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第2部 令嬢魔王リーファ
第15話 宿敵登場。
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「サラスレイ! いる!?」
いつの間にか姿を消していたサラスレイの名前を、私は呼んだ。
「お呼びですか、リーファ様!」
ヒュンッという疾風と共に、サラスレイが目の前に現れた。
「今この教室から逃げて行った子を、無事に学校の外まで送り届けて欲しい。それから各教室にいる生徒や先生も。頼める?」
私がそう指示すると、サラスレイはドン、と自分の胸を叩いた。
「リーファ様ニャらそうおっしゃると思いまして、すでに全員避難させました。この教室から出て行った少年も、さっき送り出しましたよ。あとは アルダラインが風魔術で家まで送ってくれる筈です。姿を消したままだと面倒ニャんで、オイラもアルダラインも姿は見せました」
「すごい! サラスレイ! ありがとう!」
私はサラスレイに礼を言いながら、巨大な手が掴みかかってくるのを避けていた。だけどきっと、みんなが無事逃げたという報告を聞いて、安心してしまったのだろう。私は油断した。そして巨大な手に掴まれてしまった。
「リーファ様!」
サラスレイは鋭い爪で、私を掴む指を切り裂いた。私は指から解放され、教室の床に向かって滑り落ちた。
助かったと思った次の瞬間。なんともう一つ巨大な手が、教室に突っ込んできた。その拳はサラスレイを殴り飛ばし、私を掴んだ。
「くそっ、離せ!」
私は悪態をつきながら、巨大な手に短剣で切りつけた。だがやはり、身動き出来ない状態で切りつけても、指を切断するなんて事は出来なかった。
巨大な手は教室から引っこ抜かれ、みるみるうちに私を高く持ち上げた。
巨大な顔。それが小さな私を見つめていた。彼は巨人族。長くてボサボサの髪、緩んだ口元、意味もなく笑う声。
はっきり言って知性は低い。だが単純な命令で戦場を蹂躙するその力は、魔人が召喚して使役したくなるのも頷ける。
巨人は大口を開けて、私を口へと運ぼうとする。嘘でしょ......生きたまま食べられるなんて、絶対いや。
「待て、ズグーラ!」
巨人に制止の命令が下され、その手はピタリと止まった。私は声のした方を見下ろす。
学校の校庭。巨人から少し離れた場所に、そいつは立っていた。
前魔王ミリアを騙し、人間との戦争を起こさせた張本人。奴の名は、メフィスト。かつて沢山の人々を苦しめ、私のパパとママに懲らしめられた悪い魔人だ。
ミリアに引き渡した後、彼女にたっぷりお仕置きされた筈だけど......優しい彼女の事だ。きっと許してしまったのだろう。彼が改心する事など、あり得ないというのに。
「久しぶりですね、リーファ。最後に出会った日からもう二年。見違えましたよ。お気づきかと思いますが、今日はあなたをお迎えに来たんです。さぁ、私と一緒にラーナキアに行きましょう」
巨人がメフィストを左手に乗せ、右手でつかんだ私に近づける。メフィストは私に向かって、手を差し伸べて来た。
「私の妻になりなさい、リーファ。そして私を新たな魔王と認めるのだ。あなたは新魔王の妻となる。共にラーナキアをおさめましょうぞ。そしてゆくゆくは、人間界と神界も手中に収めるのです」
メフィストはそう言って笑った。
「私は......」
言いかける私の体を、巨人の指が締め付ける。
「ううっ」
思わず苦悶の声が漏れる。
「答えは慎重にね、リーファ。間違うと、あなたの全身は粉々だ。まぁ私は、あなたが生きてさえいればそれで良いのですがね」
苦しい。この苦しみから、早く逃れたい。私は今考えうる、最高の返事をする事にした。
「私はあなたの妻になんかならない! この変態ロリコンオヤジ!」
言ってやった。メフィストのあっけに取られた顔を見て、私は高らかに笑った。
いつの間にか姿を消していたサラスレイの名前を、私は呼んだ。
「お呼びですか、リーファ様!」
ヒュンッという疾風と共に、サラスレイが目の前に現れた。
「今この教室から逃げて行った子を、無事に学校の外まで送り届けて欲しい。それから各教室にいる生徒や先生も。頼める?」
私がそう指示すると、サラスレイはドン、と自分の胸を叩いた。
「リーファ様ニャらそうおっしゃると思いまして、すでに全員避難させました。この教室から出て行った少年も、さっき送り出しましたよ。あとは アルダラインが風魔術で家まで送ってくれる筈です。姿を消したままだと面倒ニャんで、オイラもアルダラインも姿は見せました」
「すごい! サラスレイ! ありがとう!」
私はサラスレイに礼を言いながら、巨大な手が掴みかかってくるのを避けていた。だけどきっと、みんなが無事逃げたという報告を聞いて、安心してしまったのだろう。私は油断した。そして巨大な手に掴まれてしまった。
「リーファ様!」
サラスレイは鋭い爪で、私を掴む指を切り裂いた。私は指から解放され、教室の床に向かって滑り落ちた。
助かったと思った次の瞬間。なんともう一つ巨大な手が、教室に突っ込んできた。その拳はサラスレイを殴り飛ばし、私を掴んだ。
「くそっ、離せ!」
私は悪態をつきながら、巨大な手に短剣で切りつけた。だがやはり、身動き出来ない状態で切りつけても、指を切断するなんて事は出来なかった。
巨大な手は教室から引っこ抜かれ、みるみるうちに私を高く持ち上げた。
巨大な顔。それが小さな私を見つめていた。彼は巨人族。長くてボサボサの髪、緩んだ口元、意味もなく笑う声。
はっきり言って知性は低い。だが単純な命令で戦場を蹂躙するその力は、魔人が召喚して使役したくなるのも頷ける。
巨人は大口を開けて、私を口へと運ぼうとする。嘘でしょ......生きたまま食べられるなんて、絶対いや。
「待て、ズグーラ!」
巨人に制止の命令が下され、その手はピタリと止まった。私は声のした方を見下ろす。
学校の校庭。巨人から少し離れた場所に、そいつは立っていた。
前魔王ミリアを騙し、人間との戦争を起こさせた張本人。奴の名は、メフィスト。かつて沢山の人々を苦しめ、私のパパとママに懲らしめられた悪い魔人だ。
ミリアに引き渡した後、彼女にたっぷりお仕置きされた筈だけど......優しい彼女の事だ。きっと許してしまったのだろう。彼が改心する事など、あり得ないというのに。
「久しぶりですね、リーファ。最後に出会った日からもう二年。見違えましたよ。お気づきかと思いますが、今日はあなたをお迎えに来たんです。さぁ、私と一緒にラーナキアに行きましょう」
巨人がメフィストを左手に乗せ、右手でつかんだ私に近づける。メフィストは私に向かって、手を差し伸べて来た。
「私の妻になりなさい、リーファ。そして私を新たな魔王と認めるのだ。あなたは新魔王の妻となる。共にラーナキアをおさめましょうぞ。そしてゆくゆくは、人間界と神界も手中に収めるのです」
メフィストはそう言って笑った。
「私は......」
言いかける私の体を、巨人の指が締め付ける。
「ううっ」
思わず苦悶の声が漏れる。
「答えは慎重にね、リーファ。間違うと、あなたの全身は粉々だ。まぁ私は、あなたが生きてさえいればそれで良いのですがね」
苦しい。この苦しみから、早く逃れたい。私は今考えうる、最高の返事をする事にした。
「私はあなたの妻になんかならない! この変態ロリコンオヤジ!」
言ってやった。メフィストのあっけに取られた顔を見て、私は高らかに笑った。
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