35 / 35
第34話【最終話】戦いの予感。
しおりを挟む
ヴァンパイアの王国カミラ・キュラスとの同盟は無事締結された。ドノナストとの共存体制が開始されて一年。
今のところ、表立った問題は起きていないようだ。女王であるノヴァは、毎晩のようにストーリア城を訪れて近況報告をしてくれる。そして俺の妻達と共に、甘い夜を過ごして帰って行くのが通例になっていた。
寝室からの去り際、彼女は名残惜しそうに俺を振り返る。
「ダーザイン様、そろそろ私にも子供を授けてくださいませんか」
悪戯っぽく笑うノヴァ。
「別に俺は構わないが、そうすると君は俺の妻とならねばならない。カミラ・キュラスはドノナストの従属国になってしまうぞ。対等ではなくなるがいいのか?」
「もちろん、構いませんわ!」
ノヴァはそう言って、俺の胸に飛び込んで来た。これで俺には七人目の妻が出来る事になる。
正直、俺はノヴァを愛していた。彼女に俺を愛させたのは、当初は屈服させる為の手段に過ぎなかったのは確かだ。
だが彼女と触れ合う内に、俺は恋に落ちたようだった。
漆黒に輝く、長く美しい髪。妖しさ内に秘めた切長の目。黒い瞳は夜の闇のようだ。そこに感じるのは不安や恐怖ではなく、安らぎと安堵。
白い肌とは対照的な、赤い唇。鋭い牙が見え隠れするその薄い唇は、甘い快感とスリルを同時に味あわせてくれる。
夢の中で出会った時は、長身の女性だった。だが現実の彼女は小柄で、容姿もまるで十代の少女。愛らしさと妖艶さを併せ持つ美少女だった。そのくせスタイルは抜群にいい。素晴らしい曲線美の持ち主だった。
もう何度目か分からない愛の契りを交わした俺とノヴァ、そして妻達。昼頃になってようやくノヴァは帰って行った。ノーティアスとフェイト、ルインダネスも自分達が治める町へと帰って行く。
「カミラ・キュラスがドノナストの属国になると言うことは、法律の改正やら何やらの仕事が増えるな。ナディア、手配を頼めるか」
「お任せ下さい、陛下」
執務室。脇に控えているのは母さん、ナディア、エステルの三人だ。
「冒険者ギルドも新たに作るか。ヴァンパイア達にもギルド組織の仕組みはあるが、基本的に彼らは貴族社会。人族を奴隷として虐げる事で成り立って来た社会だ。まだまだ仕事をする事には不慣れだろう。エステル、フェイトと一緒にノヴァを手助けしてやってくれないか」
「うん、任せて!」
エステルは親指を立ててニカッと笑う。
ナディアとエステルは任務遂行に燃え、颯爽と執務室を去って行く。
「あら! 二人っきりになったわね、ダー君」
「本当だね、シェファ」
俺は机から立ち上がり、そばに立っていた母さんと抱き合う。
「本当にいつもありがとう、シェファ。君がいるから、俺はここまでやってこれた。何度も俺の命を救ってくれた。感謝しかないよ」
「私がダー君を守るのは当然の事だわ。だって母親だもの。愛する息子は命に代えても守るのが母親の務めでしょう? だけど嬉しいわダー君。それを素直に感謝出来る子になってくれて。本当に、立派になって......」
母さんは大粒の涙を両目から溢れさせた。
「全部シェファのおかげだよ。あなたのお陰で、ここまで成長出来た。ありがとう母さん。愛してる」
俺は母さんの涙を指ですくい、キスを交わす。やがて俺たちはソファに倒れ込み、お互いの愛を確かめ合った。
「あの時......オーク達がエルフの村を焼き討ちすると言った時。エルフ達を救う選択をしなかったらどうなっていたんだろう。きっと今のようにはならなかった。エルフの村は滅び、魔術大戦も魔族の勝利で終わっていた筈だ。平和なんてずっと訪れはしなかっただろう。俺は罪の意識を抱いたまま、母さんと一緒に何処かに隠れ住んでいたも知れない」
「そうね......だけどあなたは正しい決断をした。立派よ、ダー君。お母さん、とっても誇らしいわ」
