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第2部 令嬢魔王リーファ
第23話 ジコン君の勇気。
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「おいおいみんな! しっかりしてくれよ! なんで魔王なんかに頭下げてるんだ!? 魔人も魔物も人間の敵! 魔王は魔人や魔物共の親玉だろう!? つまり俺たちの敵だ!」
酒場から出てきた冒険者は六人程。全員おじさんで、髭面のマッチョ。相当酔っ払っているようだ。
「それに随分と小さいな。よく見りゃまだ子供じゃないか! 本当にお前が魔王なのか?」
「ガキが二人にそっちのジジィが引率か。ままごとじゃねぇんだぞ冒険者は! 帰った帰った!」
「今日きた魔物共、ありゃあお前の差し金か、魔王さんよ。だとしたらお前は英雄なんかじゃない。やっぱり悪の親玉って訳だ! なぁ!?」
一斉に騒ぎ立てる、おじさん冒険者たち。私は怖くて泣き出しそうだった。自分なんかが、ここにいちゃいけない。それどころか存在もゆるされない。そんな悲しい気持ちになった。
「うるさい、黙れ! 俺の友達を悪く言う奴は許さないぞ! 誰のお陰で、この街で冒険者の仕事が出来ると思っている!? この街フェイザールの領主、ルデラ・バーンシュタインは俺の父上だ! これ以上リーファを侮辱するなら、お前らを不敬罪で街から追放する!」
ジコン君は白い顔を真っ赤にして叫んだ。そして私の手を、ギュッと握ってくれた。
ジコン君の手は震えていた。目にも涙が浮かんでいるし、声も唇も震えている。ジコン君も怖いんだ。だけど私の為に、怒ってくれた。私の事を守ってくれた。
嬉しかった。嬉しくって、涙が溢れた。ジコンと手を繋いだまま、私は泣きじゃくった。
「ええー? なんだこいつら、泣いちゃったよ。ははっ、やっぱガキだなぁ。わかったわかった。領主様のとこの坊ちゃんなら、言う事聞いとかねぇとな」
「へいへい、すいませんでしたぁーってか? 親の力借りねぇと何にも出来ねぇガキのくせに、偉そうによ。ムカつくぜ」
「まぁまぁ良しなって。マジで追放になっちゃまずいだろ? ごめんねボクちゃんたち。おおーよちよち。冒険者登録に来たんだよね? んじゃさっさと登録して、帰ってママのおっぱいでも吸ってなちゃーい」
ドッと大笑いする冒険者たち。ジコン君は悔しそうにうつむく。私は涙で視界がボヤけてしまって、他の大人たちの反応がわからなかった。
けれど笑っている声は、おじさん達のものだけだった。
私は目を擦り、恐る恐るアルダを見た。先程から彼は黙ったままだ。その沈黙が、逆に怖いのだ。魔王と言う存在を敬愛するアルダの事だ。さぞかし怒っている事だろう。
「......え!?」
私は驚いた。アルダは怒ってなどいなかったのだ。むしろその逆で、彼は満面の笑みをたたえていた。
「陛下。下手な挑発になど乗ってはいけませぬぞ。あなた様は、このような低脳共をいちいち相手にしてはなりませぬのじゃ。陛下の行いの正しさは、じきに皆に知れ渡る事でしょう。さ、冒険者登録を済ませ、早々に大陸の地図を手に入れましょうぞ」
アルダはニコニコと微笑みながら、私とジコン君の背中を優しく押した。
私は思わず、「おじいちゃん!」と彼の胸に飛び込みそうになった。それくらい今の出来事は、私にとって感動的だったのだ。
「ちょい待てやジジィ! 誰が低脳だと!」
冒険者たちはカンカンに怒り、アルダと私達を取り囲んだ。
「おお、怒らせてしまったかのう。すまぬすまぬ。日頃から言葉には気をつけておるつもりじゃが、言い方を間違えたわい。では言い直そう。そこを退くのじゃ、カス共」
