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第1部 勇者令嬢アキラ
第21話 メフィストの思惑。
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魔人メフィストは、かつて魔王ミリアの側近だった。
ミリアに子供が生まれた時、その子をスカイフォールの国王アキラに託すように頼まれた。
「何故ですか魔王様。人間などに、偉大なる王族の子を託すなど......どうか、お考え直し下さい」
「ここは安全ではないのだ、メフィストよ。この子の命を狙う者がいる。魔王を根絶やしにし、自分が次代の魔王になろうとする者だ。だが、アキラなら信用出来る。宿敵であったが、今は友だ」
「......かしこまりました」
(フッ。やはりバレてはいない。全ては計画通り......)
メフィストは心の中でほくそ笑む。
そして深夜。メフィストは【転移】の魔術により、スカイフォール内、アキラとディアナの寝室に、「戻った」。
そして眠っているアキラを起こし、こう話す。
「あなた。今、魔王ミリアの側近と言う方が現れたの。突然でびっくりしたけれど......この赤ちゃんを私たちに預けたいそうよ。ちょうど私たちには子供がいないし、大切に守り育てましょう。名前も、もう決まっているの。リーファよ」
そう。王妃ディアナの正体は、メフィストだった。
「魔王ミリアの子供か?」
アキラはリーファを抱き上げ、愛しげに頬ずりした。
「ええ、そう言っていたわ」
「どう言うつもりだ。かつて勇者が使者となり、魔王と和解したとは聞いているが、何故私に......? ふむ。不可解ではあるが、子供に罪はない。大切に育てよう」
男となったアキラに、勇者の頃の記憶はない。無論、魔王ミリアとの友情も覚えてはいなかった。
二人はリーファを自分の子供とし、大切に育てた。城で働く者たちも、リーファは王妃が産んだ子供と信じた。
真実を知るものは、ごく一部の限られた者たちのみ。出産の時期など、いくらでも誤魔化せる。
メフィストは未来を見通す力を持っていた。魔王ミリアに子供が生まれる事を予知し、何年も前から入念に計画を立てた。
魔王の娘を手に入れ、自分の妻とする。そして反乱を起こす事なく、穏便に次代の魔王となる。
その為にまず、オリビアを手懐けた。未来に勇者となる、アーキュラを憎ませる為だ。計画は順調に運び、オリビアはアーキュラを憎んだまま世を去った。
その後はスカイフォールの国王を洗脳。城の者達も全員洗脳し、子供のいない国王夫妻の娘となる。
ディアナとなったメフィストは、魔人と人間の中心人物達の心を操作し、争わせる事にも成功。やがてそれは、魔人と人間の戦争へと発展する。
国王はスカイフォールの秘術、勇者召喚で一人の少女を呼び出す。彼女はアーキュラと名乗ったが、国王が聞き間違えた為にアキラとなった。彼女は面倒だったのか、訂正しなかった。
アキラは見事に魔王と和解し、戦争を集結させた。
ディアナ(メフィスト)はアキラとの結婚を望み、彼女を無力な男へと変えた。
(完璧だ......! あとは魔王様に娘が生まれるのを待ち、無力な中年となったアキラに渡す。そして十歳の誕生日に、オリビアの記憶を植え付けてやろう)
オリビアはメフィストを信頼し、依存している。彼女の願いであるアーキュラの失墜からの処刑を叶えてやれば、オリビアの記憶を持つリーファの心はメフィストのもの。
リーファを連れて魔界へ戻り、晴れて自分が魔王になる。王族不在のスカイフォールは滅びるかも知れないが、知った事ではない。
そして時は流れ、現在。
アキラは現在、オリビアの夢を食おうとしている。そうなってはメフィストの狙いは失敗に終わる。
だが、メフィストの予知ではアキラの【夢喰い】は失敗する。これからメフィスト(ディアナ)が部屋へ入り、眠っているアキラを殺すからだ。
だが、現在メフィスト(ディアナ)の側には、ジャクソンと呼ばれる青年がいる。
こんな人物の出現は、予知になかった。だが問題はない。まずこいつを石に変え、それからアキラを殺すだけだ。
メフィスト(ディアナ)はジャクソンを見つめ、優しく微笑んだ。
ミリアに子供が生まれた時、その子をスカイフォールの国王アキラに託すように頼まれた。
「何故ですか魔王様。人間などに、偉大なる王族の子を託すなど......どうか、お考え直し下さい」
「ここは安全ではないのだ、メフィストよ。この子の命を狙う者がいる。魔王を根絶やしにし、自分が次代の魔王になろうとする者だ。だが、アキラなら信用出来る。宿敵であったが、今は友だ」
「......かしこまりました」
(フッ。やはりバレてはいない。全ては計画通り......)