「ありがとう。選択を間違えなくてよかったよ。今は本当に幸せだ。少し平和すぎるくらいだけどね。まぁ......ちょっと問題が起こるくらいの方が、メリハリがあっていいんだけど」
「ふふっ。良いのかしらそんな事言って。手に負えないくらいの問題が起こっちゃうかもよ?」
悪戯っぽく笑う母さん。
「大丈夫さ。その時は俺が解決してみせる。君は俺が守るよ、シェファ」
「頼りにしてるわ、旦那様」
微笑む母さんに俺は深く口付けし、再び愛を交わした。
数時間後。執務机で書類を書いていると、フェイトとノーティアス、そしてルインダネスが「空間転移」の魔術で姿を現す。ちなみに母さんは、ソファで気持ち良さそうに眠っている。
「大変じゃ兄上!」
「血相変えてどうしたんだフェイト。いつも冷静なお前らしくないじゃないか」
フェイトの顔はいつになく真っ青で、それはノーティアスとルインダネスも同様だった。
「大陸に七つある【大罪の迷宮】のうちの一つ、我が国で管理している【色欲(ラスト)】の迷宮が崩壊した!」
「なんだと!?」
フェイトの報告に、俺は寒気を覚えた。
「中から続々とモンスター共が溢れ出して来ておる! 今は迷宮がある森の中に結界を張り抑え込んでおるが、突破されるのは時間の問題じゃ! 早急に手を打たねばならぬぞ兄上!」
「わかった! 行こう!」
俺は頷き、素早く立ち上がった。
「それだけじゃねぇぜダーザイン! ドノナストの玄関口とも言える俺の町、グローリアにもモンスターが溢れかえってやがるんだ! もちろんレベルは1まで下げてやったが、どういう訳か奴らの進行は止まらねぇ! 騎士団と兵団、冒険者達で食い止めてるが、このストーリアにやってくるのも時間の問題だぜ!」
叫ぶルインダネス。彼女もいつになく焦燥に駆られているようだ。
「そっちもか......! まずいな」
予想以上にヤバい状況のようだ。こうしてはいられない。
「グローリアだけじゃないよ、お兄ちゃん! 僕の町ラグディアにもモンスター達が溢れているし、フェイトの治めるファナキアにもモンスターの大群が現れたんだ! どうやらケイオス教団と名乗る連中が街に潜んでいて、このタイミングで同時多発的に決起して、モンスターを召喚しているみたいなんだ!」
ノーティスは涙目だった。比較的楽観的な彼女だが、今回はそうもいかないようだ。ケイオス教団......! 混沌神ケイオスを信奉する連中か!
「よし、ではまず俺はラグディアに向かう! 状況は最悪だが、順次解決して行くから安心してくれ! みんなは各自、自分の町の安全確保! 俺が行くまで持ち堪えてくれ! ダンジョンはとりあえず後回し! 三つの町を守りきってから向かう!」
「了解じゃ!」
「おう!」
「うん!」
三人が転移の魔術で消えた後、振りかえると目覚めた母さんと目が合った。
「あらあら、不安が的中しちゃったわね」
母さんは困ったような微笑を浮かべた。話は聞いていたらしい。
「そうだね。だけど大丈夫。俺がいる。誰一人傷つけさせやしない! それに心強い味方もいるからね。行こう、シェファ!」
「ええ!」
俺は母さんを抱き寄せ、口付けをしながら「転移の言葉」を唱えた。
「俺とシェファはラグディアに転移する」
呪文や術式は必要ない。俺の言葉は現実になる。
ラグディアは喧騒に包まれていた。ゴブリンやトロール、コボルドなどのモンスターに加え、かつては魔族だったオークとオーガも暴れているようだ。おそらく彼らは戦いに敗れた事で、魔族からモンスターへと落ちぶれてしまったのだろう。
人々を非難させていた騎士団の一人が、こちらを見て歓喜の声を上げる。
「ダーザイン様が来てくださったぞ! シェファール様も一緒だ!」
「おおおー!」
「ダーザイン様!」
逃げるのも忘れて、喝采を送る人々。俺はそれに笑顔で応え、右拳を掲げた。
「この街に仇なす者どもよ! 動きを止めよ!」
ピタリと動きを止めるモンスター達。だがその中でたった一人、ゆっくりとこちらに飛翔してくる者がいた。
