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第2部 令嬢魔王リーファ
第8話 再会する四人。
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私がどうしようかと唸っていると、地下牢に誰かが降りてくる音がした。騎士だろうか。ご飯かな?
「リーファ! 元気そうだな!」
「ちょっとジャクソン! 冗談はよして! こんなに落ち込んでるリーファ、私は始めて見たわ!」
笑顔でやってきた二人。私のパパとママだ!
「パパ! ママ! 来てくれたんだね!」
私は嬉しくて、思わず鉄格子にしがみついた。
「ああ。もう出ていいぞリーファ。ちなみに礼なら彼に言ってくれ」
パパはそう言って横に退いた。するとパパの後ろに立っていた少年が、ひょっこり顔を出す。
「ジコン君!」
パパの後ろにいたのはジコン君だった。彼は照れ臭さそうに笑って、「よっ」と手を挙げた。
「このジコン君がな、一生懸命、騎士に頼んだんだ。リーファは無実だから、釈放してくれってな。もちろん俺とアキラも頼んださ。だけど、やっぱり友達の一言ってのは大きいよな」
ジコン君が私の為に......!嬉しい!私は涙がポロポロこぼれた。
「ジコン君! ありがとう!」
私は叫んだ。ジコン君はほっぺたをポリポリと掻いて、「いいんだ」と言った。
少し遅れて、騎士が階段を降りてきた。手にはジャラジャラとした鍵の束を持っている。
「いやぁ、まさか英雄様と勇者様の御令嬢とは......知らなかったとは言え、とんだご無礼を」
騎士は先程までとはうって変わって卑屈な態度を取っていた。大人って大変だ。
「俺の娘だからって特別扱いはして欲しくないさ。悪い事をしたら、ちゃんと叱ってやってくれ。だが今回の措置は感謝する。娘の無実を信じてくれて、ありがとう」
パパは優しい笑顔を騎士に向けた。そして騎士が扉を開けやすいように道を空けた。ママとジコン君もそれにならう。
騎士は敬礼をし、それから扉を開けてくれた。キィ、ときしむ音がして、扉は開いた。
「さぁどうぞ、リーファさん。もう出て大丈夫ですよ」
騎士は猫なで声で、私を牢屋の外へうながした。さっきまで貴様と呼ばれていたはずだけど、随分待遇が良くなった。アルダラインさんも「あきれたもんじゃのう」と笑う。
「ありがとうございます!」
私は元気よく返事をして、騎士の横を通り抜けた。
「パパ! ママ! 大好き!」
パパとママに抱きつく。パパは頭を撫でてくれたし、ママはしゃがみこんで頬ずりとキスをたくさんしてくれた。
ジコン君の視線を感じ、私は彼を見た。ジコン君は嬉しそうに笑っていた。
「良かったな、リーファ。俺もお前を助ける事が出来て、嬉しいよ。父上に逆らった甲斐があったってもんさ」
「ジコン君! ありがとう! 大好き!」
私はジコン君にも抱きついた。彼は私より背が高いので、見上げる形になる。
「お、おう。俺も、好きだぜリーファ。お前と友達になれて良かった」
ジコン君は私の背中をぎゅっと抱きしめ、それからポンポンと叩いた。
「あらリーファ、もしかして♡ うふっ。そうよね、あなたもお年頃だものね」
口元に手を当て、ニンマリと笑うママ。
「ち、違うよママ。私は純粋に友達として、ジコン君が好きなんだ。それだけだよ」
顔が熱くなるのを感じる。まだそんな、恋愛とかわかんないよ私は。
「なぁんだ、そうなの。ジコン君、今私が言った事は忘れてね」
ママはそう言って笑った。ジコン君は訳がわからずキョトンとしている。
「あはは、なんでもないよジコン君。よし、行こうみんな。助けにきてくれて本当にありがとう」
私はそう言って、出口へ向かおうとした。だけど誰一人、その場を動こうとしない。パパもママも。ジコン君も騎士も。
「陛下、なんだか様子がおかしいですぞ」
牢から出て私の隣に立っていたアルダラインさんが、ヒゲをこすりながらそう言った。確かに、何か変だ。
「リーファ。ここで俺たちとはお別れだ。俺とアキラは、牢に入る」
その言葉に、私は耳を疑った。だけど、パパの声のトーンは低く、冗談を言っている感じではなかった。
私は全身の血の気が、サーッと引いて行くのを感じていた。
「リーファ! 元気そうだな!」
「ちょっとジャクソン! 冗談はよして! こんなに落ち込んでるリーファ、私は始めて見たわ!」
笑顔でやってきた二人。私のパパとママだ!