アルダは私たちを守るように前に立った。そして両手を広げ、フォッフォッフォッと笑ったのだった。
酒場から出てきた冒険者は六人程。全員おじさんで、髭面のマッチョ。相当酔っ払っているようだ。
「それに随分と小さいな。よく見りゃまだ子供じゃないか! 本当にお前が魔王なのか?」
「ガキが二人にそっちのジジィが引率か。ままごとじゃねぇんだぞ冒険者は! 帰った帰った!」
「今日きた魔物共、ありゃあお前の差し金か、魔王さんよ。だとしたらお前は英雄なんかじゃない。やっぱり悪の親玉って訳だ! なぁ!?」
一斉に騒ぎ立てる、おじさん冒険者たち。私は怖くて泣き出しそうだった。自分なんかが、ここにいちゃいけない。それどころか存在もゆるされない。そんな悲しい気持ちになった。
「うるさい、黙れ! 俺の友達を悪く言う奴は許さないぞ! 誰のお陰で、この街で冒険者の仕事が出来ると思っている!? この街フェイザールの領主、ルデラ・バーンシュタインは俺の父上だ! これ以上リーファを侮辱するなら、お前らを不敬罪で街から追放する!」
ジコン君は白い顔を真っ赤にして叫んだ。そして私の手を、ギュッと握ってくれた。
ジコン君の手は震えていた。目にも涙が浮かんでいるし、声も唇も震えている。ジコン君も怖いんだ。だけど私の為に、怒ってくれた。私の事を守ってくれた。
嬉しかった。嬉しくって、涙が溢れた。ジコンと手を繋いだまま、私は泣きじゃくった。
「ええー? なんだこいつら、泣いちゃったよ。ははっ、やっぱガキだなぁ。わかったわかった。領主様のとこの坊ちゃんなら、言う事聞いとかねぇとな」
「へいへい、すいませんでしたぁーってか? 親の力借りねぇと何にも出来ねぇガキのくせに、偉そうによ。ムカつくぜ」
「まぁまぁ良しなって。マジで追放になっちゃまずいだろ? ごめんねボクちゃんたち。おおーよちよち。冒険者登録に来たんだよね? んじゃさっさと登録して、帰ってママのおっぱいでも吸ってなちゃーい」
ドッと大笑いする冒険者たち。ジコン君は悔しそうにうつむく。私は涙で視界がボヤけてしまって、他の大人たちの反応がわからなかった。
けれど笑っている声は、おじさん達のものだけだった。
私は目を擦り、恐る恐るアルダを見た。先程から彼は黙ったままだ。その沈黙が、逆に怖いのだ。魔王と言う存在を敬愛するアルダの事だ。さぞかし怒っている事だろう。
「......え!?」
私は驚いた。アルダは怒ってなどいなかったのだ。むしろその逆で、彼は満面の笑みをたたえていた。
「陛下。下手な挑発になど乗ってはいけませぬぞ。あなた様は、このような低脳共をいちいち相手にしてはなりませぬのじゃ。陛下の行いの正しさは、じきに皆に知れ渡る事でしょう。さ、冒険者登録を済ませ、早々に大陸の地図を手に入れましょうぞ」
アルダはニコニコと微笑みながら、私とジコン君の背中を優しく押した。
私は思わず、「おじいちゃん!」と彼の胸に飛び込みそうになった。それくらい今の出来事は、私にとって感動的だったのだ。
「ちょい待てやジジィ! 誰が低脳だと!」
冒険者たちはカンカンに怒り、アルダと私達を取り囲んだ。
「おお、怒らせてしまったかのう。すまぬすまぬ。日頃から言葉には気をつけておるつもりじゃが、言い方を間違えたわい。では言い直そう。そこを退くのじゃ、カス共」
アルダは私たちを守るように前に立った。そして両手を広げ、フォッフォッフォッと笑ったのだった。
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