全身真っ黒で、歪んだ角と蝙蝠のような翼を持ったモンスター。言うなれば悪魔だ。
「俺の言葉に耳を傾けてはくれないのだな。君は一体何者だ?」
俺の問いかけに、悪魔はニヤリと顔を歪ませる。
「お初にお目にかかります、ダーザイン陛下。私はケイオス教団司教、クルトニウス。ケイオス様の意向に逆らうあなたとあなたの所有物全てを、滅ぼす為に参りました」
そう言って粛々と頭を下げるクルトニウス。どうやら簡単には行かなそうな相手だ。
「なるほどな。なら君は生かして帰してやる。だからご主人様にこう伝えろ。俺を滅ぼしたいなら自分で直接来い、とな」
「貴様......!」
クルトニウスは俺の言葉に怒りを感じたようだ。凄まじい形相で俺を睨む。
「なんと無礼な! 神であるケイオス様が、たかがエルフ如きの前に姿を現す訳がなかろう! 驕り高ぶるな、汚らわしい!」
禍々しいオーラを身にまとい、戦闘態勢に入るクルトニウス。
「シェファ、こいつに俺の【フィクサー】の力、【言霊】は通じないようだ。俺に力を貸してくれるかい」
「ええ、もちろん。あなたの剣となり、盾となるわ、ダー君」
「ありがとう。愛してるよ、シェファ」
「私もよ、ダー君」
俺とキスをした後、母さんはクルトニウスの前に進み出た。
「シェファール、君の魔力は無限! そして無敵だ!」
「ええ! 私は無敵よ! ダー君の為なら、誰にも負けないんだから!」
「俺も君を守る為なら、決して負けはしない! 行くぞ!」
こうして俺たちとケイオス教団の戦いが幕を開けた。手強い相手かも知れないが、今の俺には沢山の仲間がいる。
俺は悪行の限りを尽くした元オーク。そして今はドノナストの王、エルフのダーザイン!
どうやらスローライフは、一旦お預けのようだぜ!
今のところ、表立った問題は起きていないようだ。女王であるノヴァは、毎晩のようにストーリア城を訪れて近況報告をしてくれる。そして俺の妻達と共に、甘い夜を過ごして帰って行くのが通例になっていた。
寝室からの去り際、彼女は名残惜しそうに俺を振り返る。
「ダーザイン様、そろそろ私にも子供を授けてくださいませんか」
悪戯っぽく笑うノヴァ。
「別に俺は構わないが、そうすると君は俺の妻とならねばならない。カミラ・キュラスはドノナストの従属国になってしまうぞ。対等ではなくなるがいいのか?」
「もちろん、構いませんわ!」
ノヴァはそう言って、俺の胸に飛び込んで来た。これで俺には七人目の妻が出来る事になる。
正直、俺はノヴァを愛していた。彼女に俺を愛させたのは、当初は屈服させる為の手段に過ぎなかったのは確かだ。
だが彼女と触れ合う内に、俺は恋に落ちたようだった。
漆黒に輝く、長く美しい髪。妖しさ内に秘めた切長の目。黒い瞳は夜の闇のようだ。そこに感じるのは不安や恐怖ではなく、安らぎと安堵。
白い肌とは対照的な、赤い唇。鋭い牙が見え隠れするその薄い唇は、甘い快感とスリルを同時に味あわせてくれる。
夢の中で出会った時は、長身の女性だった。だが現実の彼女は小柄で、容姿もまるで十代の少女。愛らしさと妖艶さを併せ持つ美少女だった。そのくせスタイルは抜群にいい。素晴らしい曲線美の持ち主だった。
もう何度目か分からない愛の契りを交わした俺とノヴァ、そして妻達。昼頃になってようやくノヴァは帰って行った。ノーティアスとフェイト、ルインダネスも自分達が治める町へと帰って行く。
「カミラ・キュラスがドノナストの属国になると言うことは、法律の改正やら何やらの仕事が増えるな。ナディア、手配を頼めるか」
「お任せ下さい、陛下」
執務室。脇に控えているのは母さん、ナディア、エステルの三人だ。
「冒険者ギルドも新たに作るか。ヴァンパイア達にもギルド組織の仕組みはあるが、基本的に彼らは貴族社会。人族を奴隷として虐げる事で成り立って来た社会だ。まだまだ仕事をする事には不慣れだろう。エステル、フェイトと一緒にノヴァを手助けしてやってくれないか」