「パパ! ママ! 来てくれたんだね!」
私は嬉しくて、思わず鉄格子にしがみついた。
「ああ。もう出ていいぞリーファ。ちなみに礼なら彼に言ってくれ」
パパはそう言って横に退いた。するとパパの後ろに立っていた少年が、ひょっこり顔を出す。
「ジコン君!」
パパの後ろにいたのはジコン君だった。彼は照れ臭さそうに笑って、「よっ」と手を挙げた。
「このジコン君がな、一生懸命、騎士に頼んだんだ。リーファは無実だから、釈放してくれってな。もちろん俺とアキラも頼んださ。だけど、やっぱり友達の一言ってのは大きいよな」
ジコン君が私の為に......!嬉しい!私は涙がポロポロこぼれた。
「ジコン君! ありがとう!」
私は叫んだ。ジコン君はほっぺたをポリポリと掻いて、「いいんだ」と言った。
少し遅れて、騎士が階段を降りてきた。手にはジャラジャラとした鍵の束を持っている。
「いやぁ、まさか英雄様と勇者様の御令嬢とは......知らなかったとは言え、とんだご無礼を」
騎士は先程までとはうって変わって卑屈な態度を取っていた。大人って大変だ。
「俺の娘だからって特別扱いはして欲しくないさ。悪い事をしたら、ちゃんと叱ってやってくれ。だが今回の措置は感謝する。娘の無実を信じてくれて、ありがとう」
パパは優しい笑顔を騎士に向けた。そして騎士が扉を開けやすいように道を空けた。ママとジコン君もそれにならう。
騎士は敬礼をし、それから扉を開けてくれた。キィ、ときしむ音がして、扉は開いた。
「さぁどうぞ、リーファさん。もう出て大丈夫ですよ」
騎士は猫なで声で、私を牢屋の外へうながした。さっきまで貴様と呼ばれていたはずだけど、随分待遇が良くなった。アルダラインさんも「あきれたもんじゃのう」と笑う。
「ありがとうございます!」
私は元気よく返事をして、騎士の横を通り抜けた。
「パパ! ママ! 大好き!」
パパとママに抱きつく。パパは頭を撫でてくれたし、ママはしゃがみこんで頬ずりとキスをたくさんしてくれた。
ジコン君の視線を感じ、私は彼を見た。ジコン君は嬉しそうに笑っていた。
「良かったな、リーファ。俺もお前を助ける事が出来て、嬉しいよ。父上に逆らった甲斐があったってもんさ」
「ジコン君! ありがとう! 大好き!」
私はジコン君にも抱きついた。彼は私より背が高いので、見上げる形になる。
「お、おう。俺も、好きだぜリーファ。お前と友達になれて良かった」
ジコン君は私の背中をぎゅっと抱きしめ、それからポンポンと叩いた。
「あらリーファ、もしかして♡ うふっ。そうよね、あなたもお年頃だものね」
口元に手を当て、ニンマリと笑うママ。
「ち、違うよママ。私は純粋に友達として、ジコン君が好きなんだ。それだけだよ」
顔が熱くなるのを感じる。まだそんな、恋愛とかわかんないよ私は。
「なぁんだ、そうなの。ジコン君、今私が言った事は忘れてね」
ママはそう言って笑った。ジコン君は訳がわからずキョトンとしている。
「あはは、なんでもないよジコン君。よし、行こうみんな。助けにきてくれて本当にありがとう」
私はそう言って、出口へ向かおうとした。だけど誰一人、その場を動こうとしない。パパもママも。ジコン君も騎士も。
「陛下、なんだか様子がおかしいですぞ」
牢から出て私の隣に立っていたアルダラインさんが、ヒゲをこすりながらそう言った。確かに、何か変だ。
「リーファ。ここで俺たちとはお別れだ。俺とアキラは、牢に入る」
その言葉に、私は耳を疑った。だけど、パパの声のトーンは低く、冗談を言っている感じではなかった。
私は全身の血の気が、サーッと引いて行くのを感じていた。
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