19 / 48
第1部 勇者令嬢アキラ
第19話 メフィストって誰?
しおりを挟む
「目的は何? 私に復讐したいの?」
私はオリビアが不審な動きをしないように注意を払いながら、彼女を問い詰める。
「ふふっ。わかってるじゃない? なら話しは早いわ。ここで土下座しなさい、アーキュラ。そうすれば、石になった人は元に戻してあげる。見たんでしょ、あの芸術品を」
「やっぱりあれは、あんたが......!」
ニマァッと邪悪な笑みを浮かべるオリビア。
「ほらほら、早く土下座しなさいよ。安いもんでしょ、あんたの土下座で済むなんて。それでみんなが救われるのよ」
「くっ......!」
悔しい......。でも、それでみんなが助かるなら......!
私はゆっくりと両膝を床につけ、それから両手を床に付けた。
「これでいい?」
私は顔を上げ、オリビアを見る。彼女の顔は醜く歪み、鬼のような形相になっていた。
「はぁ!? あんたふざけてんの!? そんなのは土下座じゃあないわ! ちゃんと頭を床に擦りつけなさいよ! そしてこう言いなさい! スミス王子を寝とってすいませんでした、ってね!」
スミスは私の幼馴染で、婚約者だったのよ! 寝とったのはあんたでしょーが! と言う言葉をぐっと飲み込む。
今は私のプライドなんてどうでもいい。みんなを......スカイフォール王国を救う事が先決だ。私は床にゴリゴリと額を擦り付けた。
「スミス王子を、寝とってすいませんでしたぁ!」
いっそ清々しい。ぶっちゃけスミスとか、もうどうでもいいんだけど。
「あっははは! いい気味だわ! ざまぁみろ! ばーか! はぁー、すっきりしたぁ!」
オリビアは腹を抱えて私を指差し、ゲラゲラと笑った。
「これでいいでしょ! 早くみんなを元に戻して!」
笑い続けるオリビアに痺れを切らし、私は土下座したまま叫んだ。
「あはははっ、はぁ、はぁ、お腹痛い。あー、ごめん無理。私、戻し方がわからないもの」
「何ですって!? 騙したわね、このビッチが!」
「誰がビッチよ! ビッチはあんたでしょうが! この尻軽女!」
「はぁ!? 何を根拠にそんな......!」
「メフィストが教えてくれたもの! 全部ね! あんたがスミスの気持ちを利用して、彼を散々傷つけたって! 一途な彼を裏切って、浮気しまくってる事も、教えてくれたんだから!」
メフィスト......!?
「何の事!? 私、そんな事してない! 全然知らないわ!」
「嘘つくんじゃないわよ! メフィストが言ったもの! 私しかスミスを救えないって! スミスは私を愛するのが、一番幸せなんだって! だからあの薬をくれた! 愛の妙薬を!」
愛の妙薬......! スミスを惑わせた惚れ薬。私はその存在を突き止めて、オリビアを追い詰めた。スミスは私の元へ戻ってきたけど、私はスミスへの愛情はすっかり失せていた。結局、よりを戻す事はなかったのだ。
それから少しして、オリビアが自殺したとの噂が耳に入った。私はオリビアを憎んでいたが、少しだけ彼女を哀れに思った。
だが、メフィストと言う謎の人物が裏に居たとなれば話は違う。オリビアも被害者なのだ。
だが、わからない。メフィストなる人物の、目的はなんだ?
「オリビア!」
「何よ!」
私は猛然と立ち上がった。オリビアの顔は、すぐ近くにある。
「【強制夢喰い】!」
「なっ......!?」
私はほとんど頭突きのように、オリビアの額に自分の額をくっつけた。相手の許可がなくても、強制的に夢を見せて、それを食べる。それが【強制夢喰い】だ。
「あんたの記憶、ちょっと覗かせてもらうわよ!」
「ちょっ、ふざけんじゃあないわ......よ......」
オリビアの体の力が抜け、ぐったりと体勢を崩す。私はそれを受け止めつつ、彼女をベッドに押し倒す。
【夢喰い】のスキルは自分も眠ってしまう為、完全に無防備になってしまうのが弱点だ。
だけど部屋の外にはジャクソンがいる。彼ならきっと......私を......守ってくれる......。
私はオリビアが不審な動きをしないように注意を払いながら、彼女を問い詰める。
「ふふっ。わかってるじゃない? なら話しは早いわ。ここで土下座しなさい、アーキュラ。そうすれば、石になった人は元に戻してあげる。見たんでしょ、あの芸術品を」
「やっぱりあれは、あんたが......!」
ニマァッと邪悪な笑みを浮かべるオリビア。
「ほらほら、早く土下座しなさいよ。安いもんでしょ、あんたの土下座で済むなんて。それでみんなが救われるのよ」
「くっ......!」
悔しい......。でも、それでみんなが助かるなら......!