「うん、任せて!」
エステルは親指を立ててニカッと笑う。
ナディアとエステルは任務遂行に燃え、颯爽と執務室を去って行く。
「あら! 二人っきりになったわね、ダー君」
「本当だね、シェファ」
俺は机から立ち上がり、そばに立っていた母さんと抱き合う。
「本当にいつもありがとう、シェファ。君がいるから、俺はここまでやってこれた。何度も俺の命を救ってくれた。感謝しかないよ」
「私がダー君を守るのは当然の事だわ。だって母親だもの。愛する息子は命に代えても守るのが母親の務めでしょう? だけど嬉しいわダー君。それを素直に感謝出来る子になってくれて。本当に、立派になって......」
母さんは大粒の涙を両目から溢れさせた。
「全部シェファのおかげだよ。あなたのお陰で、ここまで成長出来た。ありがとう母さん。愛してる」
俺は母さんの涙を指ですくい、キスを交わす。やがて俺たちはソファに倒れ込み、お互いの愛を確かめ合った。
「あの時......オーク達がエルフの村を焼き討ちすると言った時。エルフ達を救う選択をしなかったらどうなっていたんだろう。きっと今のようにはならなかった。エルフの村は滅び、魔術大戦も魔族の勝利で終わっていた筈だ。平和なんてずっと訪れはしなかっただろう。俺は罪の意識を抱いたまま、母さんと一緒に何処かに隠れ住んでいたも知れない」
「そうね......だけどあなたは正しい決断をした。立派よ、ダー君。お母さん、とっても誇らしいわ」
「ありがとう。選択を間違えなくてよかったよ。今は本当に幸せだ。少し平和すぎるくらいだけどね。まぁ......ちょっと問題が起こるくらいの方が、メリハリがあっていいんだけど」
「ふふっ。良いのかしらそんな事言って。手に負えないくらいの問題が起こっちゃうかもよ?」
悪戯っぽく笑う母さん。
「大丈夫さ。その時は俺が解決してみせる。君は俺が守るよ、シェファ」
「頼りにしてるわ、旦那様」
微笑む母さんに俺は深く口付けし、再び愛を交わした。
数時間後。執務机で書類を書いていると、フェイトとノーティアス、そしてルインダネスが「空間転移」の魔術で姿を現す。ちなみに母さんは、ソファで気持ち良さそうに眠っている。
「大変じゃ兄上!」
「血相変えてどうしたんだフェイト。いつも冷静なお前らしくないじゃないか」
フェイトの顔はいつになく真っ青で、それはノーティアスとルインダネスも同様だった。
「大陸に七つある【大罪の迷宮】のうちの一つ、我が国で管理している【色欲(ラスト)】の迷宮が崩壊した!」
「なんだと!?」
フェイトの報告に、俺は寒気を覚えた。
「中から続々とモンスター共が溢れ出して来ておる! 今は迷宮がある森の中に結界を張り抑え込んでおるが、突破されるのは時間の問題じゃ! 早急に手を打たねばならぬぞ兄上!」
「わかった! 行こう!」
俺は頷き、素早く立ち上がった。
「それだけじゃねぇぜダーザイン! ドノナストの玄関口とも言える俺の町、グローリアにもモンスターが溢れかえってやがるんだ! もちろんレベルは1まで下げてやったが、どういう訳か奴らの進行は止まらねぇ! 騎士団と兵団、冒険者達で食い止めてるが、このストーリアにやってくるのも時間の問題だぜ!」
叫ぶルインダネス。彼女もいつになく焦燥に駆られているようだ。
「そっちもか......! まずいな」
予想以上にヤバい状況のようだ。こうしてはいられない。
「グローリアだけじゃないよ、お兄ちゃん! 僕の町ラグディアにもモンスター達が溢れているし、フェイトの治めるファナキアにもモンスターの大群が現れたんだ! どうやらケイオス教団と名乗る連中が街に潜んでいて、このタイミングで同時多発的に決起して、モンスターを召喚しているみたいなんだ!」
ノーティスは涙目だった。比較的楽観的な彼女だが、今回はそうもいかないようだ。ケイオス教団......! 混沌神ケイオスを信奉する連中か!
