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第2部 令嬢魔王リーファ
第12話 オークは臭い。
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「さすが陛下。さぁ、急ぎましょう。向こうでも騒ぎが起こっていますぞ」
アルダラインさんの魔術で、叫び声がする方へ飛翔する。
町外れの方だ。川にかかる橋を山へ向かって渡ると学校である。
馬車が、橋を渡ったところで破壊されている。おそらく学校方面から町へとやってきたのだろう。
「馬車の中に人はいないようですじゃ。破壊される前に飛び降りたのでしょうな。馬は残念ながら殺されてしまったようです」
アルダラインさんはそう言って、「おっと」と口を塞いだ。「殺された」と言ったのを気にしているのだろう。確かに私は「死ね」とか「殺す」とか、「死」を軽々しく扱う言葉が嫌いだ。だけど、要は喋る人の気持ちが問題なのだ。
「『殺す』はダメだけど、『殺された』なら使ってもいいよ」
「なんと寛大なお言葉。お許しいただき感謝致しますじゃ、陛下」
私の許可を得て、彼はホッと胸を撫で下ろした。
私は馬車を引いていた二頭の馬の冥福を祈りつつ、こんな残酷な事をした犯人を探した。学校へ続く道に、血が付いている。犯人は学校へ向かったのだ。
「学校だ! 急ごう アルダラインさん」
「かしこまりました、陛下」
風の魔術で学校へ向かう。私のクラスのみんなは、もう家に帰った筈だ。だけど他のクラスの子や、先生たちがいる。
学校の前に到着すると、校門のところで騎士が魔物に応戦していた。
騎士は学校警備の騎士で、私を捕まえた人だ。私を屯所の騎士に引き渡したあと、学校の警備に戻っていたんだ。良かった。彼らのお陰で、先生や生徒はまだ無事だ。
彼は相棒の騎士と二人で魔物と戦っている。魔物の方はオークと呼ばれる豚顔で大柄なやつだ。狼のような姿の獣【ヴォルフ】に乗り、俊敏な動きを見せている。
突進したり、背後に回ったりしつつ、右手に持った巨大な斧を振り回す。オークの多彩な攻撃は、騎士たちを翻弄していた。
オークは緑色の体で、皮で出来た鎧を身につけている。騎士の方が武装はしっかりしているが、パワー負けして何度も弾き飛ばされていた。
「このままでは騎士どもは殺されてしまいますな。助太刀致しますか、陛下」
「もちろん! ここからだと私の力は届かないから、また風で巻き上げて」
私の指示に、アルダラインさんは難しい顔をする。
「わしはどうも、奴らの匂いが苦手でしてな。あの場所に降ろしますので、陛下、奴らの始末はお任せしますじゃ」
そう言って笑い、アルダラインさんはヒゲをこすった。
「ええー! 私が!?」
こ、怖い!さっきのゴブリンは身動き出来ない状態だったから良かったけど......。
「大丈夫です。陛下ならばあの程度の雑魚、チョチョイのチョイですじゃ」
アルダラインさんがパチンと指を鳴らす。すると周囲を渦巻いていた風がピタリとやみ、私の体は真っ逆さまに落ちていった。
アルダラインさんの魔術で、叫び声がする方へ飛翔する。
町外れの方だ。川にかかる橋を山へ向かって渡ると学校である。
馬車が、橋を渡ったところで破壊されている。おそらく学校方面から町へとやってきたのだろう。
「馬車の中に人はいないようですじゃ。破壊される前に飛び降りたのでしょうな。馬は残念ながら殺されてしまったようです」
アルダラインさんはそう言って、「おっと」と口を塞いだ。「殺された」と言ったのを気にしているのだろう。確かに私は「死ね」とか「殺す」とか、「死」を軽々しく扱う言葉が嫌いだ。だけど、要は喋る人の気持ちが問題なのだ。
「『殺す』はダメだけど、『殺された』なら使ってもいいよ」
「なんと寛大なお言葉。お許しいただき感謝致しますじゃ、陛下」
私の許可を得て、彼はホッと胸を撫で下ろした。
私は馬車を引いていた二頭の馬の冥福を祈りつつ、こんな残酷な事をした犯人を探した。学校へ続く道に、血が付いている。犯人は学校へ向かったのだ。
「学校だ! 急ごう アルダラインさん」
「かしこまりました、陛下」
風の魔術で学校へ向かう。私のクラスのみんなは、もう家に帰った筈だ。だけど他のクラスの子や、先生たちがいる。
学校の前に到着すると、校門のところで騎士が魔物に応戦していた。
騎士は学校警備の騎士で、私を捕まえた人だ。私を屯所の騎士に引き渡したあと、学校の警備に戻っていたんだ。良かった。彼らのお陰で、先生や生徒はまだ無事だ。
彼は相棒の騎士と二人で魔物と戦っている。魔物の方はオークと呼ばれる豚顔で大柄なやつだ。狼のような姿の獣【ヴォルフ】に乗り、俊敏な動きを見せている。
突進したり、背後に回ったりしつつ、右手に持った巨大な斧を振り回す。オークの多彩な攻撃は、騎士たちを翻弄していた。
オークは緑色の体で、皮で出来た鎧を身につけている。騎士の方が武装はしっかりしているが、パワー負けして何度も弾き飛ばされていた。
「このままでは騎士どもは殺されてしまいますな。助太刀致しますか、陛下」
「もちろん! ここからだと私の力は届かないから、また風で巻き上げて」
私の指示に、アルダラインさんは難しい顔をする。
「わしはどうも、奴らの匂いが苦手でしてな。あの場所に降ろしますので、陛下、奴らの始末はお任せしますじゃ」
そう言って笑い、アルダラインさんはヒゲをこすった。
「ええー! 私が!?」
こ、怖い!さっきのゴブリンは身動き出来ない状態だったから良かったけど......。
「大丈夫です。陛下ならばあの程度の雑魚、チョチョイのチョイですじゃ」
アルダラインさんがパチンと指を鳴らす。すると周囲を渦巻いていた風がピタリとやみ、私の体は真っ逆さまに落ちていった。
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