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第2部 令嬢魔王リーファ

第1話 英雄と勇者の娘。

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「皆さん始めまして。私の名前はリーファ・ホープフィルです。よろしくお願いします」

 私の自己紹介に、教室中が騒然となる。

「あの子が英雄と勇者の娘......!」

「噂通り、めちゃくちゃ可愛い!」

「お友達になりたい!」

 大騒ぎするクラスメイト達を、担任のクリストファー先生が注意する。

「静かにしなさい!」

 先生の一喝で、シーンとなる教室。

「君たちも知っての通り、リーファさんは、かの有名な救国の英雄ジャクソン・ホープフィル公爵と、勇者アキラ・ホープフィル公爵夫人のご令嬢です。ジャクソン公爵は隣村の、シャーリーホルンの領主でもあります」

 生徒たちは、今度は騒がずに黙って先生の話を聞いている。私は編入生。おまけに有名人で生徒達の注目の的だ。あまり目立ちたくないんだけれど、仕方がない。私のパパとママは、スカイフォール王国の住人なら誰でも知っている。

 パパとママは、去年旅に出た。そして魔王ミリアに会い、邪悪な魔人であるメフィストを彼女に引き渡した。そして魔王との友情をさらに深めて戻ってきたのだ。私も一緒に旅をしたから、その時の事は良く知っている。

 旅を終えて帰ってきたパパは、ユミル女王から公爵の爵位を与えられた。そしてシャーリーホルンの村を領地として預かった。

 シャーリーホルンは農村であり、学校も無かった。その為私は、隣町であるこのフェイザールの学校まで通う事になったのだ。

「リーファさんは、これまで学校に通った事が無いそうです。ですが家庭教師を付けていたそうなので、学力は君たちより高いかも知れませんね。しかし集団生活には慣れていないでしょうから、みんな色々教えてあげて下さい。いいですね」

「はい!」

 生徒たちが元気よく返事をする。

「よろしくお願いします!」

 私はもう一度挨拶をして、深くお辞儀した。

「ジコン君の席の隣が空いていますね。リーファさん、あの席に座ってください」

 先生に指示された席に着く。すると隣の席のジコン君が、ギロリと私を睨んだ。そばかすがあって垂れ目の天然パーマ。それが彼の容姿だ。

「お前さ、英雄と勇者の娘で、おまけに公爵令嬢だからっていい気になんなよ。俺はこの街の領主、ルデラ・バーンシュタインの息子なんだからな。お前と同じ貴族だ。いや、多分俺の父上の方が偉い。いいか、威張るなよ!」

 そう言ってジコン君は、プイッと正面を向いた。

 威張るつもりなんてないのにな......。ちょっぴり悲しい、編入初日の出来事だった。





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