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第2部 令嬢魔王リーファ

第10話 誕生日プレゼント。

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「その短剣は魔王からのプレゼントだからな。パパからもちゃんとプレゼントがあるぞ。時精霊の首飾りだ」

   パパはそう言って、首に下げていた首飾りを外し、私の首にかけてくれた。

「わぁ、ありがとうパパ! でもいいの? 大切にしていた物なのに」

   その首飾りは、パパの危機を何度も救ってきた、時精霊の首飾り。道具をいくつでもしまい込む事が出来る。そして好きな時に取り出せるのだ。パパがラーナキアへの旅の途中、手に入れた物だ。

「もちろんいいさ。今これが必要なのは、パパじゃなくてリーファだからな。大事にしろよ」

「うん! 大事にする! ありがとうパパ!」

   私は早速首飾りを使ってみる事にした。首飾りには赤い宝石がはめ込まれていて、それを道具に触れさせて念じる事で、しまう事が出来るんだ。

   短剣の鞘の部分を宝石に当て、「入れ」と念じる。すると短剣は、たちまちその姿を消した。

「あはは! すごいすごい!」

   私は初めて見た不思議な光景に、キャッキャとはしゃいだ。ジコン君も「すげー!」と言って私の肩を叩いた。

「ふふっ。良かったねリーファ。私からも、魔術の込められた道具をプレゼントするわ」

   ママは腰につけていたポーチから、真っ白な手袋を取り出した。

「これはね、決して傷つかず、決して汚れない、不思議な手袋よ。手を守ってくれるだけじゃないわ。寒い時は暖かくなるし、暑い時は冷たくなるの。それにね、持ち主以外はこれを外す事が出来ない。つまり、あなたのその爪を隠すのにはうってつけなのよ」

「すごい! ありがとうママ!」

   私はママの手から、そっと手袋を受け取った。とても手触りがいい。私は早速手にはめてみた。

   少し大きいサイズに見えたけど、実際にはめてみたらピッタリだった。もしかしたら、秘められた魔術効果でピッタリサイズになったのかも知れない。

   この寒い地下牢においては、手袋の暖かさがとてもありがたかった。ママの温もりみたいに、あったかい。

「似合うじゃない、リーファ。一人でいる時以外は、その手袋をはめるのよ。そうすれば、余計な厄介事に巻き込まれずに済むわ」

「うん! そうする!」

   私は元気よく返事した。本当はまた泣きだしたい気分だったけど、我慢した。

「もうよろしいですか、ジャクソン様、アキラ様。よろしければ、お二人が入る牢に案内します」

   騎士がパパとママに近寄って、そう言った。

「もう少し待ってくれ。行き先の説明がまだなんだ」

   パパは片手を挙げて、騎士を制した。

「かしこまりました」

   騎士は敬礼して、三歩下がった。

「リーファ。お前がまずやらなきゃならない事は四つ。一つ目は冒険者ギルドに行き、冒険者登録をする。二つ目、ギルドで大陸の地図を買う。お金は首飾りに入ってるから、使っていいぞ。三つ目、ギルドで【神界】へのルートの説明を聞く。四つ目、明日になったら学校に挨拶に行って、冒険に出発。以上だ」

「うん。わかった。まずギルドに行くよ」

   声が震える。寂しい。本当は、パパとママから、離れたくはなかった。

「元気でな、リーファ。必要ならギルドで仲間の冒険者を募るんだ。いいな」

「いってらっしゃいリーファ。ママもパパも、あなたの無事をいつも祈ってるからね。食べ物にも気をつけて」

「うん。行ってきます」

   パパとママは、うなだれる私を優しく抱きしめてくれた。

「よし、いいぞ。牢屋に案内してくれ」

「かしこまりました。私について来て下さい」

   騎士がそう言って、奥へと進んでいった。パパとママもそれにならう。

   視界が涙でぼやけた。泣いちゃダメだ。泣いたら、パパもママも心配する。我慢しなきゃ。我慢しなきゃ!

「パパ! ママ! 私、頑張って早く帰ってくるからね! 待っててね!」

   パパとママの足が、ピタリと止まる。パパがうつむき、肩を震わせる。ママは振り返って、私へと駆け寄った。そしてしゃがみこんで、私を抱きしめた。

「リーファ! ああ! リーファ! 本当はついて行ってあげたい! 私の宝物! 離れたくない!」

   ママは涙をいっぱい流していた。私もこらえきれなくなって、涙と嗚咽がもれた。

「ママ......!」

   私もママに抱きついた。ママは本当に優しくてあったかい。大好きなママ。世界一のママ......!

「ごめんねママ。ありがとう、私を今日まで育ててくれて。大好きだよママ。私、女神様に会ったらね、パパとママの冒険の話を、してあげるんだ。そしたら、きっと女神様も、パパとママを大好きになるよ」

「うふふっ。きっとそうね。あっそうだ、リーファ。帰ってきたらさ、今度はあなたの冒険談を、私たちにに聞かせて頂戴」

   ママはそう言って、泣きながら笑った。

「うん! きっと話すよ! 楽しみに待っててね!」

「うん......! 待ってるわ」

   ママは私のほっぺにキスをして、立ち上がった。そして一度だけ振り返り、パパの元へと走って行った。そして肩を震わせているパパを抱き寄せ、寄り添いながら奥へ歩いて行った。



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