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第1部 勇者令嬢アキラ

第24話 新たな国王と、アキラの旅立ち。

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 私とリーファが王族を退くに当たり、臣下の者たちが新しい候補を探す為に奔走した。

 その結果、なんと私のかつての仲間、セーラはスカイフォール家の血縁である事がわかった。

 つまり、ジャクソンとユミルも王族なのだ。道理で二人ともユニークスキル持ってる訳だよ......。

 スカイフォール家のご先祖様には、かの有名な勇者「ユークリウッド・スカイフォール」がいる。彼はかつての魔王「マオ・ラーナキア」と相討ちになったと聞く。

 ユークリウッドもそうだったように、スカイフォール家の者は、強力なユニークスキルを持つ者が多いのだ。

 ジャクソンの【状態不変】とユミルの【予知夢】。

 二人はスキルの鑑定を受けた上で、晴れて王族の一員となった。

 次の国王には当初、救国の英雄となったジャクソンが推薦されたのだが......。

「僕はアキラ様と共に旅に出ます。メフィストをスカイフォールに幽閉していても、いずれ逃げおおせてしまう。僕が彼を見張りつつ、ラーナキアの魔王ミリアの元へ送り届けます。処分はミリアに任せましょう」

 と言う事らしい。ジャクソンは国王の座を辞退した。

 そんな訳で、ユミルがスカイフォールの新しい女王となった。最初は懐疑的だった国民も、ユミルの予知夢を生かした革新的なアイディアの数々に、心を奪われていった。

 また、ユミルは若いが決断力、発言力に優れており、批判的な臣下を次々と論破。たった数ヶ月でカリスマ的な存在となったのだった。

「それじゃあ私達は行くよ、ユミル。あなたになら、安心してスカイフォールを任せられるわ」

「うん、任せて。何も心配せずに、ハネムーンを楽しんで来てよ」

 そう。実は私とジャクソンは、結婚した。盛大な結婚式をしてもらい、全国民に祝福されたのである。

「ハネムーンって訳じゃないけどな。ラーナキアへの道は険しい。俺の修行も兼ねた旅さ」

 ジャクソンがそう言って私の肩を抱く。この数ヶ月で彼は、見違える程男らしくなった。そんな彼に、私はメロメロだった。

「ジャクソン......好き♡」

 私はジャクソンに抱きついた。

「ちょっとアキラちゃん! 女王様の御前だよ? 少しはわきまえてよね。パパもパパだよ。アキラちゃんに甘すぎ」

 リーファは私をアキラちゃんと呼ぶのを随分気にった様子だ。ジャクソンをパパと呼んでくれるのも地味に嬉しい。

「いいんだよ。ユミルは俺の妹なんだし。俺も大好きだよ、アキラ」

「ジャクソン♡」

「はぁー、ダメだこりゃ。娘の事もちょっとは気にしてよね」

 いちゃつく私とジャクソンを、呆れて眺めるリーファ。やれやれと首を振っている。その様子を見て、ユミルはクスッと笑った。

「ふふっ、いいじゃない。仲がいいって事は素晴らしい事だわ。さぁ、もう行って。早く行かないと、臣下達が大騒ぎするわよ」

 ユミルは優しく私達を促した。

 そう、今回の旅は出立日時を公開していない。もはや王族を退いた私たちに対して、あまり気を使って欲しくないのだ。

「そうね。じゃあまたね、ユミル。行ってきます」

「行ってくる」

「行ってきまーす」

 手を振る私たちに、ユミルは涙目で手を振り返してくれた。

 謁見の間を後にし、地下牢に赴く。

 メフィストは大人しく幽閉されていた。

「もしも逃げたら、地の果てまでもお前を追う。そして殺す」

 と言うジャクソンの脅し文句が効いているのだろう。

「さぁ、行くわよメフィスト。ミリアの元に」

「うう......どうしても行かなくてはなりませんか?」

 メフィストは怯えた様子でそう言った。ミリアが怖いのだろう。

「ミリアはあなたのように残酷じゃないわ。それに拒んだらジャクソンに殺されるわよ。さぁ、行くか拒むか、どちらを選ぶの?」

 私の言葉を受けて、ジャクソンがメフィストにグイッと詰め寄る。

「行きます! 一緒に行かせて下さい!」

 メフィストは慌てて身支度を始めた。地下牢と言っても鎖で繋がれている訳ではなく、服装も部屋も地味で簡素なだけだ。ただしスケジュールは全て管理され、自由は無い。

 メフィストを加えて四人となった私たち。ついに旅立つ時が来た。

 これから私達を待つのは、一体どんな冒険だろう。期待に胸を大きく膨らませ、私は馬車に乗り込む。

 国王としてのこれまでの生活は、全てが偽りだった。だけどこれからは違う。

 愛する夫と娘。この二人さえいれば、私に恐れるものなど何も無い。

 ジャクソンとリーファの笑い合う姿を見ながら、私は馬車に揺られた。そしていつの間にか、眠りに落ちていた。

 夢の中で私は、セーラとオリビアに出会った。二人はごく自然に、いつもそうしているように私と戯れた。

 そして三人で仲良くテーブルに付き、美味しいお茶とお菓子を堪能したのだった。





 第一部 令嬢勇者アキラ 了。

 
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