私はゆっくりと両膝を床につけ、それから両手を床に付けた。
「これでいい?」
私は顔を上げ、オリビアを見る。彼女の顔は醜く歪み、鬼のような形相になっていた。
「はぁ!? あんたふざけてんの!? そんなのは土下座じゃあないわ! ちゃんと頭を床に擦りつけなさいよ! そしてこう言いなさい! スミス王子を寝とってすいませんでした、ってね!」
スミスは私の幼馴染で、婚約者だったのよ! 寝とったのはあんたでしょーが! と言う言葉をぐっと飲み込む。
今は私のプライドなんてどうでもいい。みんなを......スカイフォール王国を救う事が先決だ。私は床にゴリゴリと額を擦り付けた。
「スミス王子を、寝とってすいませんでしたぁ!」
いっそ清々しい。ぶっちゃけスミスとか、もうどうでもいいんだけど。
「あっははは! いい気味だわ! ざまぁみろ! ばーか! はぁー、すっきりしたぁ!」
オリビアは腹を抱えて私を指差し、ゲラゲラと笑った。
「これでいいでしょ! 早くみんなを元に戻して!」
笑い続けるオリビアに痺れを切らし、私は土下座したまま叫んだ。
「あはははっ、はぁ、はぁ、お腹痛い。あー、ごめん無理。私、戻し方がわからないもの」
「何ですって!? 騙したわね、このビッチが!」
「誰がビッチよ! ビッチはあんたでしょうが! この尻軽女!」
「はぁ!? 何を根拠にそんな......!」
「メフィストが教えてくれたもの! 全部ね! あんたがスミスの気持ちを利用して、彼を散々傷つけたって! 一途な彼を裏切って、浮気しまくってる事も、教えてくれたんだから!」
メフィスト......!?
「何の事!? 私、そんな事してない! 全然知らないわ!」
「嘘つくんじゃないわよ! メフィストが言ったもの! 私しかスミスを救えないって! スミスは私を愛するのが、一番幸せなんだって! だからあの薬をくれた! 愛の妙薬を!」
愛の妙薬......! スミスを惑わせた惚れ薬。私はその存在を突き止めて、オリビアを追い詰めた。スミスは私の元へ戻ってきたけど、私はスミスへの愛情はすっかり失せていた。結局、よりを戻す事はなかったのだ。
それから少しして、オリビアが自殺したとの噂が耳に入った。私はオリビアを憎んでいたが、少しだけ彼女を哀れに思った。
だが、メフィストと言う謎の人物が裏に居たとなれば話は違う。オリビアも被害者なのだ。
だが、わからない。メフィストなる人物の、目的はなんだ?
「オリビア!」
「何よ!」
私は猛然と立ち上がった。オリビアの顔は、すぐ近くにある。
「【強制夢喰い】!」
「なっ......!?」
私はほとんど頭突きのように、オリビアの額に自分の額をくっつけた。相手の許可がなくても、強制的に夢を見せて、それを食べる。それが【強制夢喰い】だ。
「あんたの記憶、ちょっと覗かせてもらうわよ!」
「ちょっ、ふざけんじゃあないわ......よ......」
オリビアの体の力が抜け、ぐったりと体勢を崩す。私はそれを受け止めつつ、彼女をベッドに押し倒す。
【夢喰い】のスキルは自分も眠ってしまう為、完全に無防備になってしまうのが弱点だ。
だけど部屋の外にはジャクソンがいる。彼ならきっと......私を......守ってくれる......。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる