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第1部 勇者令嬢アキラ

第11話 王都へ飛ぶ。

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 ユミルの夢を食べ、私はこれから起こる出来事を知る事が出来た。また、いくつかのスキルを習得する事も出来た。

 真の敵は魔王でも、勇者ヨシオでもなかった。その背後にいるのは、私の前世の宿敵。

 オリビア・ジョーンズ。公爵令嬢で、私の婚約者であるスミス王子を奪ったビッチだ。

 まさか私の娘、リーファに転生していようとは。あの可愛いリーファがオリビアだなんて、事実を知った今でも信じられない。

 だが、彼女を止めなければ王国は滅びる。沢山の血が流れる。倒すしかない。あの、悪魔を......!

「ありがとうユミル。あなたにもらった夢のお陰で、村のみんなの仇を討てそうだよ」

「アキラ様......! ありがとうございます。よろしく、お願いします......!」

 ユミルは泣き崩れた。見張りを交代して戻ってきたジャクソンが、その肩を抱く。

「行くんですね、アキラ様。僕もお供します」

「ええ、あなたの力が必要よ、ジャクソン。あなたには自分でも気付いていない力があるの」

「えっ? 僕の力?」

「そう。でも今は説明してる暇がないわ。急ぎましょう」

 私はジャクソンに手を差し伸べた。

「はい!」

 ジャクソンはユミルの額にキスをして、私の手を取り立ち上がった。

「行ってくるよ、ユミル」

「いってらっしゃい、お兄ちゃん」

 ユミルや村の人に見送られ、村を出る。

「この村に馬車はありません。移動するには、王都か他の街からやってくる馬車乗るしかないですが......」

「そうね。だけどそれを待ってる暇は無いわ。だから、飛ぶ」

「飛ぶ!?」

 私は戸惑うジャクソンを、強引にお姫様抱っこした。念動力のアシストがあれば、腕力強化は造作ない。

「え!? え!? アキラ様!?」

 時間がない。私はジャクソンを抱き抱えたまま、大地を駆ける。そのスピードは、馬よりも圧倒的に早い。セーラの夢から獲得したスキル、【超健脚】だ。

「うわぁーっ!」

 その凄まじいスピードに、ジャクソンが悲鳴を上げる。

「加速は充分ね。跳ぶわよ!」

 地面を蹴り、跳躍。高く、高く。遠くに王都と、スカイフォール城が見える。そして、魔物の群勢。王都は魔物に襲われている!

「うひゃああーっ!」

 ジャクソンの声が裏返る。彼は必死に、私にしがみついてきた。

「このあたりかな」

 跳躍の最頂点辺りで、体を水平に移行する。普通はこんな事出来ないが、念動力のアシストで可能となる。

 そのまま王都に向けて【滑空】する。これもセーラの夢から得たスキル。

「うぎゃああーっ!」

 ジャクソンは叫びっぱなしだ。怖がらせちゃってごめんね。

 滑空飛行の速度は、走る速度よりも更に圧倒的だった。だが飛行ではないので高度はみるみる下がっていく。

 途中の街道で、一旦着陸。巻き上がる土煙。馬車に遭遇し、人々を驚愕させる。再び大地を駆け、跳躍からの滑空。

「ぎょえええーっ!」

 ジャクソンの悲鳴が、どんどん可哀想な感じになっていく。

 何度かそれを繰り返し、王都に到着。

「着いたよ、ジャクソン」

「ぎゃああー! あ、着きました?」

 ジャクソンの顔は、涙と鼻水でまみれていた。私は腰のポーチからハンカチを取り出し、ジャクソンの顔を拭ってあげた。

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