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第1部 勇者令嬢アキラ
第6話 次に目指すは、モックの村。
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「あっ、ごめんみんな! 私、お金が無いんだった!」
身包み剥がされて牢屋に入れられたんだ。お金なんて持ってる訳がなかった。まぁ国王になってからは、金なんて持ち歩いてなかったけどね。みんな従者が払っていたからなぁ。
「そんな事気にすんなよ! 全部俺らの奢りだ! なぁみんな!」
おおー!とおっさん達が叫ぶ。二十年前は、当然だけど、みんな若者だった。面影があるからわかる。タイラーにショーンにヒックス。名前を挙げればキリがない。みんな本当にいい人達だ。
「ありがとうみんな......」
私は思わず泣いてしまった。
「アキラちゃん泣いてる! 誰だアキラちゃん泣かした奴は!」
「オメーだオメー!」
あはは。楽しい。仲間といるって、こんなに楽しい事だったんだね。すっかり忘れてたよ。
「いっぱいご馳走になっちゃった! みんな、ありがとねー!」
雰囲気に飲まれて、私の口調もすっかり砕けたものになった。店の外まで見送りにきた常連客と店主に手を振り、「猪突猛進亭」を後にする。
実はさっき、飯屋の店主からお小遣いをもらったんだ。再会のお祝いだってさ。ありがたくいただきました。これで旅の準備が出来る。
私は武器屋と道具屋、それから服屋を巡った。道具屋では保存食とランプ。武器屋では短剣を購入した。
服屋では、女の子らしく動きやすいショートドレス。クラウドの家で王様の服を脱ぎ、男物のシャツとズボンを借りてはいたが、小柄な私にはダボダボで動きにくかったのだ。
目指す場所は、山を越えた先にあるモックの村。そこには私のかつての仲間、セーラがいる。彼女はルクリエ教のシスターで、神術を使える。それに、素晴らしい夢を沢山見るのだ。
セーラに会えば、失ったスキルをまた獲得出来る筈だ。
城下町の出口付近に差し掛かると、兵士たちが検問のような事をやっていた。出口の門はまだ先だが、そこに行くにはこの道を通るしか無い。道の両脇テントが張られ、兵士たちが五、六人、人々を往来を食い止めている。きっと夜通しで国王を探しているのだろう。
「国王アキラは、勇者ヨシオ様の怒りを買った! 現在城から逃走中である! 見かけたらすぐに教えるように!」
検問する兵士たちの横で、別の兵士が叫んでいる。やれやれ、諦めの悪い事だ。あのクズ勇者、本当は臆病者なんじゃなかろうか。私の復讐を恐れているんだ。絶対するけどね、復讐!
「女! 町を出るのか!」
私が通る番になり、検問の兵士に詰め寄られる。彼の名前は、確かヨハンだ。温厚な性格だったはずなのに、今は狂気に満ちた表情をしている。ヨシオの性格の影響を受けているのかも知れない。
「はい。隣村に友達がいるんです」
「嘘じゃないだろうな! 持ち物を見せろ!」
腰につけたポーチを開き、小型のランプ、保存食、短剣を見せる。
「ふん! 怪しい物は無いようだな! 名前を言え!」
「アキラです」
「アキラ、だと!? 国王と同じ名だな!」
「はい。それが何か?」
「ん? いや......お前が国王の訳はないしな。よし、通っていい」
「ありがとうございます」
ふぅ。無事に通れた。よし、もう少し行けば乗り合い馬車の停留所がある。それに乗ってモックの村へ行こう。
国王になってからは、外交以外の用事で王都を出た事がない。クラウドとはしょっちゅう会ってたけど、セーラとはもう二十年も会ってないんだ。懐かしい。早く会いたいな。
身包み剥がされて牢屋に入れられたんだ。お金なんて持ってる訳がなかった。まぁ国王になってからは、金なんて持ち歩いてなかったけどね。みんな従者が払っていたからなぁ。
「そんな事気にすんなよ! 全部俺らの奢りだ! なぁみんな!」
おおー!とおっさん達が叫ぶ。二十年前は、当然だけど、みんな若者だった。面影があるからわかる。タイラーにショーンにヒックス。名前を挙げればキリがない。みんな本当にいい人達だ。
「ありがとうみんな......」
私は思わず泣いてしまった。
「アキラちゃん泣いてる! 誰だアキラちゃん泣かした奴は!」
「オメーだオメー!」
あはは。楽しい。仲間といるって、こんなに楽しい事だったんだね。すっかり忘れてたよ。
「いっぱいご馳走になっちゃった! みんな、ありがとねー!」
雰囲気に飲まれて、私の口調もすっかり砕けたものになった。店の外まで見送りにきた常連客と店主に手を振り、「猪突猛進亭」を後にする。
実はさっき、飯屋の店主からお小遣いをもらったんだ。再会のお祝いだってさ。ありがたくいただきました。これで旅の準備が出来る。
私は武器屋と道具屋、それから服屋を巡った。道具屋では保存食とランプ。武器屋では短剣を購入した。
服屋では、女の子らしく動きやすいショートドレス。クラウドの家で王様の服を脱ぎ、男物のシャツとズボンを借りてはいたが、小柄な私にはダボダボで動きにくかったのだ。
目指す場所は、山を越えた先にあるモックの村。そこには私のかつての仲間、セーラがいる。彼女はルクリエ教のシスターで、神術を使える。それに、素晴らしい夢を沢山見るのだ。
セーラに会えば、失ったスキルをまた獲得出来る筈だ。
城下町の出口付近に差し掛かると、兵士たちが検問のような事をやっていた。出口の門はまだ先だが、そこに行くにはこの道を通るしか無い。道の両脇テントが張られ、兵士たちが五、六人、人々を往来を食い止めている。きっと夜通しで国王を探しているのだろう。
「国王アキラは、勇者ヨシオ様の怒りを買った! 現在城から逃走中である! 見かけたらすぐに教えるように!」
検問する兵士たちの横で、別の兵士が叫んでいる。やれやれ、諦めの悪い事だ。あのクズ勇者、本当は臆病者なんじゃなかろうか。私の復讐を恐れているんだ。絶対するけどね、復讐!
「女! 町を出るのか!」
私が通る番になり、検問の兵士に詰め寄られる。彼の名前は、確かヨハンだ。温厚な性格だったはずなのに、今は狂気に満ちた表情をしている。ヨシオの性格の影響を受けているのかも知れない。
「はい。隣村に友達がいるんです」
「嘘じゃないだろうな! 持ち物を見せろ!」
腰につけたポーチを開き、小型のランプ、保存食、短剣を見せる。
「ふん! 怪しい物は無いようだな! 名前を言え!」
「アキラです」
「アキラ、だと!? 国王と同じ名だな!」
「はい。それが何か?」
「ん? いや......お前が国王の訳はないしな。よし、通っていい」
「ありがとうございます」
ふぅ。無事に通れた。よし、もう少し行けば乗り合い馬車の停留所がある。それに乗ってモックの村へ行こう。
国王になってからは、外交以外の用事で王都を出た事がない。クラウドとはしょっちゅう会ってたけど、セーラとはもう二十年も会ってないんだ。懐かしい。早く会いたいな。
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