「よし、ではまず俺はラグディアに向かう! 状況は最悪だが、順次解決して行くから安心してくれ! みんなは各自、自分の町の安全確保! 俺が行くまで持ち堪えてくれ! ダンジョンはとりあえず後回し! 三つの町を守りきってから向かう!」
「了解じゃ!」
「おう!」
「うん!」
三人が転移の魔術で消えた後、振りかえると目覚めた母さんと目が合った。
「あらあら、不安が的中しちゃったわね」
母さんは困ったような微笑を浮かべた。話は聞いていたらしい。
「そうだね。だけど大丈夫。俺がいる。誰一人傷つけさせやしない! それに心強い味方もいるからね。行こう、シェファ!」
「ええ!」
俺は母さんを抱き寄せ、口付けをしながら「転移の言葉」を唱えた。
「俺とシェファはラグディアに転移する」
呪文や術式は必要ない。俺の言葉は現実になる。
ラグディアは喧騒に包まれていた。ゴブリンやトロール、コボルドなどのモンスターに加え、かつては魔族だったオークとオーガも暴れているようだ。おそらく彼らは戦いに敗れた事で、魔族からモンスターへと落ちぶれてしまったのだろう。
人々を非難させていた騎士団の一人が、こちらを見て歓喜の声を上げる。
「ダーザイン様が来てくださったぞ! シェファール様も一緒だ!」
「おおおー!」
「ダーザイン様!」
逃げるのも忘れて、喝采を送る人々。俺はそれに笑顔で応え、右拳を掲げた。
「この街に仇なす者どもよ! 動きを止めよ!」
ピタリと動きを止めるモンスター達。だがその中でたった一人、ゆっくりとこちらに飛翔してくる者がいた。
全身真っ黒で、歪んだ角と蝙蝠のような翼を持ったモンスター。言うなれば悪魔だ。
「俺の言葉に耳を傾けてはくれないのだな。君は一体何者だ?」
俺の問いかけに、悪魔はニヤリと顔を歪ませる。
「お初にお目にかかります、ダーザイン陛下。私はケイオス教団司教、クルトニウス。ケイオス様の意向に逆らうあなたとあなたの所有物全てを、滅ぼす為に参りました」
そう言って粛々と頭を下げるクルトニウス。どうやら簡単には行かなそうな相手だ。
「なるほどな。なら君は生かして帰してやる。だからご主人様にこう伝えろ。俺を滅ぼしたいなら自分で直接来い、とな」
「貴様......!」
クルトニウスは俺の言葉に怒りを感じたようだ。凄まじい形相で俺を睨む。
「なんと無礼な! 神であるケイオス様が、たかがエルフ如きの前に姿を現す訳がなかろう! 驕り高ぶるな、汚らわしい!」
禍々しいオーラを身にまとい、戦闘態勢に入るクルトニウス。
「シェファ、こいつに俺の【フィクサー】の力、【言霊】は通じないようだ。俺に力を貸してくれるかい」
「ええ、もちろん。あなたの剣となり、盾となるわ、ダー君」
「ありがとう。愛してるよ、シェファ」
「私もよ、ダー君」
俺とキスをした後、母さんはクルトニウスの前に進み出た。
「シェファール、君の魔力は無限! そして無敵だ!」
「ええ! 私は無敵よ! ダー君の為なら、誰にも負けないんだから!」
「俺も君を守る為なら、決して負けはしない! 行くぞ!」
こうして俺たちとケイオス教団の戦いが幕を開けた。手強い相手かも知れないが、今の俺には沢山の仲間がいる。
俺は悪行の限りを尽くした元オーク。そして今はドノナストの王、エルフのダーザイン!
どうやらスローライフは、一旦お預けのようだぜ!
52
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
まるで往年のパルプファンタジーの様な快刀乱麻ぶり、楽しく読ませていただきました
感想ありがとうございます😭
楽しんでいただけたみたいで嬉しいです✨
この作品は僕自身、とても気に入っています。次回作も是非、よろしくお願いします😊