メフィストは心の中でほくそ笑む。
そして深夜。メフィストは【転移】の魔術により、スカイフォール内、アキラとディアナの寝室に、「戻った」。
そして眠っているアキラを起こし、こう話す。
「あなた。今、魔王ミリアの側近と言う方が現れたの。突然でびっくりしたけれど......この赤ちゃんを私たちに預けたいそうよ。ちょうど私たちには子供がいないし、大切に守り育てましょう。名前も、もう決まっているの。リーファよ」
そう。王妃ディアナの正体は、メフィストだった。
「魔王ミリアの子供か?」
アキラはリーファを抱き上げ、愛しげに頬ずりした。
「ええ、そう言っていたわ」
「どう言うつもりだ。かつて勇者が使者となり、魔王と和解したとは聞いているが、何故私に......? ふむ。不可解ではあるが、子供に罪はない。大切に育てよう」
男となったアキラに、勇者の頃の記憶はない。無論、魔王ミリアとの友情も覚えてはいなかった。
二人はリーファを自分の子供とし、大切に育てた。城で働く者たちも、リーファは王妃が産んだ子供と信じた。
真実を知るものは、ごく一部の限られた者たちのみ。出産の時期など、いくらでも誤魔化せる。
メフィストは未来を見通す力を持っていた。魔王ミリアに子供が生まれる事を予知し、何年も前から入念に計画を立てた。
魔王の娘を手に入れ、自分の妻とする。そして反乱を起こす事なく、穏便に次代の魔王となる。
その為にまず、オリビアを手懐けた。未来に勇者となる、アーキュラを憎ませる為だ。計画は順調に運び、オリビアはアーキュラを憎んだまま世を去った。
その後はスカイフォールの国王を洗脳。城の者達も全員洗脳し、子供のいない国王夫妻の娘となる。
ディアナとなったメフィストは、魔人と人間の中心人物達の心を操作し、争わせる事にも成功。やがてそれは、魔人と人間の戦争へと発展する。
国王はスカイフォールの秘術、勇者召喚で一人の少女を呼び出す。彼女はアーキュラと名乗ったが、国王が聞き間違えた為にアキラとなった。彼女は面倒だったのか、訂正しなかった。
アキラは見事に魔王と和解し、戦争を集結させた。
ディアナ(メフィスト)はアキラとの結婚を望み、彼女を無力な男へと変えた。
(完璧だ......! あとは魔王様に娘が生まれるのを待ち、無力な中年となったアキラに渡す。そして十歳の誕生日に、オリビアの記憶を植え付けてやろう)
オリビアはメフィストを信頼し、依存している。彼女の願いであるアーキュラの失墜からの処刑を叶えてやれば、オリビアの記憶を持つリーファの心はメフィストのもの。
リーファを連れて魔界へ戻り、晴れて自分が魔王になる。王族不在のスカイフォールは滅びるかも知れないが、知った事ではない。
そして時は流れ、現在。
アキラは現在、オリビアの夢を食おうとしている。そうなってはメフィストの狙いは失敗に終わる。
だが、メフィストの予知ではアキラの【夢喰い】は失敗する。これからメフィスト(ディアナ)が部屋へ入り、眠っているアキラを殺すからだ。
だが、現在メフィスト(ディアナ)の側には、ジャクソンと呼ばれる青年がいる。
こんな人物の出現は、予知になかった。だが問題はない。まずこいつを石に変え、それからアキラを殺すだけだ。
メフィスト(ディアナ)はジャクソンを見つめ、優しく微笑んだ。
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