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第2部 令嬢魔王リーファ
第3話 黒爪のファミリア。
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アルダラインさんの説明を聞いても、私には理解出来ない事が多かった。
「えっと......つまり、私が次の魔王って事なんでしょうか」
私が魔王の隠し子である事は、両親から聞いて知っていた。だけど私が次の魔王だなんて、急展開過ぎる。だって他にも凄い人いっぱいいるんじゃないの? ラーナキアって。
私がうーんと唸っていると、アルダラインさんがフォッと笑った。
「論より証拠じゃな。陛下、わしに【ドレイン・ライフ】を使ってみてくだされ。大事なのは、『吸い取る』と念じる事ですじゃ」
「吸い取る......」
私は言われた通りに念じてみた。するとアルダラインさんは「くしゃくしゃ」と折りたたむようにしゃがみこみ、そのままパタリと横に倒れた。気を失ったように見える。
ジコン君の時と一緒だ。どうやら成功らしい。
と同時に、アルダラインさんの記憶が私に流れ込んでくる。そうか......さっきジコン君が倒れた時にもいくつかの記憶が私の中に入ってきた。パニック状態だったから、そこに意識が回らなかったけれど。
私は理解した。魔王の黒い爪「黒爪(こくそう)」に宿りし、十人のファミリアの事を。彼らは魔王を守護する使い魔であり、魔王が次代に継承された場合、彼らも次の魔王の使い魔となる。
ファミリアたちは、ミリアが暗殺されてから、今日までずっと私を見守っていてくれたらしい。私の爪が黒くなった事で、姿を現わせるようになったようだ。
ミリアが暗殺されたのは、どうやら事実のようだ。だけど犯人はまだ見つかってないみたい。実の親が殺されてしまったというのに、私の心に波風は立たなかった。
生まれてすぐに、今のママに預けられた私。当然、魔王が母親らしい事をしていた思い出は一切ないけれど......なんだか自分が、とても冷たい人間に思える。
ミリアの亡き後、ラーナキアの人々は後継者を探した。そして、魔人メフィストの発言により私に辿り着いたらしい。
魔王の子供である私は、王位継承権一位。選挙とか儀式とか何もなく、自動的に魔王になったみたいだ。
ふむふむ。よし、もう知識はバッチリだ。二人に生命力を返してあげよう。今度はさっきとは逆に、「戻す」と念じる。
少しして、アルダラインさんがパチリと目を開いた。そしてフォッフォッと笑う。
「理解していただけましたかな? 陛下」
「はい、完璧です」
「それは良かったですじゃ。では、参りましょうぞ」
アルダラインさんは立ち上がり、窓の方へ向かって歩き出した。窓から出て行くつもりなのだろうか。ちなみにここは二階である。
「行くって、どこにですか?」
とりあえず、それをはっきりさせたい。
「もちろん、あなた様の城がある王都ラーナキアですじゃ」
ええ!?いきなり!?どうして!?
「あの、急にそんな事言われても困ります。パパとママも心配しますし。それに今学校来たばかりなので、下校時間まで待って下さい。その時にあらためて話しましょう」
アルダラインさんは「ええー。だるいのう」と不満そうだったが、ここは譲れない。こっちにだって都合があるのだ。
「えっと......つまり、私が次の魔王って事なんでしょうか」
私が魔王の隠し子である事は、両親から聞いて知っていた。だけど私が次の魔王だなんて、急展開過ぎる。だって他にも凄い人いっぱいいるんじゃないの? ラーナキアって。
私がうーんと唸っていると、アルダラインさんがフォッと笑った。
「論より証拠じゃな。陛下、わしに【ドレイン・ライフ】を使ってみてくだされ。大事なのは、『吸い取る』と念じる事ですじゃ」
「吸い取る......」
私は言われた通りに念じてみた。するとアルダラインさんは「くしゃくしゃ」と折りたたむようにしゃがみこみ、そのままパタリと横に倒れた。気を失ったように見える。
ジコン君の時と一緒だ。どうやら成功らしい。
と同時に、アルダラインさんの記憶が私に流れ込んでくる。そうか......さっきジコン君が倒れた時にもいくつかの記憶が私の中に入ってきた。パニック状態だったから、そこに意識が回らなかったけれど。
私は理解した。魔王の黒い爪「黒爪(こくそう)」に宿りし、十人のファミリアの事を。彼らは魔王を守護する使い魔であり、魔王が次代に継承された場合、彼らも次の魔王の使い魔となる。
ファミリアたちは、ミリアが暗殺されてから、今日までずっと私を見守っていてくれたらしい。私の爪が黒くなった事で、姿を現わせるようになったようだ。
ミリアが暗殺されたのは、どうやら事実のようだ。だけど犯人はまだ見つかってないみたい。実の親が殺されてしまったというのに、私の心に波風は立たなかった。
生まれてすぐに、今のママに預けられた私。当然、魔王が母親らしい事をしていた思い出は一切ないけれど......なんだか自分が、とても冷たい人間に思える。
ミリアの亡き後、ラーナキアの人々は後継者を探した。そして、魔人メフィストの発言により私に辿り着いたらしい。
魔王の子供である私は、王位継承権一位。選挙とか儀式とか何もなく、自動的に魔王になったみたいだ。
ふむふむ。よし、もう知識はバッチリだ。二人に生命力を返してあげよう。今度はさっきとは逆に、「戻す」と念じる。
少しして、アルダラインさんがパチリと目を開いた。そしてフォッフォッと笑う。
「理解していただけましたかな? 陛下」
「はい、完璧です」
「それは良かったですじゃ。では、参りましょうぞ」
アルダラインさんは立ち上がり、窓の方へ向かって歩き出した。窓から出て行くつもりなのだろうか。ちなみにここは二階である。
「行くって、どこにですか?」
とりあえず、それをはっきりさせたい。
「もちろん、あなた様の城がある王都ラーナキアですじゃ」
ええ!?いきなり!?どうして!?
「あの、急にそんな事言われても困ります。パパとママも心配しますし。それに今学校来たばかりなので、下校時間まで待って下さい。その時にあらためて話しましょう」
アルダラインさんは「ええー。だるいのう」と不満そうだったが、ここは譲れない。こっちにだって都合があるのだ。
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