幼かった頃、人間の国「リーファス聖王国」の話を教えてくれた。

 私達がいる「魔王国シェダール」と対になる国。聖王が治め、聖女と勇者によって守られている。

「みんな、リーファスから来たの?」

 私はみんなの生い立ちが気になって、そう尋ねてみた。

「私とミルダは、シェダールの奴隷村【オルクソール】で生まれ、育ったの。でもネリスは、リーファスに住んでいたそうよ。聖女様の伝説の事は、ネリスに聞いたの」

 フォリーの説明に、ネリスが頷く。

「うん。僕は姉さんと一緒に、リーファスにある農村【コロンドル】に住んでいた。だけど両親が貧しくて。ある日やって来た奴隷商人に、一万レンで僕と姉さんを売ったんだよ。酷い話だよね」

 ネリスは少し笑いながら冗談っぽくそう言った。なんだか聞いた事があるような話だ。ネリス、という名前にも覚えがある。

「ねぇネリス。あなたのお姉さん、名前はなんて言うの?」

「名前? 名前は、シエラだよ。どうかした?」

 やっぱりそうだった! ネリスはシエラの弟だったんだ! シエラが会いたがっていた、弟だ!

 私は思わず、ネリスを抱きしめた。そして一気に感情が溢れ出し、泣いた。
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